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  • 伊尾喜大祐が推す!
    ハイクオリティソフト<2019/4K Ultra HDブルーレイ>
    2019年度4K Ultra HDブルーレイ・ベスト5!

    取材・執筆 / 伊尾喜 大祐
    2020年4月15日更新

パッケージの底力を見せてくれた!

いま、最新作から4Kリマスターまで、さまざまな映画作品が「4K Ultra HDブルーレイ(UHD BD)」となってパッケージ化されています。UHD BDの魅力は、何といっても4K/HDRの高画質フォーマットを安定した形で楽しめること。多くのタイトルが「ドルビーアトモス」のような、高品位な音声フォーマットで収録されていることも特長です。そんな鮮烈な感動と臨場感をもたらしてくれるハイクオリティなUHD BDの中から珠玉のタイトルだけを厳選して、伊尾喜大祐氏がお届けします!(編集部)

2019年の国内セルDVDの出荷数量は前年比で83%までに落ち込みました。4K Ultra HDブルーレイ(以下、UHD BD)を含むセルBDは100.1%を維持しましたが、決して数字が伸びたわけではありません。そんな中でリリースされたUHD BDタイトルはハリウッドの新旧大作が中心で、邦画は『劇場版コード・ブルー』と『ルパン三世』の2作品を数えるのみです。これは幅広いジャンルの4K/HDR作品が急増中の、NetflixやAmazonプライム・ビデオなどの動画配信とは対照的です。

動画配信については、マスターのクオリティや映像圧縮の技術向上も相まって、パッケージに比肩する作品も少なからず登場しつつあります。音質面こそ配信のロッシー音声(ドルビーアトモス収録でも)に対してパッケージはロスレス音声というアドバンテージはありますが、ディスク制作に携わる1人としてこの状況は正直さびしく思っています。
というわけで今回は、2019年のUHD BDタイトルからパッケージの底力を感じさせてくれたハイクオリティ盤をチョイスしてみました。

  • 今回、2019年度に発売されたUHD BDの中から、画と音のクオリティが高かった厳選5作品を紹介。4Kの高解像、HDRの輝度表現など、最先端の高画質フォーマットを安定したクオリティで楽しめる、UHD BDならではの魅力をご堪能ください。

話題の最新作から4Kリマスターまで

『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、大型センサーカメラ・アレクサ65撮影によるスケールの大きな映像で、MCUの巨大なクライマックスを体感。『ボヘミアン・ラプソディ』はライブ・エイドの臨場感が最高なのはもちろんですが、主人公フレディの表情を克明に捉えた映像が印象深いところ。アニメ作品の『スパイダーマン:スパイダーバース』は、原作コミックの印刷の質感とセルアニメの動き、そしてデジタルならではのカメラワークを融合させた映像が斬新でした。旧作からは『フィールド・オブ・ドリームス』。フィルムの粒状感がノスタルジックな、「高」画質以上に「好」画質と評したい映像です。そして『ウルトラQ』は35mmフィルムからの4Kリマスター映像の緻密さに驚愕必至! その精緻な映像は、60年代の東京の記録映像としても非常に貴重です。

いずれもUHD BDの真価を発揮するタイトルばかり。「4Kは買ったけど、見るのはBDや配信ばかり」という皆さん、ぜひご体験を!

  • 2019年度版のハイクオリティソフトとして選んだのは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『ボヘミアン・ラプソディ』、『スパイダーマン:スパイダーバース』の新作3タイトル、『フィールド・オブ・ドリームス』、『ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラQ』の旧作4Kリマスターの2タイトルです。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』

  • 『アベンジャーズ/エンドゲーム』
    ディズニー 
    VWAS6906
    ¥8,000(税抜)
    ●製作:2019年/米 ●本編ディスク:約181分、シネマスコープ、HDR10 ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch
    © 2019 MARVEL

激闘を圧倒的な緻密さで描き出す

最強のヴィラン・サノスによって全宇宙の半分の生命が消滅し、アベンジャーズも崩壊寸前に。かけがえのない仲間を失いながらも、生き残ったヒーローたちは起死回生の奇策に挑みます。ダークな幕開けの序盤、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的な面白さに富む中盤、最終決戦の火蓋が切られる終盤と、見事な三幕構成で描かれる至福の181分。マーベル・シネマティック・ユニバース作品を愛し続けたホームシアターファンにとっては、本作は最高のご褒美と言えるでしょう。何せ『アイアンマン』から『キャプテン・マーベル』まで、11年間にわたって公開された21作品は、すべてこの映画に繋がっていたのですから!映像は全編がIMAXカメラであるアレクサ65による6.5K撮影/2KのDIマスター映像を4K/HDR10で収録。パナビジョンレンズならではのボケ味も相まって、画面の隅々まで立体感豊かな高密度映像です。CH17から始まるクライマックスの大決戦では、32人ものヒーロー全員に見せ場が用意され、画面を覆い尽くすほどの無数の敵との激闘が圧倒的な緻密さで描き出されます! インフィニティ・ストーンや飛び交う光線など光の描写も圧巻で、そのカタルシスには興奮必至!

  • 『アベンジャーズ/エンドゲーム』
    画質評価/音質評価

『ボヘミアン・ラプソディ』

  • 『ボヘミアン・ラプソディ』
    20世紀フォックス
    FXHA-87402
    ¥6,990(税抜)
    ●製作:2018年/米 ●本編ディスク:135分、シネマスコープ、HDR10+ ●本編音声:英語ドルビーアトモス、英語DTSHDマスターオーディオ2.0ch(ロスレス)、日本語DTS5.1ch
    © 2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

自然光とライトのバランスを絶妙に

フレディ・マーキュリーの人生を、彼を支えたメンバーたちを、そして唯一無二の輝きを持つクイーンというバンドを描いた、ご存じロングランヒット作です。その映像は主に大型センサーカメラ・アレクサ65による撮影で、ノスタルジックで輝かしいゴールドが包み込む映像世界になっています。HDR再生で強調される光と影のコントラストが、まるでフレディの生涯を象徴するかのよう。全編がクイーンの名曲で彩られた音楽映画だけに、ドルビーアトモスの音響設計も聴き応えありです。CH4、フレディたちの初ライブは、ライブハウスの天井の低さを実感させます。CH7の全米ツアーでは、照明やPA機材の質がアマチュア時代から各段に向上したことを、映像と音がしっかり伝えてくれます。CH9の「ボヘミアン〜」レコーディングでは、録音ブースとスタジオの響きの変化に注目。CH13でパワフルに響くのは、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の足踏みの重低音と歌声。そして極めつけはCH22、圧倒的な再現度で描かれるライブ・エイドの臨場感!自然光と、当時の照明を再現したというライティングのバランスも絶妙です。特典映像には4K&HDR&ドルビーアトモス仕様で、約22分のライブ・エイドシーンの完全版も収録!

  • 『ボヘミアン・ラプソディ』
    画質評価/音質評価

『スパイダーマン:スパイダーバース』

  • 『スパイダーマン:スパイダーバース』
    ソニー・ピクチャーズ
    UHBL-81499
    ¥6,800(税抜)
    ●製作:2018年/米 ●本編ディスク:117分、シネマスコープ、HDR10 ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語DTS-HDマスターオーディオ5.1ch
    ©2018 Sony Pictures AnimationInc . All Rights Reserved . |MARVEL and all related characternames: © & TM 2019 MARVEL.

斬新な映像に目を見張ること必至

公開当時に一緒に仕事していたアニメ制作チームが、「スゴいものを見てしまった」と圧倒されていたのがこの映画です。第91回アカデミー賞で長編アニメ映画賞を受賞した本作は、MCUとは独立した3DCGアニメ作品。何者かが時空を歪めたことで、いくつものパラレルワールドから集まってしまった「6人のスパイダーマン」。世界をあるべき姿に戻すため、彼らは巨悪に戦いを挑みます。印刷のハーフトーン(網点)や版ズレを取り入れた画面構成は原作コミックの誌面風、秒間8コマほどに抑えたキャラの動きはセルアニメ風、縦横無尽なカメラワークはデジタルならではと、これらを融合させた斬新な映像に目を見張ること必至です。その映像美は堀切日出晴氏をして「厳正厳密なディテール」「豊穣なる色使い」と言わせしめたほど。画面前後の空間座標も大胆に活用される、同梱のブルーレイ3D盤も昨年ベスト級の完成度でした。音声はドルビーアトモス収録で、ドーム状音場をスパイダーマンたちが目まぐるしく行き交う移動感や、異次元空間のドラッギーな包囲感は必聴。ちなみに現在企画中の続編には、1978年放送の日本版スパイダーマンが登場するという噂も。巨大ロボ・レオパルドンのスクリーン登場も近いかもしれませんね?

  • 『スパイダーマン:スパイダーバース』
    画質評価/音質評価

『フィールド・オブ・ドリームス』

  • 『フィールド・オブ・ドリームス』
    NBCユニバーサル・エンターテイメント
    GNXF-2453
    ¥5,990(税抜)
    ●製作:1989年/米 ●本編ディスク:約106分、ビスタ ●本編音声:英語 DTS-HDマスターオーディオ5.1ch、日本語DTS2ch
    © 1989 Universal City Studios,Inc. All Rights Reserved.

濃密な暖色のトーンがノスタルジック

ケビン・コスナー主演の傑作ファンタジーが、公開30周年を記念してUHD BDで登場です。ある日「それを作れば、彼はやって来る」という不思議な声を聞いた、アイオワの農夫レイ。その声に突き動かされるように、彼はとうもろこし畑の真ん中に野球場を作り上げます。そこに、かつて八百長疑惑で球界を追われ、失意の中で生涯を終えた伝説の大リーガー、“シューレス”・ジョー・ジャクソンが現れて・・・。35mmフィルムからの4K/HDRリマスター映像は、フィルムグレインの存在感をはっきり残す、濃密な暖色のトーンがノスタルジックです。音声もオリジナルの4chドルビーSRがDTS:Xサラウンドにリミックス収録されました。CH2、タイトル明けの美しい夕暮れの光は、モニタの向こうに実景が広がるかのようにリアル。「それを作れば〜」の声も頭の上から聞こえて驚きです。CH7、真っ暗な球場に佇むシューレス・ジョーの、月明かりに浮かぶシルエット。CH26の試合シーンは、乾いた打撃音が印象的。選手たちのヤジの広がり感もナチュラルです。CH34、夕焼けの下でキャッチボールをするレイ。故ジェームズ・ホーナーの旋律が音場を優しく包み込み、これ以上なく観る者の心に迫ります。

  • 『フィールド・オブ・ドリームス』
    画質評価/音質評価

『ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラQ』

  • 『ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラQ』
    円谷プロダクション/ポニーキャニオン
    PCWE-52001
    ¥70,000(税抜)
    ●製作:1966年/日 ●本編ディスク:715分、スタンダード、HDR10 ●本編音声:日本語リニアPCM 2.0ch& 1.0ch(一部ドルビーデジタル5.1ch)
    ©円谷プロ

グレインを適度に残した極上の仕上がり

1966年放送の空想科学アンソロジーシリーズ『ウルトラQ』。劇場映画同様に35mmフィルムで撮影された本作が、衝撃のクオリティで蘇りました。35mmの4.5Kスキャン/4KレストアのHDR映像は、グレインを適度に残しつつも埃などは徹底的に除去された極上の仕上がり。そのかつてないハイコントラストと緻密なディテールは、長年のファンの方々をこそ圧倒すること間違いなし。第4話「マンモスフラワー」で、丸の内のビル街に出現する巨大な花の花弁や茎。第5話「ペギラが来た!」では、吹雪の向こうに光るペギラの眼。第13話「ガラダマ」では、ガラモンの身体を覆う無数のトゲが彫刻のような美しさにハッとします。第15話「カネゴンの繭」では、カネゴンの顎の柔らかな素材感や胸のカウンターも克明。第19話「2020年の挑戦」では、闇から姿を現すケムール人の不気味な眼光など、もう全28話が見どころの連続なのです。着ぐるみを構成する様々な素材の質感やミニチュアの精緻な造形、多用されるマット画や光学合成、数々の東宝特撮映画からの映像引用と、この4K盤は創意工夫に富んだ円谷特撮の最高の探求書であり、60年代東京の貴重な記録と言えるでしょう。これぞ「ウルトラQ」の真の姿!

  • 『ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラQ』
    画質評価/音質評価

[特別編]愛を込めて“モノ申す” 期待はずれ作品~4K Ultra HDブルーレイ編

BD制作が生業の筆者としては、毎年イヤな汗が滲み出るのが本コラム。しかしここで『ライオン・キング(2019)』を選んだ理由は、画質や音質といったディスクのクオリティ面とはまた別にあります。「すべてのフォーマットを楽しめる」はずのMovieNEXパッケージから、Blu-ray3D盤があっさりオミットされたからなのです。『アラジン』など他のディズニー作品も同様だが、前3作が3D版でリリースされた『トイ・ストーリー4』までも、というのはメーカーの姿勢としてどうなのでしょうか。続いては『ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ』。4K/HDR映像は圧巻のクオリティですが、UHD BD盤が収録されたのは完全数量限定生産の4枚組BOXのみ、です。すでに入手困難な商品につき、単品リリースが待たれます。そして『ルパン三世 カリオストロの城』は、粒状感が完膚なきまでに除去されたツルツル映像に思わず悶絶。個人的な好みで言えば、粒状感が絶妙に残されたフィルムライクなBD版を推したいところですが、皆さんはいかがです?

  • 『ライオン・キング』/『ルパン三世 カリオストロの城』/『ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ』

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