いま、ホームシアターファンが見るべき4K Ultra HDブルーレイの注目タイトルを、プロの評論家が画質と音質の評価チャート付きで紹介する連載企画。2023年10月時点で発売中の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』、『宇宙空母ギャラクティカ』の3タイトルについて、画質音質チェックの見どころを大橋伸太郎氏が自宅のホームシアターで徹底的にチェックしました。
CONTENTS
・『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
・豊かなサウンドデザインで楽しませるカンフーアクション
・『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
・サウンドシステムを試す音場を360°使ったカーアクション
・『宇宙空母ギャラクティカ』
・大宇宙は4Kでより美しく、バトルは重低音を響かせる
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
¥9,020(税込)
ギャガ
GAUS-2647
●製作:2022年/米 ●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:140分、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語&中国語&広東語ドルビーアトモス、日本語ドルビートゥルーHD2.0ch ●字幕:日本語、日本語吹替用
© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
●ストーリー
年に一度の春節を前に、中国系アメリカ人主婦のエヴリンは崖っぷちの危機にあった。税金滞納の釈明に一家総出で税務所に出頭すると、夫に別の宇宙の夫が乗り移り、エヴリンに崇高な使命を与える。全宇宙を破滅の危機から救えるのは君しかいない…。
- ●監督:ダニエルズ ●出演:ミシェル・ヨー ●特典:※同梱のBDに収録/監督・脚本:ダニエルズによるオーディオ・コメンタリー、メイキング、VFXに関するメイキングほか
© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
豊かなサウンドデザインで楽しませるカンフーアクション
舞台の大半は場末のコインランドリー店と税務署。あえて解像感を抑えマゼンタ系に重心を置いた濁り感のある重苦しいトーンの映像が基調ですが、マルチバース(多元宇宙)の映像はそれぞれグレーディングの工夫が凝らされ、ルック(映像のたたずまい、雰囲気)の雑多さが本作の世界を作り上げています。サウンドデザインはサプライズに富んでいます。CH6のジョブ・トゥパキが出現して警官と格闘するシーンでは、警官が粉々の紙片に変わりイマーシブサウンドで音場中に降り注ぎますが、スピーカーの設置数がものをいうでしょう。ミシェル・ヨーのカンフー演技が全開のCH9は、フォーリー(擬音)がスピード豊かに音場に撒き散らかされ、システムの試金石。CH8では、「京劇女優エヴリン・クァン」が美声を響かせ楽しませます。(大橋伸太郎)
- 解像感を抑えた映像を基調としつつ、マルチバースの映像はグレーディングの工夫が凝らされ、ルックの雑多さが本作の世界を作り上げます。サウンドデザインはサプライズ豊富。紙吹雪はイマーシブサウンドで音場中に降り注ぎ、カンフー演技は、フォーリー(擬音)がスピード豊かに音場に撒き散らします。
© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
- 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』画質/音質傾向
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
- 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
¥7,260(税込)
NBCユニバーサル
GNXF-2866
●製作:2023年/米 ●ジャンル:洋画アクション ●本編ディスク:141分、スコープ、HDR10、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタル5.1ch ●字幕:日本語、英語(聴覚障がい者対応)
©︎ 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
●ストーリー
危険な稼業から足を洗い、愛する妻、息子と静穏な日々を送っているドミニク。しかし、かつて倒したブラジルの麻薬王レイエスの息子ダンテが、家族と名誉を奪ったドミニクに虎視眈々と復讐のチャンスをうかがっていた。
- ●監督:ルイ・ルテリエ ●出演:ヴィン・ディーゼル ●特典:NGシーン集、ファミリーの面々、アクション徹底解剖:ルイ・ルテリエ監督による解説、究極のマシンを求めてほか
©︎ 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
サウンドシステムを試す音場を360°使ったカーアクション
大半はデジタル撮影ですが、ストーリー上の前編にあたる11年前の第5作と関連性の高いシーンはこだわりのフィルムで撮影しています。シリーズ初期作はパンクなカーアクションでしたが、南米、ヨーロッパ、南極まで世界を股にかける大作へ昇格。画質もメジャー感があり、華やかな色彩設定は特定の色彩への偏りがなくSNに優れ、解像力の高いディスプレイで見ると浮き上がるような立体感があります。ドンパチファンが久方ぶりに溜飲を下げるノンストップアクション大作。前半のクライマックス、CH5のローマ市中を巨大な爆弾が転がる重量感、後半のポルトガルの高速道路に飛行機が襲来するシーンのドルビーアトモスの音場を360°使ったアクション描写は、サウンドシステムの試金石といえるでしょう。(大橋伸太郎)
- 華やかな色彩設定SNに優れ、解像力の高いディスプレイで見ると浮き上がるような立体感があります。ポルトガルの高速道路に飛行機が襲来するシーンのドルビーアトモスの音場を360°使ったアクション描写は、サウンドシステムの試金石です。
©︎ 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
- 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』画質/音質傾向
『宇宙空母ギャラクティカ』
- 『宇宙空母ギャラクティカ』
¥6,589(税込)
NBCユニバーサル
GNXF-2871
●製作:1978年/米 ●ジャンル:洋画SF ●本編ディスク:124分、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語DTS-HDマスターオーディオ2.1chセンサラウンド、日本語DTS2.0chモノラル ●字幕:日本語、英語(聴覚障がい者対応)
Film ©︎ 1978 Universal Studios. All Rights Reserved.
●ストーリー
遠い未来、地球から遠くはなれた銀河の果てに12の植民地惑星を築いた人類だったが、サイロン星人の策略で壊滅的な打撃を受ける。撃沈を免れた空母ギャラクティカを旗艦に、民間船に5万人の生存者を乗せ、大船団が向かった先は、故郷の星地球だった。『スター・ウオーズ』フォロワーの1作としてテレビ映画として製作され、日本では劇場公開された。
- ●監督:監督:リチャード・A・コッラ ●出演:出演:リチャード・ハッチ
●特典なし
Film ©︎ 1978 Universal Studios. All Rights Reserved.
大宇宙は4Kでより美しく、バトルは重低音を響かせる
星々を散りばめた漆黒の宇宙がスクリーン一杯に映し出され、4K UHD化の恩恵を感じ取ることができます。解像度が上がった分、宇宙船などのミニチュアワークの細部が合成プロセスでぼやけているのがバレバレですが、VFXの進化を跡づける貴重な映像といえるでしょう。4K HDR化にあたりHDR10を採用。終盤の空中戦シーンで光芒が炸裂し、大いに盛り上げます。本作の劇場版はセンサラウンド方式で上映されました。上映プリントにコントロール用のトラックを記録、専用のスピーカーで重低音を発生する上映システムで『大地震』(1974)が第1作。今回の4K UHD BDは英語音声にセンサラウンドを収録、終盤のバトルシーンでズーンという重低音(低周波)が断続的に鳴り響き、一昔前のゲームセンターにいるようなレトロな味で楽しませます。(大橋伸太郎)
- 4K HDR化にあたりHDR10を採用。終盤の空中戦シーンで光芒が炸裂し、大いに盛り上げます。センサラウンドを収録した英語音声で見ると、終盤のバトルシーンでズーンという重低音が断続的に鳴り響きます。
Film ©︎ 1978 Universal Studios. All Rights Reserved.
- 『宇宙空母ギャラクティカ』画質/音質傾向
【2023年9月版】いま見るべき4K Ultra HDブルーレイソフト 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』ほか2作品、画質音質チェック