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  • HELLO! MOVIEでわかる、蜷川実花作品の映像美の裏側 第11回『ホリック xxxHOLiC』

    取材・執筆 / 永井光晴(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2022年6月10日更新

第10回はこちら>>>HELLO! MOVIEで歌舞伎のイヤホンガイドがアプリになった

『ホリック xxxHOLiC』の怪しく美しい画と、蜷川監督のカラフルな映像美のめぐり逢い

2022年4月29日に公開された蜷川実花監督 の 『ホリック xxxHOLiC』のHELLO! MOVIEコメンタリー上映が5月20日(金)から始まりました。

今回のコメンタリー上映は、蜷川実花監督ほか、出演の神木隆之介、柴咲コウ、松村北斗、玉城ティナによる撮影裏話を、作品を観ながらスマホで聞けるというものです。蜷川監督の個性的な映像美のヒミツがつぎつぎと明かされていきます。

ヒット作品のコメンタリー上映が、公開から時間差で行われるのは、HELLO! MOVIEのお決まりパターンで、2度観、3度観するリピーターにとっては、作品のより深い理解につながるバリエーション版となります。

  • 2022年4月29日公開 『ホリック xxxHOLiC』。
    ●原作: CLAMP『xxxHOLiC』(講談社「ヤングマガジン」連載)
    ●監督: 蜷川実花
    ●脚本: 吉田恵里香
    ●音楽: 渋谷慶一郎
    ●主題歌: SEKAI NO OWARI「Habit」(ユニバーサル ミュージック)
    ●出演: 神木隆之介、柴咲コウ、松村北斗、玉城ティナ、趣里、DAOKO、モトーラ世理奈、磯村勇斗、吉岡里帆
    ●配給: 松竹 アスミック・エース
    ●2022年/日本/カラー/110分/ビスタ/7.1chサラウンド
    4月29日(金・祝)より全国公開中
    ©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社uTsuitachi CO.,LTD./講談社

『ホリック xxxHOLiC』は、 漫画家グループ「CLAMP」による、同名の大ヒットコミックを原作とした実写映画化作品。人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が視える、特殊な能力を持つ高校生の四月一日(わたぬき/神木隆之介)くんが主人公です。そんな能力を捨てて普通の生活を送りたいと願う四月一日は、ある日、一羽の蝶に導かれて辿り着いた不思議な「ミセ」で、妖しく美しい女主人・侑子(ゆうこ=柴咲コウ)に出会います。侑子は彼の願いを叶える対価として、”いちばん大切なもの”を差し出すよう囁くのです。

四月一日くんは、同級生である百目鬼 静(どうめき しずか/SixTONESの松村北斗)、そして九軒ひまわり(くのぎ ひまわり/玉城ティナ)とともに日常生活を送りながら、”大切なもの”を探します。そんな四月一日に、”アヤカシ”を操る女郎蜘蛛(吉岡里帆)らの魔の手が伸びてくるのです。 世界を闇に堕とそうとする彼らとの戦いに、侑子や仲間たちと共に挑んだ四月一日の運命は ━━━━。

もともと原作コミックのファンであったという蜷川実花監督の10年越しの企画だった本作は、コミックの怪しく美しい画が、蜷川監督のカラフルな映像美と出会うことで生まれるダークファンタジーとなっており、スクリーンに広がる異空間は、観る者を圧倒します。

煙のように漂う”アヤカシ”をCGで映像化

いつものように上映前のシートでHELLO! MOVIEの準備すると、「皆様いかがお過ごしでしょうか。この声が聞こえているということは、貴方はいま、耳にイヤホンをしているということですね。映画ホリックのコメンタリー副音声上映がまもなく始まります」と案内が流れます。出演者が上映前から話しかけるパターンで、がぜん気持ちが盛り上がっていくのです。

そして上映スタート。いきなり神木隆之介が「富士山です!」とふざけて、コメンタリーの口火を切ります。すなわち、見慣れた松竹のコーポレートイメージのことで、富士山のアップにロゴマークが被さるものです。

本作のコメンタリーは圧倒的に主役の神木隆之介がリードしていくパターン。共演者からも、神木くんがもっとも撮影現場の雰囲気作りに一役買っていたという声が出るほど、ムードメーカーであった性格の明るさが、コメンタリーからも垣間見られます。

  • 松竹映画でおなじみの「富士山」のオープニング。いくつかのバリエーションがある
  • 「ミセ」の主人・侑子(柴咲コウ)が燻らすタバコのけむりも、日本画のような原作の表現をVFX映像化した
    ©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社uTsuitachi CO.,LTD./講談社

オープニングは、新宿・歌舞伎町で”アヤカシ”から逃げ回る、主人公の四月一日(わたぬき/神木隆之介)が走るシーン。神木くんが「とにかくメチャクチャ走った」「濡れ続けた」というほど、作品を通して雨の中のシーンが多かったことが語られます。不思議な「ミセ」へ続く道は、新宿ゴールデン街で実際にスモークを焚いて撮影し、あとからCGで架空の居酒屋の看板を足していることが紹介されます。

本作のVFX(視覚効果)といえば、煙のように漂う”アヤカシ”を「どのように映像化するかが大変だった」という蜷川実花監督。同じく「ミセ」の主人・侑子(柴咲コウ)が燻らすタバコのけむりも、日本画のような原作の表現を映像化したこだわりのCG描画です。

もちろん四月一日が誘われる蝶の羽ばたきもCGですが、撮影時は棒の先につけた目印を、神木が目で追いかけるというもの。あとからCGで蝶が描かれたそうです。劇中で闘うシーンの多くも「みんな何と闘っているのかわからない」状態で演技をしていたと紹介されます。

藤棚をはじめとした「ミセ」の装飾はすべてリアルなセット

ここで本作を語るうえで最も象徴的な場所、侑子が登場する「ミセ」が登場します。「ミセ」のシーンの美しさに、コメンタリーの一同も息をのみます。

  • 藤の花で満たされた「ミセ」はCGではなく、すべてリアルなセット。CGは一切使われていない
    ©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社uTsuitachi CO.,LTD./講談社

藤の花で満たされた「ミセ」はCGではなく、すべてリアルなセット。CGは一切使われていないということに驚かされます。「ミセ」のセット内には、いくつかの部屋があって、それぞれにコンセプトが異なることが紹介されます。またライティングの色や照射方法の工夫によって、シーンごとの趣きを変えていること、さらに独特の世界観を作るうえで、渋谷慶一郎の音楽が重要な役割を果たしています。

ちなみに「ミセ」で出てくる日本酒の瓶は、原作どおりの銘柄酒を揃えたそうです。

謎の蝶に誘われるまま、「ミセ」にたどり着いた四月一日くんは、ついに「ミセ」の女主人・侑子に出会うことになります。コメンタリーでは、蜷川監督が改めて「ほんとうに綺麗ね」という言葉を漏らすほどの、柴咲コウの演じる侑子の妖しげなたたずまいに魅せられます。

作品を通常上映で観ていたときには気付かなかった柴咲コウの衣装チェンジが、HELLO! MOVIEコメンタリーでは、ひとつずつ解説されます。何種類あるのかと指折り数えるほど、シーンごとに衣装替えをしており、コメンタリーでは出演者が冗談めかして、「侑子さんは、この髪型でどうやって寝ているのか」で盛り上がります。

  • シーンごとに衣装替えをするミセの主人・侑子(柴咲コウ)はヘアスタイリングも斬新
    ©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社uTsuitachi CO.,LTD./講談社

キャスティングに対する細かなこだわり

映画のキャスティングは、監督によって特徴があります。たとえば固定の俳優を使う監督もいれば、作品ごとにオーディションを行う人もいます。近作の蜷川監督のヒロインといえば玉城ティナですが、10年越しで映画化をめざしていたという蜷川監督だけあり、キャスティングにも原作から落とし込まれたこだわりがあります。

侑子役の柴咲コウは、もちろん狙い通りといえますし、もうひとつのこだわりがキャラクターの身長差です。神木隆之介の168㎝に対して、共演の松村北斗の177㎝という身長差は意図されたもので、さらに玉城ティナ(163cm)との身長も考慮されているそうです。もちろん磯村勇斗の身長(176㎝)もキャスティングの一要素になっています。

さらには男性キャラクターが皆、同じように長めの前髪を真ん中に垂らしているスタイリングは、監督の好みであったことが明かされました。劇中、四月一日くんが怪我をしたシーンの包帯の巻き方と、ワイシャツのはだけ方も監督のビジュアル的なこだわりです。

あまり大きな話題になっていませんが、かつてない色気のある所作と、セクシーな衣装で目を引く「女郎蜘蛛」役の吉岡里穂は、これまでのイメージを打ち壊しています。同時期に公開されている『ハケンアニメ!』でも主演を務める彼女は、正反対に地味なアニメ監督を演じており、可愛いだけではない吉岡里穂の新たな挑戦といえます。

究極のセクシーさで攻める「女郎蜘蛛」は、女性監督だからこそ引き出すことができた役柄かもしれません。セクシー演技指導における引き出しの足りない部分は、プロのポールダンサーからアドバイスを得たという話も出てきます。本作のひとつの見どころです。

  • これまでのイメージを打ち壊した、「女郎蜘蛛」役の吉岡里穂
    ©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社uTsuitachi CO.,LTD./講談社

ホンモノそっくりの渋谷スクランブル交差点

そんな女郎蜘蛛が初めて登場する、渋谷のスクランブル交差点の大雨のシーンでは、多くの興味深い解説があります。

まず「まったく本物そっくりの渋谷のスクランブル交差点のオープンセット」での撮影であること。この場所は映画ファンにはよく知られている、「足利スクランブルシティスタジオ」(足利市五十部町)です。すでに多くの作品で使用されていて、道路標識や落書き、駅の改札にいたるまでホンモノそっくりの渋谷駅前になっています。本作では、実際のスクランブル交差点では不可能なカメラワークの自由度が挙げられています。

神木くん曰く、”溺れるほどの雨”を降らして撮影が行われています。映像では雨が逆回転していますが、なんと実際の吉岡里穂は”後ろ歩き”で演技しており、雨の中には「文字」が落ちてきます。背景がまっくらに暗転しているのは、CGコストの都合で渋谷駅の背景を描き切れなかったことが明かされました。

コメンタリーのいたるところで触れられているのは、主役の神木隆之介くんのセリフの少なさ。主役ですから登場時間はもっとも多いにも関わらず、そのキャラクター設定による脚本で、ほとんどセリフがないことが分かります。

主人公・四月一日くんの存在感の強さから考えられないほど無口だったことが、面白いエピソードです。そのせいで演技に余裕のある神木隆之介の撮影中のイタズラに、玉城ティナが長セリフで笑いをこらえるのがたいへんだったことがコメントされます。

  • 主人公・四月一日(神木隆之介)の同級生である九軒ひまわり(くのぎ ひまわり)を演じる玉城ティナ
    ©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社uTsuitachi CO.,LTD./講談社

子供時代の四月一日くんの声も神木隆之介

セリフは少ないながらも、またまたズブ濡れになる四月一日。子供時代の回想シーンが出てきますが、子役の声も神木隆之介が声色を変えて演じていたことが、初めてHELLO! MOVIEで知ることができます。これはまったく気づかない新事実です。

劇中には「ミセ」での朝食のシーンが繰り返し出てきます。神木隆之介は、四月一日くんの成長や気づきを時間軸で演じ分けていることを語ります。また本作を含め、役柄によって走り方を変えていることなどプロフェッショナルな演技術にも言及します。

蜷川実花監督は作品を通じて、原作マンガを2時間の尺にまとめる難しさ、そして初CG作品だからなのか、とくにシーンとシーンの繋がりのスムーズさに苦心していたことを語ります。

2年前に行われた本作の撮影時は、まさにコロナ禍の真っ只中。HELLO! MOVIEによる裏話でその苦労が伝わり、現実離れした“アヤカシ”と共存する異常性とリンクしつつ、徹底的にCGとリアルセットのこだわりを突き詰めて完成された『ホリック xxxHOLiC』の蜷川ワールドを満喫できます。

第12回はこちら>>>尾田栄一郎自身が語る、HELLO! MOVIE史上最アツ!のコメンタリー
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