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ガイド

  • 防音室をつくろう!
    連載第1回「音って何?」
    音の大きさ、高さ、音色の違いを知る

    取材・執筆 / 井田有一(ホームシアターファイルプラス編集部)
    2019年5月29日更新

快音空間をつくろう!

ホームシアターにとって「大画面」と「迫力のサラウンド」は欠かせません。大画面は壁一面を確保できればよいのですが、良質なサラウンドをつくるには、スピーカーなどの機器だけではなく、部屋づくりも大切です。そこで今回から、「いい音=快音」を再生できる空間づくりをサポートする連載がスタート! 講師にお招きしたのはヤマハ株式会社の青山将士氏。初回は“基礎の基”ということで「音」について伺いました。

  • 講師はヤマハ株式会社 音響事業本部コミュニケーション事業統括部 マーケティング&セールス部国内営業グループの青山将士氏。長くホームシアターのインストール業務にも携わってきた経験をもつ一級建築士です。現在は防音ルームの設計など、快適な音環境を構築する仕事に従事している音のプロです。
  • まるで自宅に映画館があるかのような迫力を楽しみたいなら、部屋環境を整えることが重要です。「音漏れ」の抑制方法など、本連載で順次解説していきます。なお、写真はヤマハの防音室「アビテックス」の事例。ホームシアターと楽器演奏室の兼用ルームです。

音の「三要素」

青山氏 まず「音」とは、空気などを媒介して伝わるもの(振動波)です。そのため真空状態の宇宙では音は存在しませんし、媒介するものが変われば音の聴こえ方も変化します。例えばヘリウムガスを吸うと高い声になりますが、これはヘリウムが空気よりも軽量なため、音速が上がったことが理由となります。また室内で音を出せば、壁や天井に音が当たって反射・拡散します。そのため様々な音が重なって聞こえることで「残響/響き」が生まれます。

  • ドアのノック音は、ドア自体が震えて音を発生させています。空気以外にも床や壁などを伝わっていく音もあります。

音の大きさ=「音量」

青山氏 「大きさ」、「高さ」、「音色」、この3要素を知っておくと、音の理解が深まります。「大きさ」とはいわゆる音量のことで、私たちは雪が降るくらいの小さな音から、落雷のような轟音まで聞き取れますので、その音を単位dB(デシベル)で表現します。下図も参考に、実際の音の大きさをイメージしてみましょう。

  • 人の会話なら60dB程度。ホームシアターの場合は個人差があるので60〜100dB程度を想定しましょう。また、音量は10dB大きくなると、聴感上2倍の音量に感じます。

音の高さ=「音高」

青山氏 声に「高い」と「低い」があるように、音には「高さ」があります。これを音高と言います。単位はHz(ヘルツ)です。身近なところですと、オーケストラで調音に使われる音は「A(ラ)」で440Hzの音です。専門的に言うと440Hzとは1秒間に440回振動している状態を意味し、この振動回数が多いと高い音になり、少ないと低い音になります。

  • ピアノは88鍵盤あり、音の出せる範囲は27.5Hzから4,186Hzまで、これに倍音と呼ばれる響きの成分が加わることで複雑な音が生まれます。

響きの個性=「音色」

青山氏 ヴァイオリンとトランペットのように音量や音階が同じでも、楽器が違えば聴こえる印象は全く異なりますよね。これが「音色」の違いです。私たちの声も「声紋」があるくらい、人によって異なります。付け加えると同じ種類の楽器でも、素材や製造方法でも音色は変わるため、アーティストは楽器選びにこだわるのです。

  • オーケストラは多彩な楽器があるため、音色によって受け持つ役割も異なります。また、同じ音量でも快適な音、不快な音があるのも音色の違いです。

音楽のはじまりと効果

青山氏 次は音楽についてです。人が狩猟生活をしていた時代、獲物を怖がらせようと声を掛け合っていたのが、ハーモニーの発祥だとする説があります。そのくらい自然と音楽は私達の暮らしに寄り添ってきました。現代では様々な音楽ジャンルがありますが、皆さんも好きな音楽を聴くとリラックスできますよね。これは、音楽を聴くと人はα波という脳波が出るためで、これが心地よさに繋がっていると言われています。

  • 音楽のほかに風や小川のせせらぎなどの「自然界の音」も心地よい音の代表例です。この自然音は高い音の割合が少ない「1/fゆらぎ」という音の分布になっています。人が長年親しんできた音のためか、心地よさを感じるようです。

楽しいだけではない音楽の効能

青山氏 音楽の活用法はエンタメ用途以外にも広がっています。BGMの例は顕著で、「音があるから音を出してもいい」という気持ちになり、BGMのある空間では自然と会話が生まれます。一方、私たちは様々な音を同時に聴いていますが、雑踏の中でも人と会話できますよね。ですが、会話中に理解できる言葉が別に聞こえてくると、話に集中できなくなりませんか? そうした集中力の低下を音楽で防いだり、病院や薬局などで、患者以外に聞こえてはいけない会話を聞こえにくくしたりする「サウンドマスキング」という考え方も、音楽の新しい活用方法として注目されています。

●「サウンドマスキング」していない状態


Speech Privacy System マスキング音 ON/OFFの比較1_病院(OFFの場合)

●「サウンドマスキング」した状態


Speech Privacy System マスキング音 ON/OFFの比較2_病院(ONの場合)

次号予告「音もれの原因と対策」

初回は音の基礎知識、音楽の使われ方についてお話しました。次回は「音と快適に暮らす方法」を大テーマに、まずは「音漏れの原因」を探究していきます。音漏れの一番の原因は「目に見えない隙間」です。意外かもしれませんが、実は「窓」は音漏れの原因になりやすいポイントです。次回の更新もご期待ください。