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  • Cassinaが持つタイムレスで色褪せない魅力の秘密を知る、青山本店の新作展示レポート ソファ/ラグ/テーブル/照明/フラワーべースなど豊富に揃う

    取材・執筆 / 松原ひな子(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2025年4月4日更新

カッシーナ・イクスシーが取り扱うイタリアのインテリアブランド・Cassina(カッシーナ)は、シャルロット・ぺリアンコレクションをはじめとする新作コレクションを3月初旬から順次、国内の店舗でもお披露目。青山本店では、シャルロット・ぺリアンの娘でシャルロット・ぺリアン・アーカイブス代表のペルネット・ぺリアン=バルザック氏らが来日、トークイベントも開催されました。

  • カッシーナ・イクスシー青山本店。店内は定期的に模様替えをしており、季節ごとのスタイリングやトレンドを楽しめます。なお、取材は3月中旬におこないました

新作も交えてシーンごとのコーディネートを展示

カッシーナ・イクスシー青山本店では、リビングやダイニング、ベッドルーム、ホームオフィスなど、シーンごとのコーディネートが展示されていました。新作家具はカッシーナらしく、20世紀初頭に活躍したシャルロット・ペリアン作品の復刻に加えて、現在ブランドのアートディレクターを務めるパトリシア・ウルキオラの新作など、歴史的背景もさまざまに感じられる多彩なアイテムが揃っています。

シャルロット・ペリアンコレクションの復刻にあたり、製品化ならびに量産化が実現したのは、技術が向上したことが要因とのこと。ペリアンの意図を忠実に反映できるよう、時間をかけて製品化に取り組んだといいます。

  • 1階はシャルロット・ペリアンコレクションを中心に、新作アイテムを展示。シェーズロング「INDOCHINE CHAISE LONGUE」は、アーム付きかつ座っても揺れ動かない堅牢な設計で、妊娠中などでも安心して使えます。ペリアン本人が妊娠中に読書や執筆、デザインを続けられるようつくられました
  • 復刻の際にアームの素材を籐からスチールへ変更して安定感を高めました。こういったデザイン変更には、シャルロット・ペリアンの娘で後継者であるペルネット・ペリアンが監修
  • フラワーベース「VASE À FLEURS ÉCHANCRÉ」は、スケッチのみ存在していた作品を、今回初めて量産化。製品化の際にはペルネットがブラッシュアップを施しました
  • TABLE MONTPARNASSE」は1940年代から1950年代にかけて7台のみ製造されたテーブルで、当時はカスタム品のため6人以上に対応するほどの大きなサイズもあったそう。復刻にあたり現代の生活に合わせて使いやすいサイズ(1830W×740H×1250Dmm)へとブラッシュアップされ、同じくペリアンがデザインしたダイニングテーブル「VENTAGLIO」より少し小さい程度となりました
  • 6つの面で構成された特徴的な非対称の形。複数のTABLE MONTPARNASSEを組み合わせて使ったり、壁に寄せてカウンター風に使用したりと、さまざまな用途を想定しています。アッシュ材(ブラック)とウォールナット材(ナチュラル)をラインアップ

こうした多様なアイテムを展開しているのは “カッシーナの世界観” を演出するため。ワンシーンの中にかならず、現代で活躍するデザイナーだけでなく、1920年代から50年代のさまざまな時代で活躍したデザイナーが手がけたアイテムを組み合わせているといいます。一つ一つに当時のさまざまな歴史的背景があり、よりタイムレスに、また美しく調和しています。

またショールームには、一般的なインテリアショップと比べると “色” を多くつかったインテリアが展示されていました。これは現在カッシーナのアートディレクターであるパトリシア・ウルキオラ氏の方針で「お店はお客さまが見て楽しむ場所だから」と、深く印象に残るものを取り入れているそうです。

  • 2階はシーンに合わせたコーディネートが楽しめます。パトリシア・ウルキオラ氏が手がけた「DUDET」は新しくソファタイプが登場。組み合わせてダイニングシーンを演出しています
  • 新作のペンダントランプ「GALAXY」やミラー「NO VANITAS」をはじめ、テーブル、ブランケット、ラグ、フラワーベース、カトラリーに至るまで、コーディネートに取り入れられているのはすべてカッシーナが手がけたアイテムとなっています

陰影のつくり方、使い方には日本の美意識との共通点も

3月には、ペルネット・ぺリアン=バルザック氏と、彼女の夫でありシャルロット・ぺリアンの研究家であるジャック・バルザック氏がフランスより来日。多くのブランドファンも駆けつけトークイベントが開催されました。香川大学創造工学部 教授/プロダクトデザイナーの井藤隆志氏がモデレーターを務め、今回のトークテーマ「The Design of Stillness」について、谷崎潤一郎著『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』の一節を取り上げてペリアン作品の魅力を深く掘り下げ、日本の美意識との共通点を語らう場となりました。

  • ペルネット・ぺリアン=バルザック氏(左)/ジャック・バルザック氏(右)
  • 井藤隆志氏

シャルロット・ペリアンは、20世紀初頭からモダンデザインを牽引したフランスの建築家・デザイナー。1920年代から金属を家具に取り入れ、ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレと共に革新的なデザイン、また機能性と美しさを兼備する家具を生み出しました。

1940年の来日をきっかけに日本の伝統的な建築や工芸品に触れ、空間の使い方や陰影の美学に感銘を受けたシャルロット。トークイベントでは「FAUTEUIL GRAND CONFORT」や「CHAISELONGUE A REGLAGE CONTINU」など、彼女が手がけた家具や建築を挙げて、実際に日本の伝統的な要素からどのようなインスピレーションを受けたのかが解説されました。シャルロット・ペリアンのデザインについて、ペルネット・ぺリアン=バルザック氏とジャック・バルザックは下記のように述べています。

「シャルロットは自由で探究心旺盛な人物で、異文化を積極的に取り入れる姿勢を持っていました。新作のシェーズロングはインドシナでデザインされたものですし、フランス、日本と、さまざまな土地でインスピレーションを得ていることが、多くの作品にも表れています。彼女のデザインは単なる装飾ではなく、人間の動作や空間の効率的な活用を重視しており、たとえば椅子や収納家具は使用者の快適さを最優先に設計されています。伝統的な技法とモダンデザインを融合させた点が、当時としては非常に画期的でした」(ペルネット・ぺリアン=バルザック氏)

「彼女のデザイン特徴の一つは、素材へのこだわりにもあります。金属、ガラス、木材、籐など、多様な素材を用いてそれぞれの特性を活かしながらデザインしました。あるときは、いわゆる廃材、木切れを用いてパーテーションをつくったこともあります。色や素材を使って家具にコントラストを生み出すだけでなく、その家具が置かれる空間全体との調和も意識していました。山間の庵や都市のアパートメントなど、異なる環境に応じてデザインを生み出し、それぞれの場所に最適な形や素材を選んでいます。シャルロットのデザインは単なる造形ではなくそこに暮らす人々の体験を豊かにするものでした。そのため、彼女の作品には機能性と詩的な美しさが共存し、時代を超えて愛され続けているのです」)(ジャック・バルザック氏)

  • 日本建築の壁付き棚や床の間に影響を受けたというシェルフ(上)/文楽の黒子から影響を受けたというチェア「OMBRA」(下)
    (c)Charlotte Perriand Archives
  • シャルロットが実際に建築を見た際のスケッチも
    (c)Charlotte Perriand Archives

家具と空間との関わりは、実際に置いたり触れたりしないと感じ取れないもの。しかし、居心地のよい快適な部屋づくりに欠かせないものです。リビングにかぎらず、プライベートルーム、またシアタールームなどをコーディネートする際は、カッシーナ・イクスシー青山本店でよいインスピレーションを得られるかもしれません。

また4月8日(火)からイタリア・ミラノで開催される「ミラノサローネ」に向けて、カッシーナはル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンがデザインしたモデルの復刻60周年を記念して、コレクションの最初の4つのアイテムを新しい3色のバリエーションで発表しました。

美学、特徴、サイズを保ちながら現代の住宅にふさわしいフレッシュで現代的なスタイルに刷新。金属製のチューブフレームが新しい深みのある光沢をまとう赤、青、緑を仕上げています。各モデルのフレームの色に合わせて張地のテクスチャもそれぞれ異なるものを採用しており、「2 Fauteuil Grand Confort, petit modèle」および「3 Fauteuil Grand Confort, grand modèle」は柔らかなモヘアベルベット、「1 Fauteuil dossier basculant」と「4 Chaise longue à réglage continu」は、上質なサドルレザーのシートが使用されています。

  • 2026年4月までオーダー可能なリミテッドエディション
    「1 Fauteuil dossier basculant(フォートゥイユ・ドシエ・バスキュラン)」
    「2 Fauteuil Grand Confort, petit modèle(フォートゥイユ・グラン・コンフォール・プティ・モデル)」
    「3 Fauteuil Grand Confort, grand modèle(フォートゥイユ・グラン・コンフォール・グラン・モデル)」
    「4 Chaise longue à réglage continu (シェーズ・ロング・ア・レグラージュ・コンティニュ)」
  • ミラノデザインウィークには、テアトロ・リリコでの演劇パフォーマンスとインスタレーションも企画。フォルマファンタズマが考案しファビオ・チェルスティッチが演出する没入型の演劇が公演されるとのこと

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