超短焦点には “耐外光” スクリーンが最適
東京ビッグサイトで開催された見本市「ジャパンホームショー&ビルディングショー 2024」を取材してきました。すると、壁紙などでおなじみのシンコール社のブースに、超短焦点プロジェクターの映像を鮮やかに投写しているスクリーンを発見! 訊けば、東北大学の技術を利用した製品だそう。
- シンコール社のブースに展示された「SHLスクリーン」を発見
スクリーンから数十センチに置いて大画面を投写できる超短焦点プロジェクターは、天井に吊ることなく画面下のAVボードに機器一式を収めることで、配線を長回しせずに済むため、インテリアをまとめやすく近時注目を集めています。部屋を横長に広く使えるメリットもあり、拙宅でもLG「HU915QE」を使っています。
それと組み合わせる専用のスクリーンには、平面性の高い “耐外光スクリーン” がオススメです。照明の影響を受けにくく、テレビのような映り込みも少ないため、鮮やかな映像が得られます。拙宅のキクチ「SPB-UT120」もこの一種で、上方からの照明光を庇の構造で遮断しつつ、床置きプロジェクターからの光だけを視聴方向に反射する「Lenticular(レンチキュラー)方式」を採用しています。角度によって絵が変わるポスターや、ブロマイドなどを思い起こせる方なら、その仕組みがピンとくるかも知れません。
- 短焦点プロジェクター用スクリーン
キクチ科学「SPB-UT」
¥407,000(税込/120インチ、16:9)
特許取得のフレネルレンズ方式で高輝度化
今回目にした、東北大学と株式会社有電社が共同開発した「SHL(Super High Luminance)スクリーン」は、それとは異なる「空間結像アイリス面方式」を採っています。同心円状に多数分割した凹の反射面でプロジェクターからの光を受け、視聴方向にムラなく反射するフレネルレンズの構造になっており、スクリーン全体が一種の凸レンズのような働きをするとのことで、特許技術のカタマリです。灯台のレンズやフラッシュの光源のように幾重にも筋が入っている光源を思い浮かべていただければいいと思います。
この「SHLスクリーン」、製品化には10年以上を要しています。というのも、開発のきっかけは、2011年の東日本大震災。テレビより低消費電力で、避難所など多くの人が集まる場所において、大型情報モニターの必要性を感じた東北大学が始めた研究が元になっているのです。
そこから可搬性向上のために、マグネットキャッチできるシートと一体化するなど、改良を重ねて特許も取得。25cm程度の筒状にすることが可能となり、ホワイトボードのような壁面さえあればフレームレスでピタリ密着設置できるように。使いやすさも格段に向上しました。
その映像は、ご覧のとおり。照明が盛大に照らされた展示会場でもクッキリ隅々までムラがなく、発色も自然でギラつきも感じませんでした。
展示の試作機は100インチで、販売価格も未定。また厳密には、プロジェクターとの投写距離やスクリーンサイズにより内蔵するフレネルレンズの構造自体が異なるそう。そのため、わたしたち一般ユーザーが簡単に入手できるようになるのには時間が掛かりそうですが、超短焦点プロジェクター専用スクリーンの未来に向けた進展に注目大です。
SPEC
有電社/シンコール「SHLスクリーン」
●方式:空間結像アイリス面方式 ●ゲイン:4.0以上(参考値)●構造:表面形状異方性拡散フィルム(王子エフテックス製)/フレネルレンズ/反射塗装/保護塗装/マグネット ●使用環境:屋内/10℃ – 35℃/湿度40 – 80% ●外径寸法:2243×1195mm(100.8インチ)●質量:3.3kg
製造元:株式会社有電社
TEL:03−6447−1420
https://www.yuden-net.co.jp/
販売元:シンコール株式会社
https://www.sincol-kys.co.jp