いま、ホームシアターファンが見るべき4K Ultra HDブルーレイの注目タイトルを、プロの評論家が画質と音質の評価チャート付きで紹介する連載企画。2023年7月時点で発売中の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』と『ノック 終末の訪問者』、旧作『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』の3タイトルについて、画質音質チェックの見どころを大橋伸太郎氏が自宅のホームシアターで徹底的にチェックしました。
CONTENTS
・『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
・作画技術の進歩は歴然、サラウンドの移動表現は鮮明
・『ノック 終末の訪問者』
・ノイズ感の少ないクリアでドキュメンタルなルック
・『インディー・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
・フィルム映像に鮮烈な光のパワーを吹き込む
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
- 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
¥9,790(税込)
デジタル配信中(購入/レンタル)、4K UHD発売中
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
VWBS7466
●製作:2022年/米 ●ジャンル:洋画SF ●本編ディスク:192分、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語ドルビーアトモス、英語DTS-HDマスターオーディオ2.0ch、日本語ドルビーデジタルプラス7.1chほか ●字幕:日本語、英語、日本語吹替用
© 2023 20th Century Studios.
●ストーリー
世界興収歴代3位となった超大作。パンドラでの激戦から10年後。新たに発見された資源を巡り、人類が侵略を再開。森で暮らしていたジェイクたちは、海をホームとするメトカイナ族の元に身を潜めるが、厄介者として扱われてしまう。
- ●監督:ジェームズ・キャメロン ●出演:サム・ワーシントン ●特典:※同梱の特典ディスクに収録/パンドラの世界、広がるパンドラの世界、予告編&ミュージックビデオ
© 2023 20th Century Studios.
作画技術の進歩は歴然、サラウンドの移動表現は鮮明
体験型映像スペクタクルの着想と世界観に、ジェームズ・キャメロンのライフワークの海洋ロマンが融合した続編。環境破壊への警鐘は承前ですが、今回のテーマは家族の絆。アクション性も強まった結果、第1作の哲学性が薄まり、普通のSFファンタジー大作になった感があります。13年間の作画技術の進歩は歴然で、4Kの精細感と階調の豊富さで2Dでも豊かな遠近感が生まれていますが、やはり3Dでの効果を狙った撮影構図が多く、2D BD(3D)との併せ見をお勧めします。CH25からの海中に舞台を移しての冒険シーンが今回の肝。ドルビーアトモスの音声は密度が濃く移動表現が鮮明で、海中生物が視聴室の音場を行き交い、惑星パンドラの海中深くにダイブした感覚。(大橋伸太郎)
『ノック 終末の訪問者』
- 『ノック 終末の訪問者』
¥7,260(税込)
NBCユニバーサル
GNXF-2861
●製作:2023年/米 ●ジャンル:洋画スリラー ●本編ディスク:100分、スコープ、HDR10、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタル5.1ch ●字幕:日本語、英語(聴覚障がい者対応)
© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.
●ストーリー
ポール・トレンブレイの小説「終末の訪問者」を、シャマラン監督が大胆に映画化。山小屋で休暇を過ごす同性カップルとその娘。小屋に侵入した謎の男女4人に拘束され、3人のうち犠牲者を選ばないと世界が終わると脅されて…。
- ●監督:M・ナイト・シャマラン ●出演:デイヴ・バウティスタ ●特典:未公開シーン、通販番組:ロングバージョン、正しい選択:撮影の裏側、四騎士の武器、完璧な絵コンテ、クリステン・キュイが放つ光
© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.
ノイズ感の少ないクリアでドキュメンタルなルック
カメラは回想シーンを除いて、舞台となる山小屋の敷地から外へ出ません。後半のほとんどが室内シーンで、俳優のクローズアップ撮影が続きます。ドルビービジョンですが、ハイダイナミックレンジを活用した映像効果は皆無。意図的な色彩設計や映画的なカラーグレーディングを避け、ノイズ感の非常に少ないクリアでドキュメンタルなルックは、事件の再現映像を見るようです。シャマラン作品らしいひんやりした肌触りのスリラー。「映画の価値は、濃密な体験性」と語る監督の企みと本領がここに。反面、イマーシブサウンドは饒舌。オフシーンの凄惨な出来事を生々しい響きのフォーリー(擬音)で描き出し、音場そこかしこに散乱させ、視聴室を凶行の舞台の閉塞空間に変貌させます。(大橋伸太郎)
- 映像はひんやりした肌触りの反面、イマーシブサウンドは濃密です。オフシーンの凄惨な出来事を生々しい響きのフォーリー(擬音)で描き出す場面は、凶行の舞台の閉塞空間にいるかのような仕上がりです。
© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.
『インディー・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
- 『インディー・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
¥6,589(税込)
NBCユニバーサル
PJXF-1565
●製作:1981年/米 ●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:115分、スコープ、HDR10、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタル5.1ch、日本語ドルビーデジタル2.0ch ●字幕:日本語、英語
TM & ©︎ 1981, 2023 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
●ストーリー
スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスがタッグを組み、1981年に製作された記念すべき第1作。インディが米陸軍情報部から強大なパワーを秘めた秘宝アークをナチスより先に探してほしいと依頼を受け、世界を駆け巡る。
- ●監督:スティーブン・スピルバーグ ●出演:ハリソン・フォード ●特典:特報、劇場用予告編、リバイバル劇場用予告編
『インディー・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
TM & ©︎ 1981, 2023 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
フィルム映像に鮮烈な光のパワーを吹き込む
オリジナルネガを4Kデジタルスキャン、ドルビービジョンでマスタリングした映像は、最大輝度4000nitsを表示。重厚なフィルム映像に鮮烈な光のパワーを吹き込み、シーンによっては力があり余りギラギラと眩しいほど。フィルムグレインを調整せず素直に出してくるので、暗室で見る場合、プロジェクターのコントラストを調整するといいでしょう。映画の後半、大場所でのロケ撮影が増え、4K解像度が俄然威力を発揮。フィルムシューティングのワイド画面に深い遠近感が生まれています。中盤のCH16、地図の間で聖櫃を発見するシーンはHDRのパワーで効果が倍増。クライマックスのCH30はILMのアナログVFXが解き放たれ、光のモンスターとなって画面に荒れ狂います。(大橋伸太郎)