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  • 言葉とイメージの関係を紐解く「恵比寿映像祭2025」東京都写真美術館ほかで1/31から 1/31から恵比寿ガーデンプレイスほか各所にて開催!

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2025年1月30日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

開館から30周年を迎える東京・恵比寿の東京都写真美術館(TOP)をメイン会場とする展示会「総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 Docs―これはイメージです―」が、1月31日(金)から2月16日(日)まで開催されます。今年は「ドキュメント/ドキュメンタリー」の再考をテーマに、メディアの変容に着目します。

「ドキュメント/ドキュメンタリー」を映画の起源から探る

TOPの展示会は毎回興味深いテーマ性が魅力ですが、今回も幅広い作品群を提示しつつ、イメージと言葉から「ドキュメント/ドキュメンタリー」の再考を試みようとするもの。

ドキュメント(document)は書類や文書を意味し、事実に基づく情報の記録を指します。そして、これを形容詞化したドキュメンタリー(documentary)という言葉は、形容詞の語義だけでなく記録映画という名詞をも意味します。その関係性とは?

リュミエール兄弟による『工場の出口』(1895年)で人々を驚かせた日常の記録・再生が、130年を経たいまや誰もが手のひら上でワンタッチでおこなえ、すぐさま不特定多数人と共有できるようになりました。そればかりか、AIの発展によるフェイクの混在など「事実」と「イメージ」の関係性は、ますます複雑かつその価値も曖昧なものとなっています。

本展示会では、TOP全フロアにおいて、国内外で活躍するアーティストによる映像、写真、資料などのパフォーマンスや身体性と関連する作品群を展示。さらに、東京都コレクションの展示および上映、パフォーマンス、ライブ、トーク、ワークショップなどのプログラムを通して、19世紀から現代にいたるさまざまな表現を紹介しつつ「時間を記録すること」に焦点をあてつつ、言葉とイメージの問題を紐解いていきます。

今年第2回目となる「コミッション・プロジェクト」のファイナリストによる新作も紹介。また、恵比寿ガーデンプレイス各所で展開するオフサイト展示では、テーマに寄り添った作品を体験できる場が設けられます。

国内外の多彩な参加アーティストも魅力

独自の視覚表現によって文化や歴史を再文脈化するメディア・アーティストのトニー・コークス(アメリカ)は、日本初公開作品群を美術館内各所やオフサイト会場に展示。

  • トニー・コークス インスタレーション風景、2023-2024年(Dia Bridgehampton、ニューヨーク)Courtesy the artist, Dia Art Foundation, New York, and Greene Naftali, New York. Photo: Bill Jacobson Studio, New York[参考図版]

アジアからは、劉玗(台湾)によるビデオと空間インスタレーション作品のほか、ヴェネツィア・ビエンナーレで発表されたカウィータ・ヴァタナジャンクール(タイ)による映像作品、アーカイブおよびフィールド・リサーチを通じて支配的なナラティブに挑戦するプリヤギータ・ディア(シンガポール)によるメディア作品が出展されます。

  • 劉玗(リウ・ユー)《If Narratives Become the Great Flood》 2020年
  • カウィータ・ヴァタナジャンクール《The Toilet》2020年
  • プリヤギータ・ディア《The Sea is a Blue Memory》2022年

また、角田俊也による新作映像インスタレーションや、フィルム表現の可能性を追求する斎藤英理のほか、2021年に他界し、セクシュアリティ表現と闘い続けたパフォーマンス・アーティスト、イトー・ターリのアーカイブ展示からテーマを掘り下げ考察します。

  • 角田俊也《スクリーニング vol.1》2024年
    「写真鉱山 / スクリーニング vol.1」(スプラウト・キュレーション企画)より[参考図版]
  • 斎藤英理《Social Circles》2023年
  • イトー・ターリ《ひとつの応答ーぺ・ポンギさんと数えきれない女たち》(2012年12月「アジアをつなぐー境界を生きる女たち1984-2012」展 沖縄県立博物館・美術館)パフォーマンス使用画像より[参考図版]写真提供:ターリの会

東京都コレクションからは、ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット、ジュリア・マーガレット・キャメロン、杉本博司などの写真作品、修復を施した古川タク、藤幡正樹のメディア作品展示など、「ドキュメント/ドキュメンタリー」再考の視点から、写真や映像を主とした様々な表現を展示し、言葉とイメージの関係性を通して再考を促します。

  • 古川タク《ニッケル・オデオン・動画劇場》1988年
    東京都写真美術館蔵
  • 藤幡正樹 《Beyond Pages》1995年 東京都写真美術館蔵
    “Masaki Fujihata: Augmenting the World,” LAZNIA Centre for Contemporary Art exhibition, Gdańsk 2017, Photo: Paweł Jóźwiak

そして、3月23日まで継続して展示を行う3階展示室では、第2回「コミッション・プロジェクト」で選出された4名のファイナリストによって恵比寿映像祭2025のために制作された作品群を展示します。

小田香は、イメージと音を介して「人間の記憶のありか」について探求する作品を展開し、小森はるかは、独自の方法で記憶を伝承するドキュメンタリーの在り方を考える作品を出品します。永田康祐は、食や植民地の歴史のリサーチに基づいて、さまざまな語りが交錯する複合的な作品を出品。ろう者である牧原依里は、身体感覚の視点から作品制作に取り組み、映像の実験的な手法を提示します。

都内でアタマを柔らかくする映像の祭典。ショッピングがてら恵比寿ガーデンプレイスへ足を運んでみては。

イベント開催概要

総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです―
●会期:1月31日(金) – 2月16日(日)月曜休館
※コミッション・プロジェクト(3F展示室)のみ3月23日(日)まで
●会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所ほか
●時間:10時00分 – 20時00分(最終16日は18時00分まで/入館は閉館の30分前まで)
※コミッション・プロジェクト(3F展示室)のみ10時00分 – 18時00分(2月18日 – 3月23日/木曜・金曜は20時00分まで)
●料金:入場無料 ※上映など一部プログラムは有料
●主催:東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団東京都写真美術館/日本経済新聞社
●後援:J-WAVE 81.3FM
●協賛:サッポロビール株式会社/東東京都写真美術館支援会員
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