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  • 連載 伊尾喜大祐のシン・イオキネマの夜明け
    第18回「ホームシアターを両立する間取り」

    取材・執筆 / 伊尾喜大祐
    2022年4月26日更新

ホームシアターの総合誌「ホームシアターファイルPLUS」でも執筆されている伊尾喜大祐さんが、夢の映画館「シン・イオキネマ」づくりを決意! 本連載では、映画館づくりを決意したきっかけから完成するまでの模様を完全密着ドキュメントでお送りします。どのタイミングでどんなことが進行するのか? 映画館づくりにどんな想いがあったのか? 読んだらホームシアターを作りたくなること間違いなし!

シアタールームからの音を考慮したフロア構成

これまでの連載でコンセプトから設計、そして防音の構想に至るまでを書いてきました、新たなホームシアター「シン・イオキネマ」。そしてもちろんその間も、新シアターが入る新居の建築作業が進んでいます。この号が発売される9月25日時点では新居の構造自体は完成し、いよいよ内装工事に入っているはずです。ということで今回は閑話休題。シン・イオキネマならぬ、シン・イオキ邸のあらましについてお話しします。この新居は木造3階建てで、間取りはざっとこうなっています。

●1F
ガレージ、クローゼット、バスルーム、そしてシアタールーム
●2F
リビング、ダイニング、キッチン、テラス
●3F
子ども部屋、寝室

そしてこのフロア構成には、やはりわが家ならではのフィーチャーであるホームシアターの存在が大きく関わっています。ある意味、ホームシアター中心の家づくりといっても過言ではないほどなのです。

  • 「シン・イオキ邸」の完成イメージ模型。急な坂に面し、高低差のある土地を活かし、シアタールームは1階に。模型でいうと、向かって正面左から駐車スペース、玄関、シアタールーム。
  • 完成イメージCG。道路面より土地がやや低いところにあるため、リビングダイニングなどの明るさを必要とする部屋を2階に配置。シアタールーム、浴室など明るさを必要としない部屋を1階にレイアウトしています。

次回はこちら>>>第19回「“家族の団欒の中心”がコンセプト」

前回はこちら>>>第17回「目指すべき遮音性能の数値を確認!」

各階の設計概観

【1階】

かつてのわが家は築50年以上の木造2階建てでした。その立地は坂道の途中という特殊なもので、1階面積の半分が「半地下」になっていました。LDKは道路面と同じ高さでしたが日当たりは悪く、昼間から煌煌と電気をつけて生活せねばならないほどでした。そして件の「半地下」部分は、さらに光が入らない8畳半の部屋でしたが、実はこの悪条件ゆえに日中でもプロジェクターでの映画鑑賞が可能なほどで、まさにホームシアターにはうってつけな場所でした。これが20年以上もの歳月をかけて築き上げた「イオキネマ」です。

新居でも同様に半地下になる、1階部分の実に半分近い面積をシアターに充てることとしました。シアター以外にも書斎スペース、さらに大量の映像ソフトやフィギュアなどの倉庫も設けて、まさに僕が「パラサイト」する絶好の環境を築き上げるつもりです。このフロアにはシアター以外に、クローゼットやバスルーム、ガレージといった日照不足でも支障のないスペースを設置することにしました。

【2階/3階】

旧宅ではシアターからの重低音が2階に響き、息子に「からだがういちゃう!」といわれるほど。新居ではこの状況を避けるべく、1階シアタールームは防音天井とし、2階床面との間にも防音材のロックウールをぎっしり充填することにしました。このフロアにはLDKとテラスといった主たる生活拠点に充て、キッチンに隣接する部屋を妻の仕事スペースとしました。そしてわが家ならではフィーチャーが、2階と3階に天窓からの陽光が照らす吹き抜けを作り、大型の書架を設置することです。

漫画家である妻と僕の(かなりの)蔵書を、図書館のようにずらりと並べたらどうか? と、建築士の龍井慎一郎氏が提案してくれたものです。家族みんなが集う場所の図書館ゆえ、僕が40年以上かけて集めた1000冊を超える映画パンフレットもここに並べることになるかもしれません。また、リビング用のテレビを設置することも考えていますが、書架の印象が雑然としてしまうかも…と、悩みはまだ尽きません。

日当たりが最もよい3階には子どもたちの遊び場を。まずはオープンなスペースにしておき、ゆくゆくは個室にリフォームする想定です。そしてここには寝室も設置しますが、これは単純にシアタールームから少しでも離しておきたいという発想からです。このように、新居ではシアタールームからの音の影響を何よりも考慮したフロア構成となっているのです。

  • 2階には主にリビングダイニング、キッチンがあります。キッチンのすぐそばに、漫画家である奥様のための書斎を設けたのもポイント。仕事に集中しながらもお子さんに目を配ることができます。
  • 日当たりのよい3階にはふたりのお子さんの部屋を用意。当分はオープンにしておき、お子さんが成長したら個室に区切る予定です。静かさが求められる寝室も3階に設けることで、シアタールームとは距離を取っています。
  • お子さんが成長してから勉強に集中できるような環境をつくりたいものです。そこで伊尾喜さんは、子ども部屋と寝室を3階に設け、1階のシアタールームとは距離を取ったレイアウトにしました。
  • 2階と3階には吹き抜け本棚を用意。伊尾喜さんが所有している大量の映画パンフレット(写真は旧居の様子)を収納する予定だ。お子さんがパンフレットを手に取りやすいようにすることで、新しい興味や知識の入口に立ってほしいと考えています。
  • 一級建築士事務所
    (株)エス・ティ・プランニング
    一級建築士
    龍井慎一郎 氏