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  • 8K最前線インタビュー 連載 第4回 目指したのは8Kテレビの“レファレンス”
    遂に登場した「Z9H」の開発秘話に迫る!
    SONY「KJ-85Z9H」

    取材・執筆 / 松井泰裕(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2020年3月30日更新

“感じる美しさ”がコンセプトの8Kブラビア

多数のテレビブランドが8Kテレビの開発を推し進めているなか、遂にソニーから初の8Kテレビ「Z9Hシリーズ」が発売されました。北米や欧州、中国では「Z9Gシリーズ」として先行して発売されていましたが、今回の国内モデルは8Kチューナーが内蔵された特別仕様のモデルとして、名前も改め登場。日本のホームシアターファンの期待にしっかりと応える仕様にブラッシュアップされています。連載「8K最前線インタビュー」第4回は、ソニー「Z9Hシリーズ」の開発秘話に迫るべく、開発のキーマン3名にお話を伺いました。

  • 8Kチューナー内蔵液晶テレビ
    KJ-85Z9H
    ¥OPEN(実勢価格¥2,000,000前後)
  • 今回の取材では、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(株)TV事業本部 商品企画部 青木 翔氏(左)、同社 同部 商品設計部門 商品設計1部 井川直樹氏(中央)、同社 同部 商品設計部門 商品設計2部 萩尾淳二氏(右)、3名の方々にご協力頂きました。

青木氏「Z9Hシリーズは、“クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。” というソニーが掲げる存在意義のもと、8Kブラビアの国内発売を待ち望んだユーザーに向けて自信を持ってお届けする、8K液晶テレビです。コンセプトは、“感じる美しさ”。4Kテレビでは成し得なかった、本物感や実存感まで表現することで、“8Kテレビのレファレンスモデル”を作り上げることを目標に開発いたしました。」

  • Z9Hシリーズは、ソニーがテレビづくりの究極である“クリエイターの制作意図を完全に再現したい”という目的を追求して生まれた最高峰モデルの証である「MASTER Series」を冠した待望の8Kシリーズ。ソニー独自の高画質・高音質技術が結集しています。

そのZ9Hシリーズによる最高峰の高画質を叶える根幹技術が、高画質プロセッサー「X1 Ultimate」と、独自のバックライト技術「バックライト マスタードライブ」です。

青木氏「すでに4Kテレビに投入されているX1 Ultimateですが、8Kテレビを見据えて開発した非常にパワフルなプロセッサーです。8K専用のデータベースによる『オブジェクト型超解像』や『デュアル・データベース分析』『HDRリマスター』なども8K向けに強化しています」。

  • Z9Hシリーズに搭載の高画質プロセッサーX1 Ultimate。膨大な8Kの映像信号をリアルタイムで分析と処理を行うソニーのノウハウが凝縮されています。
  • 被写体ごとに最適に高精細化してくれる技術「オブジェクト型超解像」。従来の超解像処理では失われてしまうような質感までも現実に近い質感に再現します。
  • ノイズ低減技術のノウハウを凝縮した「デュアルデータベース分析」を新搭載。超解像処理の「8K X-Reality PRO」とノイズ低減、2つのデータベースを組み合わせて高精度に処理することができます。

青木氏「バックライト マスタードライブは、最大100インチの超大画面モデルまでラインアップする、4K液晶テレビのフラグシップ『Z9Dシリーズ』で好評を得た技術です。こちらも8K向けに進化しています。8Kは物理的な画素が多いため、どうしても暗くなりコントラストが落ちてしまいがちですが、Z9Hシリーズは4Kテレビ以上の明るさを実現しています」。

  • パネル背面に高密度に敷き詰めたLEDモジュールを独立して駆動させる「バックライト マスタードライブ」。LEDモジュールの光が隣接への漏れを防ぐことで、細かな部分においても精度の高い明暗表現が可能になりました。
  • ソニー独自のアルゴリズムに基づき画面全体の光のバランスを精密に調整する「8K X-tended Dynamic Range PRO」。暗い部分の電流を明るい部分に集中させ、個別のLEDを強力に発光させられることで、超高画素な8K映像であっても明るく優れた輝度表現を実現しています。

液晶の特性を最大限に活かした技術がカギ

ソニー初となる国内向け8Kテレビ、Z9Hシリーズ。8Kモデルには、映像の制作現場で使用されるようなマスターモニターがないため、制作者が意図した映像を超高精細な8Kでも正確に届けられるように、基本性能を徹底的に磨き上げたと井川氏は語ってくれました。

井川氏「デバイスの特性をしっかり理解した上で、そのデバイスの強みを最大限に活かし、ベストなものをユーザーに届けることがブラビアの使命だと考えています。そしてクリエイターズインテントを正確に届けられるよう、基本性能を叩き上げています。特に明部階調を高次元に表現できる『バックライト マスタードライブ』は、液晶デバイスの特性を最大限に活かせる、ソニーを代表する技術です。明るさに対しての応答が優れていると、白飛びせず黒も潰れず、滑らかな階調も再現できるため、ハイコントラストな映像が8Kでお楽しみいただけます。8Kを見越して開発したX1 Ultimateがあったからこそ、膨大な8Kの信号においても緻密で正確なバックライト制御処理を可能にしてくれました。このようにZ9Hシリーズには、ソニーがこれまで培ってきた液晶のノウハウが120%注ぎ込まれています」。

  • 画質メニューは一新。テストパターン用のコンテンツを使用して、画像調整を追い込んだ上で、標準的な「スタンダードモード」やコントラストの高い「ダイナミックモード」などを作りこんでいったとのこと。

井川氏「レファレンスとしても度々使用される映画『ハドソン川の奇跡』ですが、バックライト制御だけでなく、映像処理信号の高さも試される、まるでテレビメーカーへの挑戦状のようなシーンです。ソニーでは、どんなテレビでもこのシーンを再現できるように注力しており、Z9Hシリーズにおいても満足いただける映像に仕上がったと思います」。

実際に視聴してみると、映画『ハドソン川の奇跡』は、サリー機長が真夜中のタイムズ・スクエアをジョギングするシーンでも、背景のLEDビジョンや看板の文字は飽和せずにネオンがよりいっそう際立ちます。ただでさえ情報量の多いシーンですが、8Kの大画面で見ると新たな発見の数々に驚くばかりです。

また、映画『レヴェナント:蘇えりし者』の冒頭、暗闇のシーンでは暗部のグラデーションは滑らかで、主人公を演じるディカプリオの表情も見て取れること。映画『ダークナイト ライジング』、暗闇の中でマシンガンが発射される瞬間にストロボのようにパカパカと光るシーンでは、バックライトと液晶パネルの同一応答制御が正確なため、一瞬だけ映るバットマンの姿もはっきりと判別できること。この応答制御が追いつかないと、バットマンのカット数が減ってしまう、といった事態に陥ってしまうこともあると井川氏は言います。

  • 画面のピーク輝度を調整できる「X‑tended Dynamic Range」。その他にも、「明るさ」「コントラスト」「ガンマ補正」「黒レベル」「黒伸長」「自動コントラスト」「ピーク輝度」といった、細かい明るさ設定も可能です。

あらゆるコンテンツを超高精細な8K映像に

8K解像度を見据えて作った専用のデータベースを持つ「8K X-Reality PRO」。2K信号の中から4K成分、または4K信号の中から8K成分を生成し、再創造する画期的な技術です。視聴した砂浜の4K映像は、砂粒の凹凸がより鮮明な8K映像に生まれ変わり、間近で観ると本当に触れそうな感覚にさえ陥ります。

井川氏「バックライトと液晶パネル、それぞれの明るさと透過率を細かくコントロールできます。精細感が高まることで、奥行き感の表現にも繋がり、被写界深度も忠実に再現されます。色の再現性についても、ソニー独自の階調技術『Super Bit Mapping 4K HDR』により、8Kにアップコンバートしても飽和せずに表現できます。
映画『マリアンヌ』の空爆シーンは、よくレファレンスのシーンとして視聴しますが、暗闇の中でもスーツや建物の色味を残しながら漆黒を再現できています。また、映画『ジョーカー』のアーサーとトーマス・ウェインが男子トイレで会話をするシーンにおいても、服の色味、被写体が動いた際のボケも自然に表現できていると思います。4K UHD BDで観る映画コンテンツでも、豊富な色情報を描き切れるよう心掛けています」。

  • フルハイビジョンや4K映像といった、あらゆるコンテンツをシーンごとに専用の8Kデータベースを参照し高精細化処理をする「8K X-Reality PRO」。
  • ソニー独自の階調変換機能により、地上放送やブルーレイディスクなどの8bit映像、HDR信号などの10bit映像を14bit相当に出力する「Super Bit Mapping HDR」。

井川氏「正面から見た時の色の正確性はもちろん、斜めから見ても色の変化が少ない『X-Wide Angle』も採用しています。光学設計とバックライトの部分制御の相乗効果による技術で、有機ELパネルに間違えられることもあるくらい広い視野角を実現しています」。

  • LEDバックライトの光を制御するために開発されたソニー独自の光学設計により、斜めから見ても正面視聴時と同等の高コントラストな映像表現が可能な「X-Wide Angle」。

大画面にも負けない迫力と広がりある音響

Z9Hシリーズは、8Kによる没入感をさらに高めてくれる“音”にも注目です。4K液晶テレビで採用された「アコースティック マルチオーディオ」をベースに、8K映像に最適化したサウンドへと進化。画面の上下にトゥイーターとウーファー、背面にサブウーファーを設置しています。Z9Hシリーズのサウンドについて萩尾氏は以下のように語ります。

萩尾氏「大画面で映像と音の最高体験を味わえることがコンセプトにありました。映像と音の一体感を高めるためには、音像を画面の中央にしっかり定位させることが重要です。そのため、特性を見極めて上下のスピーカーを選び、しっかりと定位をさせながら、大画面にも負けないような迫力と広がりあるサウンドの両立を図っています」。

  • まるで音が映像から聴こえる、独自の音響技術「アコースティック マルチオーディオ」を採用。85型の大画面に最適な構成になるように、画面上下に対となるようにスピーカーを4基配置し、背面にはサブウーファーを2基搭載しています。

萩尾氏「ネットワークは多数のパターンを作り、トゥイーターとウーファーに最適なクロスオーバーを実現させる基板を開発しました。視聴時の没入感追求のため、スピーカーの存在は目立たないよう消し込んでいるのですが、振動板が半分以上隠れていても、反射を起こしにくくするWave Guide(音響レンズのようなフィン構造)を採用することで、高域もはっきりと聞こえるように配慮しています。大画面の映像に負けない音圧、画と音の一体感を両立するため、エンクロージャーの容量や形状、ネットワーク基板、Wave Guideの構成など、何度もトライアンドエラーを繰り返し、理想的なサウンドを目指しました。また、Z9Hシリーズから出る音をセンタースピーカーとして活用できる『センタースピーカーモード』も採用しています。AVアンプなどと組み合わせる際に活用できるモードで、ホームシアターのサラウンド構築に便利な機能です。」

  • スピーカーごとに20mm ソフトドーム・トゥイーターを1基、ボイスコイルにCCAW(銅被ふくアルミ線)を採用した42mmウーファーを2基搭載。ユニットが振動した際に発生する空気の背圧や、それに伴う音の歪みなどを考慮して丸形のユニットを採用。(写真上) 反射を起こさないようにするソニー独自のWave Guide(写真は開発時のプロトタイプ)を設けることで、高音もはっきりと聞こえるように設計されています。(写真下)

萩尾氏は「音楽コンテンツ、なおかつアコースティックなコンテンツは、テレビのスピーカーで再生することがとても難しいですが、繊細な音色や音の響きを丁寧に出すこと、そしてZ9Hシリーズの大画面からさらに音が広がっていくような、大きなステージの臨場感を余すことなく再現できるようにしています。センタースピーカーモードにすると、ボーカルやセリフもしっかりと画面中央に定位し、本当に画面から音が鳴っているような感覚を体感できると思います」と、実際に音楽コンテンツを試聴しながら、Z9Hシリーズのサウンドの特長を萩尾氏が語ってくれました。

  • サラウンドシステム構成時にテレビ画面がセンタースピーカーの役割を果たす「センタースピーカーモード」に対応。映像と音の一体感をAVアンプを用いたサウンドシステム構成時に堪能できます。
映像を際立たせる洗練されたデザイン

Z9Hはこだわりあるデザインも魅力のひとつ。映像に没入できるように、デザインも抜かりがありません。

青木氏「高画質と高音質を突き詰めたことで、どうしてもベゼルの存在感が出てしまっていました。Z9Hシリーズでは、ベゼル部にフィン構造を採用し、光が当たった際の影を活かすことで、ベゼルを意識させないデザインを施しました。しかも、フィン構造は放熱にも効果的です。視覚の要素と機能性を兼ね備えた最高のデザインに仕上がりました」。

  • ベゼル内に「Blade」を並べて影を作り出すことで、光の影響を軽減。素材にはアルミを使用し、8Kの映像再生時に必要となる高い放熱効果にも寄与しています。

青木氏「Z9Hシリーズは、映像と音、そしてデザイン、全ての面で8Kならではの感動を体感できるモデルになっております。開発期間は惜しまずに、本当にプレミアムなものを届けられるように作り上げた“真のフラグシップテレビ”と言える自信作になりました」。

今後開催されるビッグイベントをネイティブ8K映像で、また2K・4Kで楽しんできたコンテンツを8Kアップコンバートで、どちらにおいても最高峰の映像体験を楽しませてくれること間違いなしのZ9Hシリーズの画と音を、ぜひ一度体感してみてもらいたいです!

取材協力

  • ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(株)
    TV事業本部 商品企画部
    青木 翔氏
  • ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(株)
    TV事業本部 商品設計部門
    商品設計1部
    井川直樹氏
  • ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(株)
    TV事業本部 商品設計部門
    商品設計2部
    萩尾淳二氏

SPEC

SONY
KJ-85Z9H
●デジタルチューナー数:地上デジタル×2、BS/110度CSデジタル×2、BS4K/110度CS4K×2、BS8K×1 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:85型(1872W×1053Hmm/対角2148mm) ●画素数:7680×4320 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、Dolby Vision ●スピーカー:トゥイーター×4、ウーファー×8、サブウーファー×4 ●音声出力:10W+10W+10W+10W+10W+10W+10W+10W ●主な入出力端子:HDMI入力×4、光デジタル入力×1、アナログ音声入力×1、USB入力×3、センタースピーカー入力×1 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz) ●対応ストリーミング動画サービス:Netflix、Amazon Prime Video、TVer、DAZN、dTV、hulu、U-NEXT、Abema TV、TSUTAYA TV、Rakuten TV、YouTube ●消費電力:945W (待機時0.5W) ●外形寸法:1913W×1226H×432Dmm (スタンド含む) ●質量:75.8kg (スタンド含む)

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