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  • 鴻池賢三の“6畳100インチ” 連載第1回 鴻池賢三の“6畳100インチ”PART.1
    これぞ新世代!大画面がもっと身近に
    4K/HDRプロジェクター
    LG「HU80KS」

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2019年5月8日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

プロジェクターに技術革新の波、来たる。

せまくても、必要以上にオカネをかけなくても満足度の高いホームシアターはつくれる! そのための創意工夫を、鴻池賢三氏が伝授する連載企画「鴻池賢三の“6畳100インチ”」。今回は連載テーマにぴったり、革新的な設置性とコンセプトを備えたレーザー光源プロジェクター、LG「CineBeam(シネビーム)」の魅力に迫ります!

  • LGのプロジェクター「HU80KS」は、ポータビリティを重視したデザインで、床置きでもラック置きでも天吊りでもOK。ミラーを活用することで、壁面にも天井にも、映像が欲しい場所に自由自在に投写できます。ネットワーク機能も搭載しており、NetfliXやYouTubeのコンテンツを、高画質のまま、プロジェクター本体だけで楽しめます。

これからの大画面を担う“プロジェクター2.0”

連載タイトル「6畳100インチ」は、「誰もが気軽に大画面を!」と願うもの。
今回は、狭小スペースでも大画面が実現できる新世代プロジェクターを紹介していきます。

筆者が考える“プロジェクター2.0“のポイントは、光源のLEDレーザー化、コンパクト化、ネット動画対応の3つです。光源のLEDレーザー化は、ランプ寿命が長くなり、プロジェクターをテレビと同じ感覚で日常的に利用できることに繋がり、さらに光源のLED化は、手の平サイズの超コンパクト化も実現可能にします。そしてメディアストリーミング端末を使わずともネット配信動画を再生できる機能は、プロジェクターでの動画再生のハードルを下げてくれます。

  • LGエレクトロニクスの超短焦点プロジェクター「HF85JG」でも採用されているLEDレーザー光源。20,000時間の長寿命、1,500ルーメンの高輝度が大きなメリット。オリジナルのI型エンジンによるコンパクト設計を実現しています。

このように、新しいコンセプトでライフスタイルをも変えるパワーを感じさせてくれるのが“プロジェクター2.0“です。その代表モデルが、ここで紹介するLGエレクトロニクス「HU80KS」です。

まるで家電のような使い勝手

一見してプロジェクターとは思えないフォルムから興味をそそられます。フットプリントは約7cm角と小さく場所を取らず、床置きで投写できるので設置もラクラク。これは光学システムを直列配置して上方に映像を打ち上げ、鏡で光路を約90度転換するアイデアで実現しています。従来のプロジェクターとは大きく異なる発想で、インパクトは絶大。デザインや色も含め「プロジェクターの家電化」と呼んでも良いのではないでしょうか?

  • 映像投影にはミラーを採用したことで、場所を選ばない自由な設置が可能なのもHF85JGならではの特長。ミラーの角度を変えるだけで簡単に投写する位置を調整できます。

スタイルの奇抜さだけでなく、プロジェクターとしての要素もしっかり以上に備えているところは、世界的ブランドであるLGエレクトロニクスの底力。映像はDLPによる画素ズラシ4Kで解像度スペックは3,840×2,160を謳い、HDR10にも対応。光源はレーザーで最大2,500ルーメンの明るさと20,000時間もの寿命を誇ります。

  • 従来の光源ランプでは経年的なものによる明るさの低減が起きていましたが、LEDレーザー光源は長期間使用しても明るさを損なわずに映像投写できるのがメリットです。

GUIは、同社お馴染みの「webOS」でポインターのようにカーソルを操れる「マジックリモコン」が付属し、テレビと同様のフィーリングで操作できるのもポイント。機能面ではWi-Fi接続が可能で、Netflix、Amazon Prime Video、YouTubeなどのストリーミングも単体で視聴可能できます。

  • LGエレクトロニクスのテレビなどにも搭載されていた「webOS」を、プロジェクターでも採用しています。マジックリモコンによるポイント&クリックによる簡単な操作、そしてWi-Fi環境であればNetflixやYouTubeなどの動画ストリーミングサービスも手軽に楽しめます。

さらに、映像の投影スタイルは床置のまま鏡を折り畳むと天井に、横に寝かせれば通常のプロジェクターのように卓上設置や天吊りも可能。しかも、映像の左右上下反転やキーストンが自動で、手間無く歪みの無い映像が得られるのもユーザーフレンドリー。プロジェクターに馴染みの無かった層が家電的に使いこなせる洗練度の高さが素晴らしいです! 今回は、そんなプロジェクターの新世代を予感させる「HU80KS」に触れ、設置性、機能性、操作性、そして肝心の画質を徹底レビュー! その実力は如何に?!

  • 床置きや卓上設置による壁投写、さらにミラーを折り畳むことで天井も投写することができます。また本格的なホームシアターシステムにも導入できるよう天吊りの設置も可能です。未だかつてない設置自由度を誇ります。

壁から天井まで投写できる新感覚!

「HU80KS」の大きさと重さは、小型の空気清浄機といったところ。重量は約6.7kgで、軽くはありませんが、まるで炊飯器のようにハンドルが付いていて、簡単に移動できます。電源を接続しようとすると、ケーブルが見あたらない。説明書を読むと、何と、本体に巻き込まれているようです。実際に本体から引き出してみると、掃除機と同じフィーリング。ケーブルは少し硬めですが、一般的なプロジェクターの付属品に比べると細くて柔らかく取り回しが良いです。ちなみに巻き取り時も掃除機と同じく、ボタンを押すとスルスルと本体に吸い込まれて行きます。白物家電のノウハウが活かされている印象です。
映像はHDMI接続も可能ですが、本機はWi-Fi対応で各種ネット配信を単体で受信できます。また、本体にスピーカーも内蔵。ミニマムにしたいなら電源ケーブルをつなぐだけでセッティングは完了。実にスマートです。

  • 掃除機のように電源ケーブルをくるくると本体に収納できます。HDMIは2系統搭載します。音声に関しては、本体にスピーカーを内蔵するほか、光デジタル音声で外部機器へ出力したり、Bluetooth機能によってワイヤレススピーカーで楽しむこともできます。

本機の基本と言える、床置き+鏡による前方投写もとても簡単。1.2倍のズームレンズを備え、100インチ時の投写距離は2.89~3.48mの間で選べます。映像の高さは、鏡の角度で調整できるのが画期的。直感的に操作でき、キーストン補正も自動と細部までよく考えられています。

  • 床置きにして、壁面に投写するスタンダードな設置方法。ミラーの角度を調整すれば、大画面の位置を自在にコントロールできます。オートで台形補正もしてくれるので、調整は楽チンです。

天面の鏡は変形ロボットのように折り畳み可能で、鏡が無くなると投写光は天井に向かい、2.4mの天井高なら、最大50~70インチサイズで投写できます。リビングで見ていた映画の続きを寝室で寝転びながら見るような使い方も夢があります。日本の場合、シーリングライトが邪魔になる可能性が高いので、新築やリフォーム時は、ダウンライト仕様にしておき、天井にスペースを空けておくと良いかも。目の前の卓上に設置する場合は、本機を横に寝かせることになるので、目障りにはならない。設置方法として、いちおう天吊りも可能です。

  • ミラーを畳めば、天井にも投写できる。普段は壁で、寝るときは天井で…というように大画面の位置を自在に変えられるのは大きなメリット。しかも4K/HDRの高画質、レーザー光源で長寿命!

4Kらしい精細感で色の表現はバランス志向

まず、Netflixで映画やドラマを再生して、映像を観てみました。画質は精細感がなかなかに優秀。やはり4KやHDR品位で再生ができるというのは頼もしいです。4Kは画素の密度が高く、ディテールの精細感も上々。4Kアニメ『魔法が解けて』のなめらかな描画は特に印象的でした。
また、明るさについても、最大2500ルーメンと高出力なこともあり、本機のスタイルや用途を考えると十分に実用的です。明るい部屋で明るい映像を見るには問題ありません。完全暗室で暗い映像を見ると黒浮きが気になることもありますが、これは0.47型DMD(1920×1080)を用いた他社の製品と同じ印象で、本機特有の問題ではなく、このデバイスの宿命でしょう。

  • Netflixの4K映像とUltra HDブルーレイ『UHD│HDR-10 Video Calibration Disc』などで画質を厳しくチェ
    ック。この手軽さで高解像度とHDRネスは確かに実感できるのか、しっかり検証してみました!

色の表現についても、テストパターンで白色を表示してみても、ホワイトバランスに全く違和感がありませんでした。光源がレーザーのためか、色は赤味が抜け、全体的にも薄めに感じますが、レーザー光源は通常、青色発光デバイスを用い、黄色の蛍光体にぶつけて赤色と緑色を得ますので、根本的に赤色と緑色の成分(スペクトル)が少なくなりがちです。あれこれといじった結果、最終的には映像モード「シネマ2」で「色の濃さ」をデフォルトの「50」から「70」にすることで、良い感じに調整できました。

  • ホワイトバランスなどの破綻もなくバランスのよい映像。SDR信号に対しては9つの豊富な映像モードを備え、「technicolor®エキスパート」も選べます。ISF認定の調整機能も備え、それぞれを細かく好みにカスタマイズもできます。

そのほか、非HDR映像に対しては、映像モード「HDR効果」が面白かったです。効果は「高」「中」「低」の3段階から選べ、「中」がデフォルト。「HDR効果」を利用すると、太陽を受けて輝くようなピーク部分が飛び気味になることで輝き感が増します。黒の沈みが限定的で映像はノッペリしがちなので、明るくなる方向でコントラストを高めるのは良いアイデア。最終的に、筆者が4Kカメラで撮影してYouTubeにアップしている動画も、記憶に近い映像を蘇らせることができました。

  • SDR映像でもHDRのような効果が擬似的に得られる「HDR効果」モードは3段階調整できます。鴻池師範代自らが4K(SDR)で撮影した飛行場のYouTube動画で検証。「低」で肉眼に近い印象が再現できて効果を実感!
  • Ultra HDブルーレイで検証したところ、本物のHDR信号が入ると、選択できる映像モード(「あざやか」ほか6種)が変わるため、すぐに判別できました。映画向けにはリビングを想定した「シネマブライト」と専用室向けの「シネマダーク」ほかを用意。

これぞ新しい大画面スタイルだ!

実際に触れると、ユニークなデザインと設置スタイルは画期的。プロジェクター本体だけでネット動画も手間なく観られるなど、使い勝手は新次元です。コントラストや色彩表現という点で課題が残りますが、毎日の暮らしに大画面を加え、新しいライフスタイルを提案してくれる点は、ほかにない魅力です!

  • Netflixなどネット動画配信の4K/HDRを楽しめるだけでなく、他のプロジェクターではできない画期的な設置性からデザインまで、新時代のプロジェクターの実力に大満足!

LINEUP

LG ELECTRONICS
HU80KS ¥OPEN(市場予想価格¥330,000前後)

SPEC

●投写方式:DLP ●表示解像度:3,840×2,160 ●レンズ:1.2倍ズームレンズ ●投写サイズ:40型~150型 ●光源:レーザーダイオード ●明るさ:2,500lm ●コントラスト:150,000:1 ●入出力端子:HDMI入力×2、光デジタル音声出力×1、ヘッドホン出力×1、USB出力×1、LAN入力×1 ●消費電力(待機時):250W(0.5W以下) ●外形寸法(W×H×D):165×474×165mm ●質量:約6.7kg