ケンウッド(旧トリオ)発祥の修理専門会社「ティーエス・プロ(TS-PRO)」。D&Mホールディングスのアフターサービスを開始しオーディオに力点を置き始めた彼らの新拠点「神奈川事業所」の、修理現場に直撃しました。
[part1]大切なオーディオ機器をながく使いたいから “修理専門”カンパニー「ティーエス・プロ」
受付 ドリンクサービスやタブレット決済も
神奈川営業所は、厚木インターすぐのビジネスタワービル「厚木アクスト」21階にあります。車で訪ねるなら非常にわかりやすく、アクセスもスムーズです。ハンドキャリー出来るものなら持参すればいいのですが、たいていは重量物。その場合は、駐車場に停めた車中から電話すれば、スタッフが駐車場まで台車を持って迎えに来てくれます。
「受付だけですぐお帰りいただくのではなく、お客様がいらしてお寛ぎいただける場所にしたいと考えました」(サービスセンター・小澤さん)
ちなみに、現在は修理品の受付や修理時の代金決済手続きをタブレット端末のみでできるシステムを開発中。「たとえば、修理品をお引き取りいただくときに、わざわざ受付までお越しいただかずとも、こちらから駐車場までお品物をお運びし、車中でタブレット端末を操作、キャッシュレス決済いただくことで、車中で手続きはすべて完了、なんてこともできるようになります」と小澤さん。
コールセンター「お待たせしません」応答率90%以上!
受付の裏には、コールセンターがあります。思ったより少人数。これで多くの顧客からの電話を受けきれるの!? と驚いていると、驚きの答えが。
「ここで北海道から九州までの修理に関するお電話を一括して受けます。月2000件ほどに上るお電話の受話率が90%以上です」。なんと、ほぼ待ち時間なくつながるといいます。
修理の現場 思い出と愛情の宝庫
いよいよ実際の修理の現場へ。そこには、80年代のオーディオ話で盛り上がった修理マイスター中馬さんのほかに、もうひとり、矢後さんというマイスターがおられました。Bowers & Wilkins「Nautilus」の修理といえばこの人、だそう。
「ここには作業台が12卓あります。作業するエンジニアが快適に働けるよう、フロアの中でもいちばん明く眺めのいい窓際に配置されています」
基本的には、バラして不良箇所を特定し部品を交換したり、清掃したりして修理完了となります。ときに超音波洗浄機を使用して、ノブ類についた頑固な汚れまで落とすこともおこなっています。ボリュームやセレクターのガリもできるかぎり分解して清掃する根気の必要な作業で、時給に換算したらとても割に合う仕事とは言い切れません。
なんて、ニコニコしながら地道な作業。修理して元通りにしたら見えなくなってしまうところなのに、すごく丁寧すぎます。写真付きでお返ししたらいいのになあ等と思って次の卓に行くと・・・。
どうやらネットワークオーディオ系の修理。「電源が落ちる」という症状が再現せず苦笑いしていました。そのほかに困るのは? と訊くと「中途半端に手が入っているもの」だそう。使ってはいけない“接点復活剤”が塗布されていたり、我流で改造されているものは元通りにするのがたいへんだということです。
旧いアナログ製品ほど、構造がシンプルで不具合箇所を特定しやすく、交換や清掃でキチンと直ります。SDGsの観点からも、思い出と愛情がこもったオーディオ機器に再び息吹を吹き込むサービス(修理)は、もっともっと目を向けられていいジャンルだと思います。
次回は、出張修理のようすをリポート。まさかの“あのユーザー宅連載”とリンクします。