CONTENTS
スペック表の読み方
スペック表はオーディオ機器の仕様や性能を読み解く大切な資料です。今回は「出力音圧レベル」「周波数特性」「クロスオーバー周波数」「入力インピーダンス」「許容入力」といった、スペック値のカギになる用語を中心に解説し、まとめとしましょう。
- スピーカーシステムの一例です。この場合「バスレフ型2ウェイ」という形式と、ユニットの構成、サイズなどから「これは小型のブックシェルフで、バスレフポート付きのキャビネットを用いているんだな」とわかりますね。ユニットの数値は口径を表しています。
出力音圧レベル(dB)
スピーカーから出てくる音の大きさを示す目安で、能率や感度と同じ意味です。いまAとBのスピーカーがあるとします。そこに同じ強さの音楽信号(1Wの電気信号)を加えたとき、Aの方がBよりも大きな音がしたとすれば、Aの方が能率のよいスピーカー。こちらの方が、出力音圧レベルが高いわけです。1m離れた点の音圧をマイクで測定し、単位はdB(デシベル)で示しますね。一般には小型スピーカーよりも大口径のユニットを用いた大型システムの方が能率では有利。3dB違えば音の大きさで2倍の差になるので、小出力のアンプでも楽に鳴らせるわけです。
周波数特性(Hz)
周波数レンジや、再生周波数帯域とも呼びます。低域から高域までどのくらいの帯域で、そのスピーカーが再生できるのかの目安。スピーカーはアンプのように周波数特性がフラットではないので、厳密な規定は難しいのですが、中域から上下に-10dB下がったところまでの帯域で表示されるようです。帯域の広いスピーカーがワイドレンジ、その反対がカマボコの特性をもったナローレンジなスピーカーです。
クロスオーバー周波数(Hz)
2ウェイのスピーカーであればクロスオーバー周波数はひとつ。低域側を受け持つウーファーと高域を受け持つトゥイーターを特定の周波数を境として、重ね合わせています。このクロスさせるポイントの周波数がクロスオーバー周波数です。これが3ウェイになるとウーファー、スコーカー(ミッドレンジ)、トゥイーターの3ユニットなので、例えば「500Hz/7kHz」というようにクロスオーバーがふたつになります。
インピーダンス(Ω)
スピーカーはアンプからみると負荷(LOAD)です。負荷には必ずインピーダンスというものがあり、スピーカーの場合は公称インピーダンスとして4Ωや6Ω、8Ωなどの数値が記されていますね。これは一種の交流抵抗です。スピーカーには音声電流の流れるボイスコイルがあり、ほぼこの値が公称インピーダンスとなっています(実際は低域にピークがあり、中域にかけて一旦下がって高音域では上昇傾向)。インピーダンスはアンプのドライブ力と関係があるのですが、入門クラスではそこまで知らなくてもよいでしょう。
許容入力(W)
連続して加えてもスピーカーが壊れない入力値です。よく「このスピーカーは何W出るの?」という人がいますが、それは間違いです。出るものではなく、入力できる電気信号の強さをW(ワット)で呼ぶのです。いいかえるとスピーカーのタフさ。プロの現場などでは、「がんがんブチ込んでも壊れないタフなやつ!」などという表現も使われますね。極めて短時間に加えてもよい入力を最大許容入力(ピーク入力)として表示する例もあります。
内部構造のおさらい
スペックの読み方がわかったところで、さきほどのエンクロージャーやユニットのことに戻りましょう。スピーカーのさらに内部を覗くと、ネットワークやATT(アッテネーター)、さらに端子関連のことも知りたくなってきましたね。もう一度おさらいしておきましょう。
エンクロージャー(キャビネット)
スピーカーは必ず箱に入っています。その箱がエンクロージャーであり、キャビネットとも呼ぶのです。箱に入れる主な目的は低域の正しい再生でしたね。裸のウーファーユニットをそのまま鳴らしても、空振りしたようなスカスカの低音しかでてこない。これはコーンの前と後ろの空気とが交じりあうためで、それを遮断してあげるのがエンクロージャーの基本の考え方なのです。方式によって密閉型とバスレフ型に二分できましたね。ほかにもドロンコーンや、PAに使われるバックロードホーンなどもあります。
密閉型
スピーカーの背面を覆い、空気が漏れないようにしたエンクロージャーの基本的な形式です。ユニットに適度な空気バネ(エアサスペンション)がかかり、ダンピングの効いた締まりのある低音が得られるのが特徴です。
バスレフ型
バスレフとはバス・レフレックスの略。位相反転のキャビネット形式で、ポート(ダクト)と呼ぶ空気孔によって低音が増強される方式です。ポートを塞ぐと密閉箱の動作となり、低音のノビがとまりますね。だからバスレフポートは自由な空間が必要なのです。特にリアにポートのあるタイプでは、背後の壁に近づけ過ぎないようにしましょう。ポートの位相反転動作のかわりに、パッシブラジエーター(コーンのみのユニット)を装着したドロンコーン方式も低域がぐんとリッチになる方式です。
スピーカーユニット
スピーカーユニットで一番シンプルなのがフルレンジです。1本で全域をカバーするタイプですが、さらに広帯域の再生を求めると2ウェイ、3ウェイなどのマルチウェイシステムとなります。そこでは低域専用のウーファー、中域を受け持つスコーカー、高音域用のトゥイーターなど専用のユニットが用いられます。フルレンジは、名前のとおり、低域から高音域までの全レンジを1本でまかなうスピーカーユニット。16~20センチ程度がメインですが、システムとしての採用例はわずかです。
ウーファー
低音専用スピーカー。ウーファーは猛獣の声に由来します。
スコーカー
人の声など中音域をカバーするスピーカーで、ミッドレンジユニットとも呼びます。
トゥイーター
小鳥のさえずりが語源の、高音域用スピーカーユニットです。ドーム型や最近ではさらに軽量&高帯域なリボントゥイーターが用いられます。
ネットワーク
マルチウェイシステムでは高、中、低それぞれのユニットに相応しい音域の音を入力しなくてはなりません。その仕分け作業をするのがネットワークです。LやCなどの素子からなるフィルター回路がその基本でしたね。各ユニットに流す音楽信号のつなぎ目となる周波数が、上で述べたクロスオーバー周波数です。
アッテネーター(ATT)
ユニット間のレベル差を埋めて特性をフラットにする、レベル調整器です。例えば2ウェイの場合、ウーファーに比べてトゥイーターの能率が高く設計されているために、このまま鳴らすと高音域がキンキンしてしまいますね。そこでアッテネーターをトゥイーターに入れ、聴きやすいレベルに合わせるのです。
シングルワイヤー/バイワイヤー
スピーカーの入力端子で、普通に一対の+/-端子がついているのがシングルワイヤーです。これに対して、バイワイヤーというのはHigh(高音)とLow(低音)の端子が独立しているタイプ。バイワイヤーつなぎでは、アンプからこのHとLに対して、専用でスピーカーケーブルをひいてつなぎます。その理由は、ウーファーからの逆起電力がそのままトゥイーターに入って音を濁さないためです。
- このほか、スピーカーから音が出る仕組み(フレミングの法則)や、コーン型、ホーン型、ドーム型といったユニットの種類をおさらいしておくとよいでしょう。さあ次回からいよいよアンプ編がはじまります。
スピーカー編まとめ
第3回「スピーカーのタイプと選び方」
第4回「スピーカーのキャビネットの役割」
第5回「スピーカーのユニットの種類」
第6回「スピーカーのネットワーク(前編)」
第7回「スピーカーのネットワーク(後編)」
第8回「スピーカーのつなぎ方」
第9回「スピーカーの置き方」
第10回「スピーカーのスペックの読み方」
アンプ編へつづく