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  • ホームシアター展示会「CEDIA」で見つけた注目製品! D&MフラグシップやJBLサラウンドシステムも登場 セミナーではWi-Fi 7の最新情報や導入に役立つ機能の実践術も

    取材・執筆 / 松﨑圭志
    2024年9月9日更新

9月4日から7日まで(現地時間)米国コロラド州のデンバーにて、世界最大のカスタムインストール展示会「CEDIA EXPO 2024」が開催されています。ここでは、ホームシアターショップGLANCEのカスタムインストーラー・松﨑圭志氏のレポートをお届け。2日目からの各社の注目製品やセミナーをピックアップしてお届けします。

デモ/D&Mのデモには各ブランドのフラグシップが登場

「CEDIA EXPO」2日目は、1日目に続き朝からブランドによるセミナーに参加。マランツ/デノン/Bowers &Wilkins等、複数ブランドのデモンストレーションやトレーニングを受けました。イベントの本会場であるコロラドコンベンションセンターに隣接し、筆者も滞在しているホテルLe Méridien Denver Downtownの2Fにて、予約制での開催です。ホームシアターCHANNEL読者にお届けしたい内容をピックアップしてお届けします。

まず1つめの内容はBowers &Wilkinsが誇るフラグシップスピーカー「Original Nautilus」のデモンストレーション。Classéのプリアンプ「Delta Pre」とステレオパワーアンプ「Delta Stereo」を組み合わせて体験します。「Original Nautilus」とClasséの組み合わせから奏でられる音は、発表から31年が経過しているとは思えないほど、音場の広がりや情報量の多さ、音楽の密度が濃く感じられました。

  • デモルーム入り口に掲げられたBowers &Wilkins「Original Nautilus」のパネル
  • 照明が落とされたデモルームでスタッフがシステムの説明をした後、何曲か音楽を聴きます
  • 音楽データはMacBook Proからプリアンプ「Delta Pre」へUSB接続
  • 青い照明に浮かび上がる「Original Nautilus」はいまでも存在感があります

その次は、同じフロアでおこなわれた「Advanced AVR Diagnostics and Troubleshooting」というトレーニングへ参加。このトレーニングは、トラブルシューティングの技術に重点を置いたものです。高度なセットアップメニューやHDMIを診断する方法を習得することで、映像と音声の同期の問題や、HDMIによるエラー、ネットワーク接続の問題などを特定して、解決する方法を学びます。

  • 会場に並べられたDENONのAVアンプを前に、講師から説明を受けるAURAS(オーラス)の山岡氏(写真右)。今回のCEDIA EXPOへ共に訪問中です
  • 陽気で気さくに説明してくれるスタッフ

我々カスタムインストーラーにとっては非常に有益なトレーニングとなりました。これらの情報をインストール時に実践することで、ユーザーのみなさまはより快適かつ安全にシアターをお使いいただけるようになります。具体的な内容は下記の通りです。

AVアンプ前面にある「STATUS」ボタンを5秒間長押しすると、セットアップアシスタントをキャンセルでき、さらに追加で5秒間長押しすると、表示部に現在割り振られているIPアドレスが表示されます。そのIPアドレスを使うことで、ウェブブラウザ経由で各種設定をすぐにおこなえるほか、ブラウザ経由のメニューの中にある「CI Menu」から、HDMIの各種診断や調整ができたりします。

「CI Menu」にあるHDMI診断の項目の例を挙げると、たとえば接続しているHDMIケーブルが、どの解像度まで使用できるかというもの。HDMI端子にHDMIケーブルを接続することで、テスターの必要なくAVアンプのみで診断できるようになります。

  • 画像は8K(40Gbps)まで使用することができるとの診断結果が画面に表示されています

トレーニングを終えて同フロアを歩いていると、ちょうど先日に発表されたマランツのフラグシップ「10シリーズ」が展示されていました。

  • プリメインアンプ「MODEL 10」。新開発の「デュアルモノ・シンメトリカルClass Dパワーアンプ」を搭載し、徹底的に高音質を追求したといいます。日本では10月下旬に発売予定
  • SACDプレーヤー「SACD 10」。最新世代の独自ディクリートDAC「Marantz Musical Mastering(MMM)」を搭載。日本では10月下旬に発売予定
  • 国内ではまだ発表されていないネットワークオーディオプレーヤー「LINK 10n」の姿も

セミナー/Wi-Fi7がホームネットワークに与える影響

トレーニングを終え、ホテルの下で昼食を食べた後は、コロラドコンベンションセンターへ移動し、今回3つめとなるトレーニングに参加。このトレーニングは、無線LAN製品の業界団体によるWi-Fi Allianceより7番目の次世代規格として認定された「Wi-Fi 7」が、ホームネットワーク設計においてはどのような変化をもたらすのか、という内容になります。

実際に受講してみて特に興味深かったのは、Wi-Fi 7になると従来の規格に比べて全体的に大幅な改善が見込まれる点。最大通信速度は9.6Gbpsからさらに向上し、46Gbpsに。電波の帯域幅は従来の2倍となり、データを電波で搬送する際の変調方式が1024QAMから4096QAMへと改善されたといいます。また干渉する信号や近隣の無線ネットワークが、使用中のチャンネルを避けることで影響を最小限にする技術(パンクチャリング)を採用。通信のさらなる高効率化を図っています。

一方で、5GHz帯よりもさらに波長の短い6GHz帯を利用することで、ホームネットワーク設計への影響も大きいことがわかりました。

  • 「How Will Wi-Fi 7 Change Your Wireless Design?」というテーマのトレーニング

講師の話で非常に印象的だったのが、ネットワーク機器を一般グレード/プログレード/企業グレードの3種類に分類し、それぞれの特徴について解説していたなかで「一般グレードのネットワーク機器に、ホームオートメーションを含む住宅設備機器を接続して使用すると、安定して動作しない」と明言されたことです。

近年ではエアコン、給湯器、インターフォン等の住宅設備機器をネットワークに接続して操作することが一般的になってきました。しかし、その土台となるネットワーク機器が一般グレードの場合、それぞれの操作に支障が出るような不具合が起きる可能性が高いことを、アメリカのカスタムインストーラーや講師は認識していることがわかりました。私自身もお客様宅へホームネットワークをインストールする際は、プログレードの製品を使用していますので、その点については非常に共感できる内容でした。

  • 当トレーニングは木曜日から金曜日の2日間で開催。どちらの日程も早めに埋まり、アメリカでの注目度の高さを感じました

デモ/エプソンの新プロジェクターを170インチで視聴

Wi-Fi 7のトレーニングが終わった後は同じフロアに設けられたエプソンブランドのデモおよび展示ブースへ移動。ますは新製品プロジェクター「QB1000」が体験出来るデモブースへ。とくに「QL7000」はネイティブ4Kパネルを搭載した7000ルーメンのプロジェクター。デモでは170インチ程度のスクリーンが使用されていましたが、映し出された映像の解像度はフォーカス感がよく出ていて、従来モデルとは一線を画す事がよくわかります。また、デモ終了後は展示ブースにて実機も確認できました。

  • エプソン「QB1000」のデモブース
  • 室内へ入場した後、スタッフが説明してくれて「QB1000」の映像デモが始まりました
  • 同じく新製品プロジェクター「QL7000」を使った映像デモもおこなわれました
  • Qシリーズはアメリカで2色展開のようで、こちらはホワイトカラーの「QB1000」
  • ホワイトカラーの「QB3000」。レンズは別売となります
  • 業務用プロジェクターも同様にレンズが別売で、投写距離に応じて選ぶ仕組み。「QB3000」や「QB7000」でも共通してレンズを使用出来るように配慮したものと思われます
  • 「QB3000」および「QB7000」の天板はオプションとして、違う色にしたり好きなロゴを入れたりできるカスタマイズにも対応

夕方からは「CEDIA SMART HOME AWARDS 2024」へ参加。アメリカのカスタムインストーラーが数多くの施工物件をエントリーし、選ばれたファイナリストの中からさらに最優秀賞を現地で決定します。

ちなみにCEDIAはアメリカ/ヨーロッパおよびアフリカ/アジア太平洋といった3つの地域にわけられており、それぞれの地域ごとにCEDIA SMART HOME AWARDSが開催されます。私はCEDIA AWARDSを5年前に受賞しましたが、その時の授賞式はオーストラリアでした。

  • 大きな会場に用意されたステージ
  • Best Integrated Home Level 1を受賞したCEDIA AWARDS常連のLa Scala氏。La Scalaはこの他にも2つの賞を受賞していました。

CEDIA SMART HOME AWARDS 2024が終わった後、その日の午前中にトレーニングへ同席していた、ディーアンドエムで製品の設計をされている鈴木氏と渡邉氏、AURASのインストーラー山岡氏と共に夕食をとりました。その後は私の友人でもあるアメリカのインストーラー、JustinやSean達と合流して、現地の声を含むさまざまな意見交換を夜遅くまでおこないました。

  • Hyatt Denver DowntownのロビーでJustinやSeanと語り合う鈴木氏、渡邉氏、山岡氏
  • Seanの説明へ熱心に耳を傾ける鈴木氏

デモ/JBL SYNTHESISはまさに映画に見入るシステム

翌日はCEDIA EXPO最終日となります。まずはJBLブランド「SYNTHESISシステム」のデモブースへ。ディーラーをつとめるJustinが予約してくれました。本人と合流してデモルームへ入ります。

こちらのデモでは、音楽のワンシーンを1回、映画のワンシーンを2回、体験しました。とくに映画のワンシーンでは、同席していた山岡氏が「髪の毛が震えるほどの低音に驚いた」と言うほどの迫力を実現しています。しかし耳にはうるさく感じず、非常に繋がりのよいサラウンドとして体感できました。まさに映画に見入るシステムです。

フロントおよびセンタースピーカーは「SCL-1」を採用。ホーンが中央にあり、12インチウーファーを2基搭載しています。サブウーファーは15インチウーファーを2基搭載している「SSW-1」が使用されていました。

  • 専用シアタールームと遜色ないデモルーム
  • 約180インチあるスクリーンに映る「JBL SYNTHESIS」のロゴ
  • 「SCL-1」(右)と「SSW-1」(左)

デモ/Kordzケーブルはインストール向きの魅力がある

次にKordzのブースへ。日本ではKordzブランドといえば、HDMIケーブルのイメージが強いのですが、実はそれ以外にもLANケーブルや同軸ケーブル、RCAケーブルなども製造しているメーカーです。KordzのHDMIケーブルは、高品質を維持するための製造過程や製品設計が特徴で、メタルは生涯保証、光ファイバーケーブルは2年保証を謳います。

また、カスタムインストーラー向けの「PRSシリーズ」は、HDMIプラグの金属部分がダイキャスト製、プラグ本体はスーツケースなどに使われるポリカーボネート製となっています。HDMIプラグへの接続に対し堅牢性が高く、よほどのことがないかぎり緩んで抜けません。

今回、新製品として「PRS4」のPASSIVEで7m/9mの長尺ケーブルが追加されました。今までは最長5mまでだったので、さらにインストールで使いやすくなると期待できます。

  • Kordzブースのようす
  • KordzのManaging Director、Jamesが自らLANケーブル「CAT6a」について説明をしてくれました
  • 写真右が「PRSシリーズ」のダイキャスト製HDMIプラグ。左側は金属の曲げ加工のため、継ぎ目が見えます
  • 山岡氏と共にJamesと話をしている時、たまたまCEDIAのCEO、Daryl Friedman氏が通りかかり、Jamesが山岡氏をCEOへ紹介してくれました

デモ/壁掛け用金具やシアターインテリアなども展示多数

次は日本でも展開している壁掛金具メーカー、SANUSのブース。ユーザーのみなさんにとってあまり馴染みがないかもしれませんが、カスタムインストールの際はこういったアクセサリのチョイスも重要な要素のひとつです。ほか、シアタールーム用のソファも何社か展示されていました。

  • SANUSブランド展示ブースのようす
  • モーションタイプや超薄型タイプに加えて、壁内へHUBやApple TV等の機器を埋め込むためのボックス等が展示されていました
  • こちらはCINEMA TECHのブース。ホームシアターの内装やインテリアなどを手がけるブランドです
  • 手前の人に座り心地を聞いたところ「いいよ!」と答えてくれました

以上、3日間にわたる「CEDIA EXPO 2024」のレポートでした。

1日目レポート>世界最大のホームシアター展示会「CEDIA EXPO」で探るシアター&ネットワークの今