4K Ultra HDブルーレイの注目タイトルを、プロの評論家が画質と音質の評価チャート付きで紹介する連載企画。今回は、現在発売中の映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』、『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』、『レザボア・ドッグス』の3タイトルを取り上げます。画質と音質の見どころを、大橋伸太郎氏が自宅のホームシアターで徹底的にチェックしました。
CONTENTS
・『ゴジラxコング 新たなる帝国』
・ノンストップでドルビービジョンとアトモスが活躍
・『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』
・音場を飛び交うゴースト、HDRが開花するクライマックス
・『レザボア・ドッグス』
・4Kリマスターでディティールと立体感が向上
『ゴジラxコング 新たなる帝国』
- 『ゴジラxコング 新たなる帝国』
¥9,900(税込)
TBR34215D
東宝
●製作:2024年/米 ●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:115分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、英語ドルビーTrueHD 5.1ch、英語ドルビーTrueHD 2.0ch、日本語吹替ドルビーTrueHD 5.1ch、バリアフリー日本語音声ガイドドルビーTrueHD 2.0ch、英語オーディオコメンタリードルビーTrueHD 2.0ch ●字幕:日本語、日本語吹替用、バリアフリー日本語、オーディオコメンタリー用
TM & © 2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. GODZILLA TM & © TOHO CO., LTD.
●ストーリー
地上の守護神ゴジラ、地下空洞の覇者コング。そのバランスに影が忍び寄る。未確認生物特務機関モナークが危機を知らせるシグナルを受信したのだ。戦いに備え放射能を吸収するゴジラ。何かに導かれ地底深く降下していくコング。地底空洞を降った探索隊が出会ったものはコングとゴジラの神話の起源、そして邪悪な偽りの王スカーキングと古代怪獣シーモがいまにも地上世界への進出をうかがっていることだった…。
- ●監督:アダム・ウィンガード ●出演:レベッカ・ホール ●特典:オーディオコメンタリー(オーディオコメンタリー:アダム・ウィンガード(監督)&アレッサンドロ・オンガロ(ビジュアルエフェクト)&トム・ハモック(プロダクションデザイナー)&ジョシュ・シェファー(編集))
TM & © 2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. GODZILLA TM & © TOHO CO., LTD.
ノンストップでドルビービジョンとアトモスが活躍
CG主体のアクションシーンを補うように、実写シーンは現実味を狙ったクリアで落ち着いた映像。巨大生物の量感と広大な地下世界の空間再現がサウンドデザインのテーマです。全篇見所&聴き所の連続ですが、本領を発揮するのはCH5以降、探検隊がイーウィス族の支配する地下世界に脚を踏み入れてから。ダークシーンが続き闇と光のコントラストが美しく、HDRの暗部表現が問われます。CH6、7色のクリスタルの王宮は演色が美しくBT.2020とHDR明部階調の表現が問われます。
CH7悪役スカーキング登場、野太い咆哮が轟き、振り回す鞭の風切り音が360°音場を旋回します。煮えたぎる溶岩流を背景に古代怪獣シーモが出現。『ロード・オブ・ザ・リング』 を連想させる暗黒描写は、白熱した光線の応酬がドルビービジョンの見せ場。CH9黄金の光をまとい守護神モスラ覚醒し、舞台は地上へ。カイロのピラミッドが舞台のゴジラとコングの対戦は、エネルギー変動でゴジラの背びれがマゼンタに発光。放射能火焔もドルビービジョンでピンク色に煮えたぎり、スクリーンを焦がすまぶしさです。(大橋伸太郎)
- 明暗表現も色彩設計も見事なドルビービジョン。音場をいっぱいに使った怪獣バトルは大迫力
TM & © 2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. GODZILLA TM & © TOHO CO., LTD.
『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』
- 『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』
¥7,590(税込)
SPUF-1001
ハピネット・メディアマーケティング/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
●製作:2024年/米 ●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:115分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語 DTS-HDマスターオーディオ 5.1ch、日本語ドルビーデジタル5.1ch(バリアフリー日本語音声ガイド)、英語ドルビーデジタル2.0ch(オーディオコメンタリー) ●字幕:英語、日本語、日本語吹替用、日本語オーディオコメンタリー用
© 2024 Columbia Pictures Industries, Inc. and TSG Entertainment II All Rights Reserved.
●ストーリー
第1作の孫の世代の若きバスターズの活躍を描く。ビル・マーレイやダン・エイクロイドも出演の3世代マーケティング映画。幽霊退治の才能はあるが、周囲になじめず孤独なフィービーは夜の公園で少女のゴーストに出会い意気投合。しかし、ゴーストの背後には覚醒のチャンスをうかがう古代メゾアラビアの邪神ガラッカが潜んでいた…。
- ●監督:ギル・キーナン ●出演:ポール・ラッド ●特典:本編オーディオコメンタリー(監督・脚本:ギル・キーナン)
© 2024 Columbia Pictures Industries, Inc. and TSG Entertainment II All Rights Reserved.
音場を飛び交うゴースト、HDRが開花するクライマックス
映像は現代的にクリアで精細感豊かな一方、コントラストを抑えたシックで落ち着いた画質です。ダークシーンは透明感と艶があり、主人公フィービーが夜の公園で出会う少女のゴーストは青い光の演光が効果的です。定番モンスターのアグリー・リトル・スパッド(スライマー)やライブラリー・ゴーストは今回も健在。CGの精細感をあえて控えてアナログVFXのアンシャープな味を出しています。怖がらせるところはちゃんと怖い本作の持ち味も忘れられていません。
サラウンドは超常現象の演出と暴れ狂うゴーストの量感と移動表現が中心。CH12フィービーがイオン分離装置で幽体離脱するシーンは不気味な轟音が音場を旋回し、真鍮球オーブに封印されていたガラッカが解き放たれます。続くバスターズとガラッカの対決は、プロトンパックの7色の光線がほとばしる中盤のクライマックス。派手なHDR効果はここから。CH13ガラッカの冷凍魔術で真夏のニューヨークが氷河期に。CH15は、ホームシアターがガラッカの魔力で解き放たれた無数のゴーストが光芒をまとって飛翔するニューヨーク上空に変わります。邪神の魔術を迎え撃つのは、フィービーのプロトンパック攻撃とようやく目覚めたファイヤマスターの炎の魔術。スクリーンに光が乱舞し、HDRの効果が最大に開花します。(大橋伸太郎)
- クライマックス、7色の光線がほとばしるHDRと音場を飛び交うゴーストで、視聴室がNY上空に変わる
© 2024 Columbia Pictures Industries, Inc. and TSG Entertainment II All Rights Reserved.
『レザボア・ドッグス』
- 『レザボア・ドッグス』
¥8,580(税込)
HPXR-2571
キングレコード/ハピネット・メディアマーケティング
●製作:1992年/米 ●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:99分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーTrueHD 5.1ch、日本語ドルビーTrueHD 2.0ch ●字幕:日本語、吹替補助日本語
© 1991 Dog Eat Dog Productions, Inc. All Rights Reserved.
●ストーリー
大きなヤマを前に顔合わせの朝食に集まったギャングたち。タイトルが出ると犯行は終わっていて、宝石の強奪に成功はしたものの、警官の待ち伏せで2人が死亡、1人が瀕死の重傷を負い車でアジトの倉庫へ運ばれる。ここからは舞台劇を思わせる進行。7人の実行犯のうち、誰が潜入捜査官だったのか。疑心暗鬼の内輪もめが始まり、1人また1人と死んでいく…。
- ●監督:クエンティン・タランティーノ ●出演:ハーヴェイ・カイテル ●特典:※同梱のBDに収録/Deleted Scenes、Playing It Fast and Loose、Profiling the Reservoir Dogs
© 1991 Dog Eat Dog Productions, Inc. All Rights Reserved.
4Kリマスターでディティールと立体感が向上
1990年代完成期のフィルム撮影のポテンシャルが4Kプロセスで豊かに引き出されています。俳優のクローズアップのディテールの豊かさ、引いた画の立体感が圧巻のみごとなリマスター。音声はドルビートゥルーHD。密室劇に近い進行でサラウンドの要素がないため、イマーシブサウンドは不要と判断したのでしょう。ストイックな音作りが逆に銃声の衝迫力と量感を際立たせます。
全篇に流れる血糊の量はハンパでありませんが、歌舞伎のそれのように嘘っぽい赤であることに注目。「芝居性」を意図したもので、それが伝わるかがディスプレイの試金石。CH9ブロンドが人質の警官をいたぶる暴力シーンの背景に軽快なポップスが流れるのは、映像と音楽の対位法的使用の好例。続くCH10、12発の銃声が轟く逆転劇は全篇のヤマ場。CH15『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』を思わせる息詰る三つ巴の対決は映画の華。『狼/男たちの挽歌・最終章』を連想させるラストも映画愛にあふれています。(大橋伸太郎)