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  • 開発者が選んだ!
    ハイクオリティソフト2019年度<PART3>
    これが珠玉のレファレンス!【音楽作品編】

    取材・執筆 / 小笠原 望(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2020年7月1日更新

音質設計の指針となる高音質音源を一挙ご紹介!

音楽ストリーミングサービスが多数増え、リスナー自身の趣味嗜好にあった音楽を手軽に楽しめるようになり、またCDクオリティを超える高品位なフォーマットを採用したハイレゾ音源も着実に増えていっている昨今、オーディオ機器に求められる性能もいっそうシビアになってきました。オーディオ機器の製品ジャンルは非常に幅広く、アンプやスピーカーなどのピュアオーディオ製品から、イヤホン・ヘッドホンなどのポータブルオーディオ製品まで多岐に渡ります。

そこで、「開発者が選んだ! ハイクオリティソフト2019年度」のPART3では、そんな高性能なオーディオ機器の開発に携わるエンジニアの方々に、製品開発時の音質チューニングでも活用している、高音質の音楽作品をご紹介頂きました。音楽配信サービスでも聴ける作品もあるので、ぜひ聞いてみてください!

PANASONIC〜オーディオの枠を超えたグルーヴを

  • ◼️音質で選んだレファレンス3作
    『Red』(左)
    Diana Panton flac 192kHz/24bit ¥2,548(税抜) 2xHD
    『Another Time: The Hilversum Concert』(中央)
    Bil Evans SACDハイブリッド RTSA1003 Resonance Records SA-CD Selection
    『THE DEFINETIVE COLLECTION』(右)
    STEVIE WONDER MQA-CD ¥3,080(税込) UICY-40287 ユニバーサルミュージック

Diana Panton『Red』は、ハイレゾ版が19年にリリースされ、解像度、S/N感の確認に使っています。1曲目「Say it」は、言葉を丁寧に伝えようとするボーカルの細かなニュアンスやテクニックを感じられすばらしいです。Bill Evans『Trio』の「Another Time」は、SACDハイブリッド版が19年7月に発売されていますが、非常にクオリティの高い音源で、特にS/N感や空間表現などの確認に使っています。2曲目「Very Early」のエバンス(ピアノ)とゴメス(ベース)のインタープレイが絶妙で演奏の中にぐっと引き込まれます。STEVIE WONDERの『THE DEFINETIVE COLLECTION』も、今年MQA-CDが発売されています。MQAによる音の粒立ちや立体感含め、ドラム、ベース、ブラスセクションやエレピなど電子楽器の色彩豊かな音色が鮮やかに再現できているのか確認しています。あとは、オーディオ的なことを通り越して(?)数々の名曲のグルーブに身をおけるかどうか、でしょうか。

  • ◼️田口恵介 氏
    パナソニック株式会社 アプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 商品企画部 Technics商品企画課 主幹。
    2002年入社後、設備音響の分野でRAMSA商品の開発を担当。2013年よりTechnicsブランド商品の商品企画として製品開発を担当。学生時代は合唱団の指揮者をやっていまして、歌唱の息づかいや表現方法はついつい細かいところまで気になってしまいます。
  • ◼️開発に携わった主な代表モデル
    SL-G700
    SU-G700
    SB-G90
    ※写真は「SL-G700」です。

MARANTZ〜新たな発見を与えてくれる作品を厳選

  • ◼️音質で選んだレファレンス3作
    『VIVALDI JUPITER』(左)
    ヴィヴァルディ CD ¥2,700(税抜) NYCX-10101 Naxos Domestic *cl*
    『エルガー:チェロ協奏曲/ヴォーン=ウィリアムズ:暗愁のパストラル』(中央)
    宮田 大 UHQCD ¥3,000(税抜) COCQ-85473 NIPPON COLUMBIA CO.,LTD.
    『アコースティック・ウェザー・リポート2』(右)
    クリヤ・マコト、納浩一、則竹裕之 SACD ハイブリッド ¥3,000(税抜) SICJ-10011 ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

1枚目の『VIVALDI JUPITER』はアルバムを通じて高い透明感が特徴で、特に4曲目のファゴットの柔らかくふくらみのある、かつ透明な響きに魅力を感じます。2枚目の『エルガー:チェロ協奏曲』は、5曲目にカップリングとして収められているヴォーン・ウィリアムズを挙げます。きらびやかなパートよりも、木管と弦がさわさわと重なり合って作り出す中間色が美しいです。3枚目の『アコースティック・ウェザー・リポート2』は無編集のDSD録音。一つ一つの音のエネルギー、鮮度がとても高いです(もちろんデータ形式と音質を短絡的に結びつけることはできないのですが)。
音決めには、いつも使っている、どんな音で鳴るか良く知っている「課題曲」を主に使用しますが、最終に近い段階では新しい音源を含め、様々な音源を試聴します。新しい音源には「こんな音が鳴るのか」「こんな音があるのか」という発見があり、私が認知できる音の限界を拡張させるという意味を感じています。

  • ◼️河原祥三 氏
    株式会社ディーアンドエムホールディングス プロダクトエンジニア。
    2007年入社、AVアンプ、ミニシステム、スピーカーの開発を経て、現在はSACDプレーヤーの設計に従事。デジタル/アナログオーディオ回路、デジタル信号処理、音質設計を担当。
  • ◼️開発に携わった主な代表モデル
    SA-10
    SA-12
    SA-12 OSE
    ※写真は「SA-12」です。

GLIDIC〜ボーカルと音楽の気持ち良さを追求

  • ◼️音質で選んだレファレンス3作
    『SUGA』(左)
    Kyle Dion CD ¥1,500 (税抜) Kyle Dion
    『Piercing』(中央)
    小袋成彬 flac 48.0kHz/24bit ¥3,259(税込) Sony Music Labels Inc.
    『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』(右)
    Billie Eilish flac 44.1kHz/24bit ¥3,870(税込) Darkroom/Interscope Records

レファレンスに関して、音楽の聴き方やプロダクションの傾向は刻々と変わっており、楽曲で使われる帯域も広くなっている傾向にあるため、GLIDiCブランドとして大事にしている人の声はもちろんのこと、気持ちのいい部分をしっかり鳴らすことを意識しています。Kyle Dion『SUGA』は生楽器をふんだんに使い、広がりのあるリッチなボーカル処理、さらにそこに超低域を含む”攻めた”サウンド処理が組み合わさった最新のR&Bサウンドと言えるアルバム。小袋成彬『Piercing』は、音選びはもちろんのこと、ボーカルは美しく、ミックスは1音1音が丁寧に仕上げられており、アルバムを通してダイナミックかつ繊細なサウンドが楽しめます。グラミー賞を総なめしたBillie Eilishのアルバムはレファレンスとしては少し特殊になるかもしれませんが、全く新しい前衛的なプロダクションが高いサウンドクオリティでまとめられています、まさに次世代の音。ささやくように歌い上げる部分は実に生々しく、鳥肌ものです。

  • ◼️中村拓哉 氏
    SB C&S株式会社 コンシューマ事業本部 商品本部 商品第1統括部 AVMD部 AV企画課。
    2017年よりGLIDiCブランドの商品企画担当としてチームに参加。カナルワークス社との協業モデルであるSound Air TW-7000などの商品企画を手掛けています。
  • ◼️開発に携わった主な代表モデル
    GLIDiC Sound Air TW-7000
    GLIDiC Sound Air TW-6000
    ※写真は「TW-7000」です。

JVC〜声の個性をとらえて表現

  • ◼️音質で選んだレファレンス3作
    『40周年記念ベストアルバム 日本の恋と、ユーミンと。 (Remastered 2019)』(左)
    松任谷由実 flac 96.0kHz/24bit ¥4,277(税込) Universal Music LLC
    『歳時記』(中央)
    3776 flac 24bit/96kHz ¥2,530(税込) Natural Make
    『CEREMONY』(右)
    King Gnu flac 48.0kHz/24bit ¥3.259(税込) Sony Music Labels Inc.

レファレンス音源は、長年使いなれたものを使用することがほとんどですが、いくつかは新しい楽曲も加えていきます。音質調整の際は、様々なタイプの曲を試聴しますが、その中でも人の声は音の違和感を感じ取りやすい音だと思っています。「ユーミン」の楽曲はCD音源をよく聞いていたのですが。2019年のリマスター&ハイレゾ化でかなり変わりました。非常に立体的な演奏空間が再現され、声の表現力も上がっています。音の印象が今までなじんでいたものから大きく変化していないことも魅力的です。「3776」の楽曲は前作から試聴していましたが、2019年の新作も意欲作です。打ち込み主体で、声のエフェクトも楽器と同等に扱い、人工的な空間に配置されています。非常に情報量が多く、すべての音をフラットに再現できると気持ちよく試聴できます。「King gnu」のメインボーカルは非常に倍音成分が多く、再現が意外と難しいです。他の楽器も調整が甘いと演奏空間が整わなくなります。

  • ◼️北岩公彦 氏
    株式会社JVCケンウッド MS分野 メディア事業部 ライフスタイルBU 技術部 2G 主席課長。
    1988年入社。長年のスピーカーの設計・開発を経て、2014年からはヘッドホンの音の監修に加えて、音響測定、解析などの評価技術、要素技術開発など、音質にかかわる様々な仕事を行っています。担当機種はパッシブ高級機からBTイヤホン普及機まで多岐にわたります。
  • ◼️開発に携わった主な代表モデル
    HA-FW10000
    HA-FW1500
    HA-A10T
    ※写真は「HA-A10T」です。

SONY〜解像度とアタック感の両立を意識

  • ◼️音質で選んだレファレンス3作
    『Tim』(左)
    Avicii CD ¥2,750 (税込) UICO-1309 Universal Music LLC
    『Deluxe Edition』(中央)
    Shawn Mendes CD ¥2,500(税抜) UICL-1143 Universal Music LLC
    『By The Way, I Forgive You』(右)
    Brandi Carlile CD ¥2,200(税抜) WPCR-18172 Warner Music Japan Inc.

「WF-1000XM3」は、完全ワイヤレスでもハイレゾ級の高音質を再現するために、低域から高域まで広帯域で高解像度な音を目指して開発しました。最新トレンドミュージックにあるような重低域もアタック感を犠牲にすることなく、十分に再現します。Aviciiの「Heaven」のようなスピード感ある打ち込み音源の低音を気持ちよく聴けることを意識してチューニングしています。Shawn Mendesの「In my Blood」は、ビブラートが特徴的な美しい男性ボーカルが特徴です。サビの盛り上がりでは、美しい声と力強い歌声をダイレクトに、スケール感をもった再現にこだわって調整しています。Brandi Carlileの「The Joke」は、アコースティック色が強くなります。序盤のピアノの生々しい伴奏、静けさの中に響く彼女の声が際立つ部分、そして終盤にかかり、どこまでも伸びるボーカルとバイオリンの響き、オーケストラのような壮大なスケール感の再現性にこだわりました。新開発チップ「QN1e」のヘッドホンアンプの高S/N比性能と高域限界再生能力、さらにDSEE HXの効果を感じることができる曲なので是非、試して頂きたいです。

  • ◼️大里祐介 氏
    ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ株式会社 V&S事業本部 商品技術1部 1課。
    2005年入社。ヘッドホン機構設計を経てヘッドホンの音響設計を担当。特にインイヤー製品を中心に手掛けてきました。
  • ◼️開発に携わった主な代表モデル
    WF-1000XM3
    XBA-Z5
    XBA-H3
    ※写真は「WF-1000XM3」です。

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