2023年はテレビの大画面化と高画質化が進み、65インチ以上の画面サイズを選択される方も増えてきたのではないでしょうか? そこで注目したいのが、65インチ以上の大画面テレビに最適化された、プレミアムクラスのサウンドバーです。現行製品として最も多くのラインアップを持ち、さまざまな画面サイズに対応したサウンドバーを揃えるソニーの開発陣に、大画面テレビならではのサウンドバーの選び方のポイント、推奨モデルとされている「HT-A7000」「HT-A5000」ならではの魅力を解説していただきました。
- ソニーが揃えるサウンドバーは全部で7機種。なぜこれだけのラインアップを揃えているのか気になるところです。ブランドサイトによると、65インチ以上のテレビには「HT-A7000」もしくは「HT-A5000」が推奨されています。
映像と音響のバランスが重要
──ソニーは全部で7モデルのサウンドバーを揃え、それぞれに最適な画面サイズの目安が提示されています。テレビのサイズによって、サウンドバーにはどのような要素が必要か、基準などはあるのでしょうか?
(橋本さん) テレビの画面サイズに対する音場の広さ、口の動きと発声があっているか、映像と音源が一致しているか、などから判断しています。没入感はさまざまな要素からなる「画音の一致」によって得られるものと、ソニーは考えています。もちろん数値的な評価もありますが、それだけでなく実際の耳で聞いた音質、画面と音のバランスなど定性的な評価もチーム全員で行いながら作り込んでいく部分が大きいです。
(加藤さん) 音響設計は、地道な検証、再設計の作業の繰り返しです。テレビやオプションとの組み合わせを考えると、サウンドバー1機種ごとに20以上のバリエーションが発生することもありますが、ソニー商品同士の組み合わせはひとつひとつ検証して、細かな音の調整をしています。
(岡田さん) 一方で、インテリアとの両立、テレビとのサイズ感のバランスや、置き場所の制約を重視される方もとても多くいらっしゃいます。ユーザ調査から得たデータもございますので、それも加味しながらテレビサイズに対するデザインと音のバランスを量る、というところもサイズと設計に大きく関わる要素の一つですね。
(橋本さん) サウンドバーの外形寸法は、テレビ・サウンドバー両モデルの開発段階から、サイズをデザイン・設計含めて合わせこみながら細かく調整しています。サウンドバーが画面とかぶらないように設置できるか、テレビの脚に邪魔ならないように設置できるかはもちろん、デザインの統一感や操作性なども意識して開発が進められています。
──現在トレンドとなっている65インチ以上の大画面テレビと組み合わせるとき、どんなサウンドバーが望ましいでしょうか?
(橋本さん) テレビの画面が大きくなるほど、画音を一致させることも難しくなります。とりわけ「音場の広さ」は、より重要になってきます。たとえば映画館では、とても大きなスクリーンに対してものすごく広い音場を作っていますよね。テレビとサウンドバーの関係も同じで、大きなテレビでは、その画面サイズにマッチする広い音場を作ることで、没入感や臨場感が増してきます。
(岡田さん) 65インチ以上の大画面テレビは、ご家族とリビングで楽しむ、という用途も増えてきていると思います。となると、広い空間で複数人での視聴が主になりますので、どの位置で聞いても違和感のないような音作り、リスニングエリアの広さも重要になります。
- ブランドサイトではテレビの機種・サイズとサウンドバーの組み合わせを自由に入れ替えてシミュレーションも可能です。こちらから
- 画像でシミュレーションした「XRJ-65X95L」(4K液晶テレビ)と「HT-A7000」(サウンドバー)を実際に組み合わせるとこんな感じ。
65インチ以上に適したサラウンドとは?
──ソニーでは、65インチ以上の大画面テレビとの組み合わせには、「HT-A7000」や「HT-A5000」が推奨されています。それはなぜですか?
(加藤さん) 先ほどテレビが大画面になるほど音場の広さが重要とお話ししましたが、実際に「HT-A7000」と「HT-A5000」はサウンドバー単体でも広い音場を感じられるように設計されているからです。さらにもう一つ、低域の再生能力が高いことも重要なポイントです。画面サイズに見合った迫力で低音が出せると、臨場感がぐっとアップします。
大きい音場を作ることと、より深い低音域の再生には、筐体の大きさが音に直結します。大型テレビとの組み合わせが想定されているモデルは筐体も大きくできるので、上下方向の表現や空間の広がりは明確に感じていただけると思います。特に「HT-A7000」の低域の余裕感は「HT-A5000」ともちょっと違ったものがありますね。
- 2機種の大きな違いはスピーカー数。「HT-A7000」は7.1.2ch、「HT-A5000」は5.1.2chとなっています。さらに「HT-A7000」には「HT-A5000」よりも15%ほど大きいウーファーを2基搭載して低音を強化しています。ほかにも、各スピーカーも素材を変えて、それぞれに最適化しているそう。
- サウンドバー
「HT-A7000」
- サウンドバー
「HT-A5000」
──“広い音場を表現する”ため「HT-A7000」や「HT-A5000」に採用されている技術があれば教えてください。
(加藤さん) 左右方向を表現するビームトゥイーターと上下方向を表現する上向きのイネーブルドスピーカーをどちらも搭載しているモデルは、現在のラインアップではこの2機種のみです。これらにソニー独自のバーチャルサラウンド技術を組みあわせることで、より現実に近い、立体音響を再現しています。
- 「HT-A7000」と「HT-A5000」では、前方からのスピーカーだけで立体音響をつくるソニー独自の波面制御技術「S-Force PROフロントサラウンド」と左右2基のビームトゥイーターによる壁反射の組み合わせ、フロントスピーカーだけで高さ方向を再現する音響技術「Vertical Surround Engine」を搭載しています。さらに上向きに設置されたイネーブルスピーカーによる天井反射の組み合わせで音の密度と広がり感を両立して、より没入感の高いサラウンドを実現しています。
(岡田さん) あとは「360 Spatial Sound Mapping(サンロクマル スペーシャル サウンド マッピング/以下360SSM)」です。広い音場を作るにはリアスピーカーの設置が非常に効果的ですが、「HT-A7000」「HT-A5000」は別売のワイヤレスリアスピーカーを接続いただくことで360SSMも用いた圧倒的な臨場感を体感することができます。
(加藤さん) 技術としては、音場最適化技術によりサウンドバーの内蔵マイクを使用してスピーカー間や天井までの距離を自動計測、そして複数スピーカーからの音を合成してファントムスピーカーを作る、これら2つを合わせて360SSMです。これにより実スピーカーがない位置からでも音が聴こえたり、配置が理想でなくとも自動で補正が可能になりました。空間を音で埋め尽くすような広大なサラウンド感、シーンの中に居るような新体験を実現しています。
(橋本さん) 「HT-A7000」は商品発売後にソフトウェアのアップデートで360SSMに対応しました。アップデート後も、音につながりが生まれて空間が広がるなど、お客様からも高い評価をいただいていると感じています。
(加藤さん) PlayStation 5を360SSMと組み合わせてゲームで楽しまれているというお客様から、臨場感や、音源と一致した方向から音が聴こえるのが素晴らしいとおっしゃっていただきましたね。
(岡田さん) 360SSMを使い空間を音で埋め尽くしてシーンの中にいるような広がりを作り、S-Force PROフロントサラウンドやVertical Surround Engineなど独自の波面制御技術によって音に厚みを持たせ、迫力や臨場感を引き立てる密度感も両立するというのが、ソニーのホームシアター商品に共通する音作りの方向性であり、効果を実感いただけると自信を持ってお薦めできる部分です。
- 「360 Spatial Sound Mapping」はソニー独自の立体音響技術で、サウンドバー「HT-A7000」および「HT-A5000」で使用するためには、別売のリアスピーカーが必要です。サウンドバー本体左右に内蔵されたマイクを使い、スピーカー間の距離と、各スピーカーから天井までの距離を測定し、その測定結果をもとに波面合成を行い、ファントムスピーカーをフォーマットにおける理想位置に作り出す技術です。ちなみに「HT-A9」または「HT-A3000」とリアスピーカーの組み合わせでも使用できます。
設置の工夫でよりよい映像体験に
──大画面テレビ向けのサウンドバーについて、お薦めの使いこなしはありますか?
(岡田さん) 「自動音場最適化機能(Sound Field Optimization)」による自動補正は、設定時とそうでない場合でかなり違ってくるので、スピーカー設置時に補正をしていただくのがお薦めです。部屋の環境やスピーカーの設置場所は本当に千差万別で、みなさん色々ですよね。ですので「HT-A7000」と「HT-A5000」には、どういう設置環境であっても理想的な音場が提供できるように補正する技術が搭載されています。
(加藤さん) 技術としては、サウンドバー本体に内蔵されているマイクを使って天井や壁までの距離を計測し、それに応じて、音の強弱であったり、方向であったり、音の出し方を適切に調整するものです。
- 音場最適化の完了画面。所要時間は1〜2分ほど。「いかに簡単に精度を高くやるかという点は、かなりディスカッションを重ねて実現しました。本体を移動させたり、動かさなくてもインテリアの模様替えをしたらまた変わってくるので、そのたびに最適化を実施いただけると、音の臨場感がぐっと変わってきます」(岡田さん)
- リアスピーカー「SA-RS5」
「このモデルはバッテリーが内蔵されていますので、映画を見る時など使用する時だけ取り出して、好きな場所に設置して使うこともできます。その時にOptimizeボタン一つで測定が開始され、簡単にベストの状態にできます。」(橋本さん)
(橋本さん) お客様によってはリアスピーカーやサブウーファーを置けないというケースもあります。ご自分に合うものを選んでいただけるように、別売のオプションとしてリアスピーカーやサブウーファーもそれぞれ複数機種を揃えています。どの組み合わせでも自動音場最適化機能を実施していただくことで、理想的な音場に自動調整できます。
(岡田さん) 本来「この組み合わせにはこういう音でしょう」という限定的な音作りのほうがやりやすいです。ですのでどういうシステム、環境でも、という作り方には相応の苦労が伴いますが、やはりお客様ごとのお好みで選んでいただきたいと思います。
- そのほか大画面テレビ向きの機能に、ブラビアと連携して使う「アコースティックセンターシンク」があります。「大型テレビほど画位置も高くなるので、声の定位を画面内に引き上げるアコースティックセンターシンクは効果的です。センター成分の低域をサウンドバーで、高域をテレビのスピーカーから再生する機能です」(加藤さん)
- ソニーが揃えるサウンドバーはすべて壁掛け対応ですが、壁掛け用のブラケットが同梱されているのは「HT-A7000」「HT-A5000」のみ。壁掛けすることで音が変わらないよう、設計時に検証しているそう。
──最後にユーザーに向けてメッセージをお願いします。
(岡田さん) ソニーのホームシアター商品は、エレクトロニクスとエンタテインメントの知見を結集して、さまざまな想いと技術が詰め込んである製品になっています。ぜひお客様に映画館のような空間を、お家のなかで体験していただきたいです。
(橋本さん) お客様の視聴環境はさまざまですが、それぞれに最適なものをご提供できるように、豊富なラインアップと選べるオプションを揃えました。お好みに合ったものを選んでいただければと思っております。
(加藤さん) どの組み合わせでもお客様に感動していただけるよう、こだわりを持って音質を調整しています。ぜひ体験していただきたいです。
──サウンドバーも体験の場がもっと広がるといいですね。本日はありがとうございました。
- 取材に協力してくれたみなさん(左から)
ソニー株式会社 商品技術センター商品設計第2部門 設計2部 加藤智也さん
ソニー株式会社 共創戦略推進部門 ホームエンタテインメント商品企画2部 橋本琢磨さん
ソニー株式会社 共創戦略推進部門 ホームエンタテインメント商品企画2部 岡田知佳子さん
SPEC
「HT-A7000」
●総合出力:500W ●スピーカー構成:7.1.2ch ●ユニット数:スピーカー合計11基(フルレンジ×5、ウーファー×2、ビームトゥイーター×2、上向き×2)●接続端子:HDMI入力×2、HDMI出力×1、光デジタル音声入力×1、USB-A×1 ほか ●外形寸法:1300W×80H×142Dmm ●質量:8.7kg
「HT-A5000」
●総合出力:450W ●スピーカー構成:5.1.2ch ●ユニット数:スピーカー合計9基(フルレンジ×3、ウーファー×2、ビームトゥイーター×2、上向き×2)●接続端子:HDMI入力×1、HDMI出力×1、光デジタル音声入力×1、USB-A×1 ほか ●外形寸法:1210W×67H×140Dmm ●質量:6.1kg