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  • 奇才・五島一浩が手がける新作3D映画
    渋谷イメージフォーラムで楽しむアート
    2月17日より「IN VISIBLE TIME」と題した上映会を開催

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2023年2月15日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

当日受付あり、新作を含む計6作品を上映

映像・視覚メカニズムの実験を続ける映像作家・五島一浩が、2月17日より3日間、東京・渋谷のイメージフォーラムで「IN VISIBLE TIME」と題した3D映画上映会を開催します。

上映されるのは、アルス・エレクトロニカ準グランプリ「SHADOWLAND」、文化庁メディア芸術祭審査員推薦「BUMPY」、新作「IN VISIBLE TIME」を含む全6作品で、約82分。一眼レフカメラで撮影した画像・映像にわずかな時間差を付加する独自のシンプルな制作手法をとることで、ありふれた風景を素材に、「目が二つあること」の意味を見事に炙り出します。

作家紹介・立体映像を探究し続ける五島一浩

五島は、立体映像がもたらす快楽について次のように明かします。

「視差=左右の眼の網膜に映る像の僅かなズレ情報が脳内で処理されて『立体感』という感覚として意識されるまでには、何段階ものプロセスがあります。自分の頭の中でこの情報フローが実行される様子を想像する事は、私達の『意識』というものが、様々な知覚情報処理サブルーチンからのアウトプットを統合して『感覚』とするように仕組まれた『プログラム』であること、私達が何らかのロジカルな仕組み、『少し複雑な機械』に過ぎないことを実感できる稀有な体験のひとつであると思います。

我は思っているはずが『我』なんて存在していなかったんじゃないかという、足元が崩れるような不安。あるいは『存在していない』のにまるで『思って』いるように見える事の健気さ。帰り道の風景が、いつもと違って見える…何か重大な秘密が隠れているように見える、そんな高揚感を楽しんでもらえればと思います」

また、イメージフォーラムの門脇健路は、次のように分析しています。

「五島一浩の3D作品はさまざまなことを発見させてくれる。一般的には3D映画はマーベルスタジオなどのハリウッド大作のオプションとして想像されることが多いと思うが、今回展示する作品の被写体は全て東京の風景や机の上の静物など、ありふれたものである。観客はそんな日常の光景に高度なスペクタクル性が隠れていることを発見する。

また、機材も3D専用カメラではなく、一般的な1眼レフカメラなどが使われており、3Dという表現が(あえて誇張すると!)実は気軽な表現だということに気づく。そして、3Dは現実の視覚を再現するものではなく、全く別種の視覚的効果を作り出すことを発見する。今回の展示で観客はアートとしての3D映像の魅力を発見するとともに、自らの視覚についての不思議さをも再発見することになるだろう」

上映作品紹介

「東京浮絵百景」(14分/2010)

  • 1台のデジタルカメラで徒歩移動しながら大量の静止画像を撮影。そこから構築した動画に、左右の目で僅かな時間差を付加することで、立体映像を生成します。過去と未来にまたがる視覚が、見慣れた風景を新鮮なものに変貌させます。

「t2z」(34分/2012)

  • 微速移動するビデオカメラで接写。身近な物の普段意識していない質感とパースペクティブを、マクロ視点で抽出します。立体映像だけが可能にする「大きさの絶対値」の能動的な表現力に舌を巻きます。

「FAX FACTORY(from 東京浮絵百景)」(5分/2018)

  • 佐藤理の楽曲“FAX FACTORY”のミュージックビデオとして、“東京浮絵百景”の2D映像素材を作曲者の佐藤がエディット。エキサイティングなこのPVを五島が3D映像作品として再構築しました。

「SHADOWLAND」(14分/2013)

  • 夜の都市を移動する無数の自動車のライト。毎夜、都市の網膜に重ね書きされる、すべての影が立体化します。誰にも読み解かれたことのない「都市の記憶」が、鮮やかにデコードされます。アルスエレクトロニカ2014 準グランプリ作品。

「BUMPY」(12分/2016)

  • 日常のありふれた風景を固定カメラで撮影。その映像に時間差を加えることで生じる、実際の空間配置とは無関係な凹凸。細部を観察することで現れる様々な矛盾と混乱を楽しむことになるでしょう。第20回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品。

「IN VISIBLE TIME」(2分/2023)

  • 本展のために制作した新作3D映像作品。

イベント概要

[開催概要]
期日:2月17日(金)〜19日(日)
会場:イメージフォーラム3F「寺山修司」
東京都渋谷区渋谷2-10-2
TEL. 03-5766-0116
当日受付
一般700円/会員・学生500円(要学生証提示)
※当日入退場自由
※ティーチインはチケットもしくは半券提示で観覧可能
https://www.imageforum.co.jp/cinematheque/1055/index.html

[プロフィール:五島一浩
イメージフォーラム映像研究所専任講師。岡山県立大学、長岡造形大学、城西国際大学、明治学院大学非常勤講師。アナログとデジタルの境界、感覚の粒子化をテーマにした映像・インスタレーション作品を制作している。代表作に、コマのない動画カメラシステムの発明と実践「これは映画ではないらしい」(2014)、ハイコントラストCGシリーズ「FADE into WHITE」(1996~2003)。「FADE into WHITE #2」(2000)はイメージフォーラム・フェスティバル2001で大賞を受賞。2020年アーツ千代田3331で初の大規模個展「画家の不在」展を開催。