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    新しい鑑賞スタイル「HELLO! MOVIE」
    第1回「HELLO! MOVIE」の楽しみ方~『るろうに剣心 最終章 The Beginning』編

    取材・執筆 / 永井光晴(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2021年7月30日更新

映画ファンのあなたは「HELLO! MOVIE」を知っているか

最近、映画館のスクリーン入口などでよく見かけるようになったものに、“HELLO! MOVIE”というサービスがあります。変わらず映画館を応援してきた映画ファンなら、たびたび見かけるこのロゴマークに気づいている人もいるはずでしょう。

  • TOHOシネマズ六本木ヒルズのエントランスロビー内にある、「HELLO! MOVIE」作品の案内看板
  • 2021年上期のHELLO!MOVIEコメンタリー版作品リスト

まず2021年度上期の「HELLO! MOVIE」対応作品の、ラインナップ(表)をご覧ください。幅広い映画会社によるメジャー作品が、この「HELLO! MOVIE」サービスを提供していることがわかります。「HELLO! MOVIE」は一言でいうと、“映画の副音声サービス”です。ホームシアターファンの皆様には、ブルーレイやDVDビデオパッケージの収録特典をイメージされる方も多いかもしれません。それがスマートフォンを活用することで、劇場公開中に展開されるようになっています。そして劇場で体験することが意外なほど楽しいのです。今回は「HELLO! MOVIE」が登場した技術的な背景と、パッケージ版では得ることのできない副次的なメリットについてご紹介していきましょう。

スマートフォンの普及によって登場した「HELLO! MOVIE」サービス

  • 「HELLO! MOVIE」は、iOS版、Android版の両方のアプリが用意されている

まず、「HELLO! MOVIE」のしくみについて説明していきましょう。核となるのは、2016年にエヴィクサーという会社が開発した、「Another Track」という特許技術です。「Another Track」は作品音声に同期するように工夫されたトリガー(引き金の意味)によって、外部装置(スマートフォンなど)のプログラムを起動させるものです。「HELLO! MOVIE」では、スマートフォン(以下、スマホ)のマイクが映画本編の音を拾うことによって、スマホアプリがあらかじめダウンロードされたコメンタリー音声を流す仕組みになっています。

ちなみに、webサイト「PHILE WEB」では、すでに2年前、「Another Track」技術の映画向けサービス名が“HELLO! MOVIE”に統一される前に、『劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」(ワンピース スタンピード)』が採用したことを取材しています(記事はこちら)。映画の進行に合わせて、作品キャラクター “麦わらの一味” の声優9人によるオーディオコメンタリーをイヤホンで聴くことができる、新たな鑑賞スタイルとしてご紹介しました。

このサービスが成立するようになった重要な要素として、スマホの普及が挙げられます。「HELLO! MOVIE」を楽しむためには、観客が鑑賞時に個人のスマホとヘッドホンを所持していればいいのです。スマホアプリがサービス運用を代行するため、映画会社や映画館は、上映作品自体の音声トラックにコメンタリーを追加する作業が必要ありません。また特別な再生装置を用意する必要もないため、今まで通りの営業スタイルを変えなくていいこともメリットです。

もちろん観客はスマホとイヤホンさえ持っていれば、通常料金で鑑賞できます。劇場で“HELLO! MOVIEやってます”と表示していなくても、対応作品が上映していれば、その副音声を聴くことができます。まさに“三方良し”とは、このことです。

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の「HELLO! MOVIE」コメンタリー

【“ハイスピード殺陣”を作り上げた大友監督、谷垣監督と、主演・佐藤健の約10年間の撮影ウラ話が聞ける】

  • 『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
    (C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

大ヒットシリーズ『るろうに剣心』の「HELLO! MOVIE」コメンタリーを体験

さっそく、劇場で『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の「HELLO! MOVIE」コメンタリー体験してみました。和月伸宏氏の人気コミック『るろうに剣心』の実写映画シリーズで、2012年の第1作目から3作目までで、累計興行収入125億円以上、観客動員数は980万人を突破した大ヒットシリーズの最終章第5作目です。幕末に“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心(ひむらけんしん/佐藤健)が、明治維新後の新しい世の中に、不殺(ころさず)を貫きながら仲間と平和のために戦う姿を描きます。

なんといっても時代劇の定型概念をくつがえした、“ハイスピード殺陣”に心奪われます。作品を重ねるごとに豪華スターかつ実力派俳優を揃えてきましたが、最終章は新田真剣佑、有村架純を迎えてさらに華やかさが増します。最終章は2作連続公開を目論んでいましたが、コロナ禍で延期を余儀なくされ、ほぼ2作同時公開になってしまったにもかかわらず、週末興行収入ランキングで1、2位を独占する人気ぶりです。本作の「HELLO! MOVIE」コメンタリー副音声は、その“ハイスピード殺陣”を発明したといっていい大友啓史監督、谷垣健治アクション監督、そして主演の佐藤健の3人がシリーズを解説します。

10年前の第1作とスムーズにつながる、シリーズ間の安定したルック

『るろうに剣心』シリーズは圧倒的なアクションが魅力の映画ですが、この『The Beginning』だけは、趣を異にしています。本作は前5作までの前日譚であり、主人公・緋村剣心(佐藤健)の頬に残された、十字傷の由来に迫ります。かつて暗殺者であった剣心の過去に焦点を当てて、有村架純が演じる雪代巴(ゆきしろ ともえ)との関係を描いています。「HELLO! MOVIE」が始まると、いきなり「本作品だけアナモルフィックレンズで撮影している」ことが明かされます。それを知ってからスクリーンを観ると、確かにシネスコの左右が若干歪曲していることがはっきりわかります。通常鑑賞していたときには気づきにくい点です。

映像に関しては、日本家屋を撮影現場として使うことで、かなり光と陰を意識してカメラを動かしています。さらに「このシーンはIMAXだとこうなる」と言われると、またIMAXで確認したくなります。作品内では存在する積雪シーンですが、実際には雪がありませんでした。セットの苦労やロケ地のセッティング、またシーン編集のアイデアについても語られています。セリフについても、アニメ版「るろうに剣心」のセリフを、そのまま借りてきて脚本に活かした部分を教えてくれます。シーンによってはアニメでは表現可能だけれど、実写ではどうしても表現できないことなどを語ったりもしています。

そして秘密が明かされないとまったく気づかないこととして、序盤、主人公の剣心が、巴の婚約者・清里明良を斬殺するシーンがあります。実はこのシーンは10年前の『るろうに剣心』第1作の際に撮影された素材だったのです。清里を演じているのは今やスター俳優となった窪田正孝。当時から話題の俳優ではあったものの、まだ20代前半だった窪田が演じた清里は、剣心の頬に”十字傷”最初の1本をつけ、この「最終章」にも同じ映像が登場することとなりました。前後する佐藤健の演技は本作の新たなテイクもあるのですが、まったく違和感のないつながりに驚きます。大友啓史監督は、清里の出てくるシーンについて「(第一作のとき)ちゃんと撮っておいて良かった」とコメント。

  • 主人公の剣心が、巴の婚約者・清里明良を斬殺するシーン。
    (C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

沢山の笑いの要素が含まれたコメンタリー

コメンタリーには笑いの要素もたくさんあります。京都撮影時には、「ちょうど3組の新選組がいた」(岡田准一主演の『燃えよ剣』と、TVドラマのチーム)。別々の新選組どうしで挨拶したそうです。また佐藤健と有村架純が過ごす「隠れ家」の縁側は、有名なお茶のCMっぽいという自虐ネタも。作品を監督、出演した張本人にもかかわらず、「どこで緋村剣心と雪代巴がお互いに愛し合うようになったのか」と、3人が妄想を膨らましたりもしています。シーンを追いながら、「ここだろう」と指摘し、さらには隠れ家を燃やすクライマックスシーンで、「雪代巴の亡骸とどれくらい共にしていたんだろう」と観客サイド的な発言もあったりするのは面白いものです。

公開中の劇場で「HELLO! MOVIE」コメンタリーによって知る情報によって、作品の見方がかなり変化します。実際「もう一度、観たい」というのが率直な感想です。まだ本作を公開している映画館があれば、ぜひスマホを持って映画館へ!

●取材環境:『るろうに剣心 最終章 The Beginning』ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/Screen5/シネスコ
●使用機材:スマートフォン SONY「Xperia 1 II」/イヤホン SONY「WI-1000XM2SM」

「HELLO! MOVIE」は映画館でスマホアプリを起動するだけ

「HELLO! MOVIE」ってどうすれば聞けるの? 難しくないの?と思われるかもしれませんが、普段からスマホでSNSや音楽再生アプリを使っている人なら簡単。しかも無料で楽しめます。

  • Xperia 1 IIにインストールした「HELLO! MOVIE」アプリのホーム画面
  • 「HELLO! MOVIE」対応作品リストからスクロールで選択できます

まず事前に「HELLO! MOVIE」アプリをスマホにインストールします。そしてアプリ内の音声作品リストから、鑑賞する作品の音声データをダウンロードしておくだけです。するとイヤホンからは佐藤健の声で、“『るろうに剣心 最終章 The Beginning』コメンタリー副音声が始まります。最後までどうぞお楽しみください”と流れます。これで準備完了です。あとは、上映時にアプリが起動していれば、自動的に「HELLO! MOVIE」が再生されます。

スマホ画面は明るいので、映画館内では周りの人に迷惑にならないように注意が必要です。ただし「HELLO! MOVIE」は、映画本編の音声をパターンマッチして同期データを再生する仕組みなので、スマホのマイクが塞がれるとうまく同期できなくなってしまいます。筆者はスマホ画面を裏側にしてドリンクホルダーに立ててみました。画面はすぐに光が漏れないように黒くなるので、問題なく「HELLO! MOVIE」を使用できました。また、スマホを“機内モード”にしておくことが推奨されています。ほかの常駐アプリのお知らせ設定がされていると、「HELLO! MOVIE」が止まってしまうことがあるので気を付けましょう。

「ホームシアターCHANNEL」では、今後も「HELLO! MOVIE」を追いかけていきます。第2回は、いま映画マニアの間で話題になっている『映画大好きポンポさん』をレビュー予定です。

【HELLO! MOVIE 最新情報/『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』】

全国公開中の『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』(東映配給)でも、8月7日(土)より「HELLO! MOVIE」によるサービスが開始されます。なんと「副音声ボイスドラマ」と「副音声コメンタリー」豪華2本立てです。

「副音声ボイスドラマ」は、仮面ライダー電王のイマジン・機界戦隊ゼンカイジャーのキカイノイドたちが大活躍します。また「副音声コメンタリー」は、ラジオ番組「東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー」(文化放送 毎週金曜24時30分~25時 放送中)とのコラボが実現! 「出張版 ~ スーパーコメンタリー戦記」と題して、MCの鈴村・神谷の2人に加え、仮面ライダーセイバー/神山飛羽真役の内藤秀一郎と、ゼンカイザー/五色田介人役の駒木根葵汰が参加して、映画撮影の裏側を語ります。

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