CONTENTS
・大橋伸太郎が選ぶ「高画質」ソフトベスト5!
・『DUNE 砂の惑星PART2』
・『オッペンハイマー』
・『マッドマックス:フュリオサ』
・『PERFECT DAYS』
・『鈴木清順「浪漫三部作」』
・惜しい…「画質」が残念だったタイトル
大橋伸太郎が選ぶ「高画質」ソフトベスト5!
2024年に発売された4K Ultra HDブルーレイの中から、当サイトでソフトレビュー連載も執筆している評論家・大橋伸太郎氏の琴線に触れた「高画質」ソフトベスト5を選出。ホームシアターファン必見の見どころをご紹介します!(編集部)
『DUNE 砂の惑星PART2』
- 『デューン 砂の惑星PART2』
【初回仕様】4K ULTRA HD&ブルーレイセット¥8,580 (税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
●製作:2024年/米 ●ジャンル:洋画SF ●本編ディスク:166分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、英語ドルビーデジタル5.1ch、日本語ドルビーデジタル5.1ch ●字幕:英語、日本語
© 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.
香料のきらめきやメカのディティールといった細部を描く
フランク・ハーバートの原作小説は1960年代的なドラッギーでスピリチュアルな英雄サーガですが、今回の映画化はサブカル的要素を切り捨てハードSFの要素をクローズアップしました。脚色の着眼が隅々にまで貫かれた重厚で冷厳とした映像が特徴。砂漠を描いた映画は古今数多いですが、実景の景観の切り取り方に『アラビアのロレンス』、きらめく香料を孕む砂の流動性の描写に勅使河原宏の『砂の女』を連想させます。
CH6ポール・アトレイデスが初めてサンドワームを御するシーンはワイド画面を最大限活かした撮影構図、CH4/9/11/14巨大メカが降下し画面を埋め尽くすシーンはCG描画の最前線、一方CH16ポール・アトレイデスとフェイド=ラウサ・ハルコンネンの刀が切り結ぶクライマックスは伝統的な活劇映画の醍醐味に満ちています。
『オッペンハイマー』
- 『オッペンハイマー』
4K Ultra HD+ブルーレイ¥7,260(税込)
ブルーレイ+DVD(ボーナスブルーレイ付)¥5,280(税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
●製作:2023年/米 ●ジャンル:洋画ドラマ ●本編ディスク:180分、スコープ、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語DTS-HDマスターオーディオ5.1ch、日本語DTS5.1ch ●字幕:バリアフリー英語、日本語
©︎ 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
トリニティ実験のシーンは繰り返し見たいクオリティー
カラー映像とモノクロ映像が頻繁に入れ替わります。基本的に一人称視点の映画で、ルイス・シュトラウス中心のシークエンスになるとモノクロに変わります。いち科学者の立場を貫くオッペンハイマーに対し科学官僚のシュトラウスはオッペンハイマーの「陰画」としてモノクロで描かれるのです。
ビジュアルの重点を実験シーンに集中、CH14夜更のトリニティ実験は、爆発の閃光、遅れて紅蓮の炎、次にきのこ雲が見上げる高さで画面に立ち昇ります。十数秒後になってやっと爆発音とLFEの衝撃波が揺さぶります。量子物理学のイメージ映像が所々挿入されます。CG嫌いで知られるノーランのこと、フィルムの光学処理(アナログVFX)で作り上げたと推測され、これだけ連続してみたい素晴しいイメージ映像です。
『マッドマックス:フュリオサ』
- 『マッドマックス:フュリオサ』
【初回限定生産】4K ULTRA HD&ブルーレイセット¥8,580(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
●製作:2024年/米●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:148分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス5.1ch、英語ドルビーデジタル5.1ch、日本語ドルビーデジタル5.1ch ●字幕:英語、日本語
© 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
解像感と色彩が豊か、画面から情報が滲み出る
近年のハリウッド映画のルックは、極端な色彩や階調の設定を避け、ナチュラルなクリアトーンが主流ですが、荒廃した未来のディストピアを舞台にしたアクションの本作は近来に珍しく、コテコテのグレーディング(色彩、階調、ノイズ感)がなされています。しかし、解像感は豊か。イエロー、マゼンタ系にエネルギーの重点を置いたアーシーな色彩の奥から情報が滲み出てきます。
CH1ロケーションの実写映像とデジタルのバックを合成していますが、あえてシームレスに均さず書き割りっぽい立体効果を出しているのにも注目。前作の息つく暇もないテンポ感とカメラワークの面白さは後退しましたが。デジタルの映像技術と俳優たちの体技が掛け算になって生み出す映像体験を味わえる映画。
『PERFECT DAYS』
- 『PERFECT DAYS』
豪華版5枚組BOX【UHD+Blu-ray+DVD】¥14,300(税込)
発売元:ビターズ・エンド
販売元:TCエンタテインメント
●製作:2013年/日 ●ジャンル:邦画ドラマ ●本編ディスク:124分、スタンダード、HDR10 ●本編音声:日本語リニアPCM5.1ch ●字幕:なし
©︎ 2023 MASTER MIND Ltd.
絶妙な明暗でディスプレイのHDR再現力を問う1本
小津オマージュのスタンダード画面、現代東京をさりげなく切り取ったロケーション撮影に「なぜ今年のベスト5?」という疑問を持たれるかもしれません。平凡なようでいて実は難関ソフトなのです。
主人公平山の数日間を追いますが、夜明けから夕暮れまで一日を光の微妙な変化で表現しています。CH3/10/11公園で平山が見上げる木漏れ日の明暗、CH12夜闇の中浮かび上がるケイコの女の媚態をにじませた表情、続く長い抱擁と嗚咽に劇中語られない平山の過去を知る鍵が隠されています。CH15夜の桜橋の袂で友山と興じる影踏み、エンディングでの次第に目を赤く潤ませていく長回しの平山のクローズアップと、ディスプレイのHDR(暗部階調、明暗コンビネーション)の再現力が問われる撮影が続きます。いいテレビ、プロジェクターでぜひもういちど。
『鈴木清順「浪漫三部作」』
- 『鈴木清順「浪漫三部作」』
【4Kデジタル完全修復版】UHD+Blu-ray BOX(6枚組)¥26,400(税込)
発売元:TCエンタテインメント
販売元:TCエンタテインメント
●製作:1980年、1981年、1991年/日 ●ジャンル:邦画ドラマ ●監督:鈴木清順 ●本編ディスク:『ツィゴイネルワイゼン』 144分、スタンダード、SDR/『陽炎座』139分、スタンダード、SDR/『夢二』128分、ヨーロッパ・ヴィスタ、SDR ●本編音声: 日本語2.0chモノラル(3作品共通) ●字幕:なし
豊かな色域で作品の真価を発揮する4Kリマスター盤
2Kブルーレイボックスがたいへん高画質だったので、必要ないかなとためらったのですが結局買ってしまいました。そして、買ってよかった…とつくづく思いました。ストーリーテリングの面白さ、重量感では『ツィゴイネルワイゼン』です。大谷直子のヌードも眼福。しかし映像の華は後年の二作。『陽炎座』の大楠道代の舞台衣装の絢爛たる色彩美、血をぶちまけたような黒みがかった赤はBT.2020の広色域があればこそ。まさに4K化の恩恵といえるでしょう。
しかし今回の収穫は『夢二』 。初めて作品の真価がビデオグラムに現れました。『陽炎座』の清順歌舞伎のけれん味や奔放さはありませんが、フィルムに刻まれた主演女優毬谷友子の裸身には鏑木清方や上村松園の美人画の匂い立つ官能美があります。
惜しい…「画質」が残念だったタイトル
『JOHN WILLIAMS IN TOKYO』(ブルーレイ)
2Kブルーレイに止まっていることが残念です。4Kで録画しているでしょうから4KUHD BDで出してほしかった。映像編集も無造作にすぎるきらいがあります。映画の該当するシーンを持ってくることは無理だったでしょう。しかし、作品と曲が使われるシーンの解説や、指導動機(ライトモティーフ)の説明やそれを受け持つ楽器等オーケストラ編曲の狙いを映像で解説したり、もう少し工夫ができたはず。これだけのコンサートはなかなか催せないはずですから。