VGP phileweb

レビュー

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation 5」 PlayStation 5のアップデート機能を試す
    テレビのスピーカーで3Dオーディオ
    Tempest 3Dオーディオの最適ソフトでチェック

    VGP 取材・執筆 / 山本 敦
    2021年11月22日更新

    • VGP審査員
      山本 敦

アップデートで3Dオーディオ機能も進化

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
    PlayStation 5
    通常モデル→¥OPEN(実勢価格¥54,978前後)
    デジタルエディション→¥OPEN(実勢価格¥43,978前後)

    (C)Sony Interactive Entertainment Inc. All rights reserved.Design and specifications are subject to change without notice.

「Tempest 3Dオーディオ」は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが開発した立体感あふれる最高のゲーミングサウンドを楽しめる技術です。プレーヤーの360度周囲に何百もの仮想スピーカーを配置することで、包み込まれる音場による没入感、鮮やかなサウンドオブジェクトによる移動感が堪能できます。

PlayStation®5(以下、PS5)は3Dオーディオ専用のカスタムユニットを搭載したことで、その実力をフルに引き出せます。この3Dオーディオ技術は、「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」や通常のステレオヘッドホンで楽しめていましたが、PS5の新たなソフトウェアアップデートによって、テレビの内蔵スピーカーによる再生も対応しました。

  • PS5は、3Dオーディオ技術である「Tempest 3Dオーディオ」に対応しています。平面的なサラウンドだけでなく、垂直方向も含めた360°サウンドで表現でき、さらにゲームに特化した作り込みが施されているため、従来にない没入感を味わうことができます。
  • 2021年9月15日に配信されたPlayStation 5の大型システムソフトウェア・アップデートによって、3Dオーディオがテレビのスピーカーでも再生できるようになりました。

本稿では、Tempest 3Dオーディオをテレビのスピーカーで再生するとどのようなサウンドを体験できるのか実際に検証。また、Tempest 3Dオーディオのテレビ内蔵スピーカーへの対応について、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの広報担当者に詳細をメールインタビューで聴くことができたので、本稿で触れられなかった興味深い情報も寄せられたアンケートの回答にも注目してほしいです。

3Dオーディオの設定も音響特性の測定も簡単

PS5のソフトウェア更新が済むと、PS5側のサウンド設定に音声出力が可能なデバイスとして「テレビ」が加わり、3Dオーディオの出力先として選択可能になります。その直下に並ぶ「3Dオーディオ用に部屋の音響特性を測定」を選ぶと、PS5を設置している室内環境の音響特性への最適化が実行されます。測定にはPS5のワイヤレスコントローラー「DualSense」に内蔵するマイクを使用。マイクのミュートを解除した状態で、コントローラーを顔の高さに掲げます。測定を開始するとテストトーンが鳴り、ものの数秒で最適化が完了。PS5とHDMIケーブルで接続しているテレビ側の設定は変更なしです。

  • ソフトウェアアップデート後、PS5の音声出力の設定内にある「HDMI機器の種類」を「テレビ」に合わせ、項目の下に「テレビのスピーカーで3Dオーディオを出力」をオンに設定します。
  • 「3Dオーディオ用に部屋の音響特性を測定」では、テレビから出力される音とゲームをプレイする部屋環境の音をPS5用ワイヤレスコントローラー「DualSense」のマイクで測定することで、プレイ環境に最適なサウンドが楽しめるようになります。測定後は「測定結果を3Dオーディオに反映」の項目をオンにしましょう。

今回はレファレンスとしてソニーの4K有機ELテレビ「XRJ-65X95J」を使用しましたが、新しく追加された機能は通常のステレオスピーカーを内蔵するテレビに広く対応します。一方でサウンドシステムの設計にもこだわっているテレビの方が、立体音響効果はより鮮やかに感じられそうです。レファレンスソフトには、Tempest 3D オーディオの最適化が図られている作品を使用しています。

『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』を聴く

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
    PlayStation®5用ソフトウェア
    『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』
    ¥8,690(税込) ※ダウンロード版/PS Store価格
    ●ジャンル:RPG ●プレイ人数:1人
    (C)2021 Sony Interactive Entertainment LLC. Ghost of Tsushima is a registered trademark or trademark of Sony Interactive Entertainment LLC.
    Developed by Sucker Punch Productions LLC. The Sucker Punch Logo is a registered trademark or trademark of Sucker Punch Productions LLC.

剣劇の迫力から戦場の空気感まで伝わる

立体サウンドが加わることによって、剣劇の迫力がよりいっそう引き締まります。刃がぶつかり合う金属音から火花が散る様子まで、音によりゲーム映像にないビジュアルの情報が補完される印象です。火矢が降り注ぐ空の見晴らしが澄み渡り、大地を蹴る馬の足音が足もとから体の芯に伝わってきます。戦場に漂う死の恐怖を立体音響効果が増幅されます。

  • 『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』の設定画面では、「音声出力の選択」の項目を「テレビスピーカー」に設定しました。

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』を聴く

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
    PlayStation®5用ソフトウェア
    『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』
    ¥6,490(税込) ※ダウンロード版/PS Store価格
    ●ジャンル:アクション ●プレイ人数:1人
    (C)2021 MARVEL (C)2020 Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Insomniac Games, Inc.

効果音の明瞭度が上がり空中移動がリアルに

“ウェブ”によるワイヤーアクションをプレイしながら、いっそうゲームの世界に引き込まれてしまいました。Tempest 3Dオーディオをオンにすると効果音の明瞭度が一気に上がり、空中移動の視界が一気に開けます。音楽作品としても魅力的なサウンドトラックの艶やかさも際立ちました。

  • 『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』の設定画面では、「オーディオモード」の項目を「テレビ」に設定しました。

『Returnal』を聴く

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
    PlayStation®5用ソフトウェア
    『Returnal』
    ¥8,690(税込) ※ダウンロード版/PS Store価格
    ●ジャンル:シューティング ●プレイ人数:1人
    Returnal™ (C)2021 Sony Interactive Entertainment Europe. Published by Sony Interactive Entertainment Europe Ltd. Developed by Housemarque Oy. “Returnal” is a trademark of Sony Interactive Entertainment Europe. All rights reserved.

物語の世界を大胆かつ緻密に音で描き切る

叩きつけるように降る雨音と雷鳴の立体感、銃声の迫力、繊細なダイアローグの描き込みまで、立体音響の要素がTempest 3Dオーディオの技術をベースにとことん練り上げられていきます。架空の物語の世界を大胆、かつ緻密に「音でデザイン」してみせたクリエイターの凄腕ぶりに舌を巻きました。

  • 『Returnal』の設定画面では、「オーディオ出力」の項目を「TVスピーカー」に設定しました。

入念な音づくりで抜群の包囲感を全身で味わえる

全てのソフトに共通する手応えは、ヘッドホンによるリスニングと違って、全身でよりワイドに360度周囲から包み込まれるようなリスニング感が楽しめることです。テレビ専用の処理が入念に設計されていることもよくわかります。立体音響体験は基本的にすべてのゲームで楽しめますが、Tempest 3D AudioのSDKを用いてオブジェクトベースの音づくりを行っているタイトルでは、さらにリアルな没入感が得られるようです。設定のオン・オフを切り換えながらプレイしてみると違いがよくわかるでしょう。

Tempest 3D Audioは音を軸に、ゲーミング体験を新たな地平に導く可能性を持つ技術であることを今回の取材で改めて確信しました。PULSE 3Dワイヤレスヘッドセットと組み合わせた場合に設定できるようになった「オーディオEQ機能」のテレビ対応など、今後も新たな機能拡張にも挑戦に期待したいです。

QUESTION & ANSWER

Q/今回のアップデートで、テレビのスピーカーでもTempest 3D オーディオが楽しめるようになりましたが、具体的な技術内容やヘッドホンのときと同じ点・違う点などについて教えてください。

A/ヘッドホンでの3Dオーディオは、ユーザーそれぞれの耳とスピーカーの位置関係など試聴環境による差があまりなく、聴こえる音をコントロールできるため、3Dオーディオの実装・空間再現を最適化しやすいです。一方、テレビのスピーカーに向けたバーチャルサラウンドサウンドは、右スピーカーに含まれる音が左耳にも聴こえるなど、ユーザーが試聴する環境の想定が必要になるため、音場再現も複雑になります。それを解決するため、Tempest 3DオーディオではDualSenseワイヤレスコントローラーに搭載されたマイクを活用し、試聴環境の音響特性を測定します。音響特性の測定結果を3Dオーディオ設定に反映させることで、各ユーザーの試聴環境に適したバーチャルサラウンドサウンドを再現できるようになっています。

Q/3Dオーディオの技術は、さまざまなフォーマット、映画や音楽などのジャンル、多岐に渡り楽しめるようになってきていますが、ゲーム機による3Dオーディオの特長、またドルビーアトモスや360 Reality Audioといったフォーマットと聴こえ方の違いなど、教えてください。

A/ゲームのサウンドは映画や音楽と異なり、プレーヤー自身がキャラクターやゲーム画面を自由に動かせるため、プレーヤーの操作に合わせて音をリアルタイムで計算し、表現する技術が必要となるのがゲームならではの特徴です。
ドルビーアトモスなど音声フォーマットを定めている技術は、さまざまな機器との相互接続性をもったエコシステムを構築していくものだと捉えていますが、Tempest 3Dオーディオの最大の特長は、PS5でゲームを楽しむうえで、PS5のサウンドとして最適化された立体音場を体験できることです。また、PS5のTempest 3Dオーディオの開発はソニーと協業していますが、ソニーの360 Reality Audioは違うフォーマットであり、再生機器や対応コンテンツも同一のものではないため、比較対象とすることが難しいです。ただ、先述した通り、ゲーム、映画、音楽、それぞれのコンテンツによって、最大限に立体音響を楽しむための必要な要素が異なりますし、各々のコンテンツに最適化を目指した音作りが施されているのではないでしょうか。

Tempest 3Dオーディオは、仮想空間で作成されるスピーカー数が非常に多いことが特長で、PS5の処理性能と合わさったときに再現できる音の臨場感・存在感は圧倒的だと自負しています。PS5には、オーディオ専用の処理を行うハードウェア「Tempest Engine」を搭載しているため、ゲームプレイの処理を行うCPUのリソースを奪うことがありません。従来まで、3Dオーディオに関連する処理は、ゲームエンジンやサウンドエンジン任せでしたが、ゲームソフトの制作側に向けて積極的にSDKを提供することで、よりタイトル毎に最適されたリアルな3Dオーディオを実現できたことが非常に有利な点です。技術的な部分ですが、上半球だけでなく下半球の音場再現もサポートしている点も、Tempest 3Dオーディオならではの魅力です。

Q/対応ソフトにはどのようなタイトルがありますか? またソフトが対応していなくても、Tempest 3D オーディオを楽しめる方法はありますか?

A/3Dオーディオ機能は基本的にすべてのゲームでお楽しみいただけます。Tempest 3Dオーディオの最適化が図られているゲームタイトルであれば、さらに深いバーチャルサラウンドサウンドを体験できます。
下記のソフトは、最適化されているタイトルの一例です。

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』『Marvel’s Spider-Man Remastered』『ASTRO’s PLAYROOM』
『グランツーリスモ7』『Returnal』『Destruction AllStars』『Demon’s Souls』『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』『リビッツ!ビッグ・アドベンチャー』『Horizon Forbidden West』『バイオハザード ヴィレッジ』など。

SPEC

[通常モデル] ●CPU:x86-64-AMD Ryzen“ Zen 2”(8コア/16スレッド)●GPU:AMD Radeon RDNA 2-based graphics engine●内蔵メモリー:825GB(SSD)●メモリー:16GB(GDDR6)●主な入出力端子:HDMI出力×1、USB-A入力×2、USB-A出力×1、USB-C出力×1●最大消費電力:350W●外形寸法:約390W×104H×260Dmm●質量:約4.5kg

REFERENCE MODEL

  • 4K有機ELテレビ
    SONY
    XRJ-65X95J
    ¥OPEN(実勢価格352,000円前後)