デザイン&アートのフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」が10月27日(日)まで開催。今年は、表参道/外苑前/原宿/渋谷/六本木/広尾/銀座/東京駅周辺の96会場にもおよびます。筆者も参加してきましたが、「Reframing」をテーマに、パターナリズムに陥りがちな日常をアート&デザインで “見つめ直そう” とする、ポジティブかつ生産的な展示が目立ちました。
「STUDIO KAZ」×「SWAG」×「京都府」による空間展示
今回取り上げるのは、オーダーキッチンのデザインを得意とするSTUDIO KAZが、ふだんはショールームとして活用するマンションの一室で催した “茶会” です。コンクリートの素材感を生かした黒ずくめの薄暗い室内に足を踏み入れると、ひらひらとたおやかにそよぐ丹後ちりめんに、煌びやかな映像が映し出された六角堂を思わせるようなステージが。これが「THE CHAKAI」の茶会です。
- STUDIO KAZによる展示「THE CHAKAI」
誘われるまま少しかがんで「にじり口」から茶室に立ち入るや、丹後ちりめんがわずかな刺激を感じ取り、表面に映し出された映像も “弾け飛び” ます。お点前と相まって五感を刺激、プロジェクターならではの浮遊感ある空間での不思議な時間を過ごすこととなりました。
ちりめんに触れるか触れないかといった微細な力をセンサーが感じ取り、床下に埋め込まれた超短焦点プロジェクターが映し出すプロジェクションマッピングに反映されるこの仕組み。公設研究機関として100年以上の歴史を持つ「京都府織物・機械金属振興センター」が開発し、特許も取得した「空気の流れ検知装置ならびにそれを用いた映像・音響システム」をベースに、STUDIO KAZの和田さんがプロデュースしたものです。
プロジェクションマッピング制作は、SWAG(シンユニティグループ)の若手が担当。茶室入り口にあたる「にじり口」と、亭主が入ってくる「茶道口」部分は黒マスクにして制作したコンピューターグラフィックを4分割、4台のプロジェクターに振り分けて投写しています。
アートやインテリアしかり、オーディオもしかりですが、「作り手」たるデザイナーの意思や意図が完成されたモノとして提示される例が大半。ですが、実際にその空間にいる「使い手」の気持ちを基準に “Reframing(捉え直す)” すれば、マンションの一室であっても五感を刺激するしつらえができるんです。プロジェクターが、そうした体験に一役買っていることに感銘を受け、インテリアデザイン領域でのさらなる可能性を再認識しました。
EVENT INFORMATION
- DESIGNART TOKYO 2024「THE CHAKAI」
場所:STUDIO KAZ(東京都中央区3-1-2ー304/Googleマップ)
ディレクション・空間デザイン・グラフィックデザイン:STUDIO KAZ
https://studiokaz.com
映像制作:SWAG(SYMUNITY GROUP)
https://www.swag.pics
技術/布提供:京都府織物・機械金属振興センター
https://www.pref.kyoto.jp/oriki/