CONTENTS
・増幅素子や回路構成でもタイプが分かれる
・一体型とセパレート型でのアンプの違い
・高音質を追求するならセパレート型
・パワーアンプの基本的な内部構成
・真空管アンプと半導体アンプの特長
増幅素子や回路構成でもタイプが分かれる
スピーカーには密閉式やバスレフ。また2ウェイ、3ウェイというのがありましたね。アンプの場合も同じで、色々なタイプに分かれるのです。分ける際のポイントは、何によって分類するのかです。
アンプの基本は増幅ですが、まず機能の違いからみると前段をプリアンプ、後段をパワーアンプと呼び、これらが一体化したのをプリメインアンプと呼びます。プリメインアンプにFMやAMのチューナーが入るとレシーバーとなります。一方プリ、パワーをそれぞれ独立させたのはセパレートアンプです。
次に増幅素子で分けてみます。これはソリッドステート(固いもの、固体の意味。個体半導体素子で構成されるトランジスタやICなどを指す)の半導体アンプと、真空管アンプとがあって、それぞれに持ち味があります。そうそう、両方のいいとこどりをしたハイブリットタイプのアンプも、一部にあります。プリ部がタマでパワー段がソリッドステート、あるいはその逆といった感じです。
- アンプのタイプは機能や増幅素子、また回路構成などによってタイプが分かれます。求める機能や音質によって、欲しいアンプのタイプも変わってきます。
一体型とセパレート型でのアンプの違い
大まかな分類がわかったところで、まずはプリメインとセパレート型です。もう一度おさらいすると、プリメインもしくはインテグレーテッドアンプと呼ばれているのは、一台で完結する一体型アンプのことです。CDプレーヤーやその他のソース機器をつなぎ、プリとパワーが連携して最後にスピーカーを鳴らす。だから入力端子とスピーカー端子の両方がついているわけです。同じ筐体なので電源部も共通ですね。電源トランスも1個ですみます。
このプリとパワー部を切り離し、別々の筐体に収めたのがセパレートアンプです。のちほどアンプの接続のところでも触れますが、スピーカー端子があるのはパワーアンプの方だけで、たくさんの入力端子はプリアンプについていますね。両者をL/Rの2本の信号ケーブルでつないではじめてアンプとして完結するのです。この場合電源部や電源ケーブルはそれぞれに必要ですね。
- 一体型アンプのプリ部を「ステレオプリアンプ」、パワー部を「ステレオパワーアンプ」として分離させたものをセパレートアンプとしています。また、パワー部をステレオからL/Rに分けて1chずつにしたアンプを「モノラルパワーアンプ」と呼びます。
これでも相当な高級指向ですが、もっと上がありますよ。このステレオパワーアンプをさらにL/Rに分け、モノラルパワーアンプ2台とし、チャンネルごとに駆動します。これぞマニア向け。この場合のメリットとしては、音のセパレーション(分離)の向上や電源の余裕、さらにはスピーカーの直近に設置できるなどがあります。つなぐケーブルが短くなり、音質的な劣化が少なくなるのも利点です。
「じゃあプリもモノにしてしまったら?」という声も聞こえてきそうですが、そういう超レア、超弩級のアンプもかつてはありました。「Mark Levinson(マークレヴィンソン)」などがそうです。究極のセパレートアンプで音は最高ですが、いかんせん操作性は最悪。ボリュームを上げ下げするにも、いちいち左右のプリでバランスを加減しなくてはならないからです。そういう世界もあるんだと驚きますね。
一体型は文字通りセパレート型の機能を一台に収めたアンプです。セパレート型におけるプリアンプは、左右(L/R)2チャンネル分のアンプを内蔵しているので「ステレオプリメインアンプ」が正確な呼称となります。
高音質を追求するならセパレート型
さあプリメインとセパレート、どっちがよいのか。それぞれの長所・短所をまとめていきましょう。これは表裏一体で、見方によって評価がわかれるはずですね。プリメインはワンボディ化することですべての操作を集中でき、なおかつ設置スペースも少なくてすみます。信号経路を最短にできるというメリットもあります。でもデリケートな信号を扱うプリと大電力駆動のパワーとが同居するということは、ノイズの飛び込みや相互干渉上不利となるのは避けられません。
プリ部とパワー部が切り離されているセパレート型は、その相互干渉から逃れることができます。それぞれに妥協のない設計ができるのが最大のメリット。出力も数十ワットから数百ワットまであり、プリメインに比べて出力の大きいものが多く発売されています。だから音質追求派のマニアがあこがれるのです。プリとパワーを自由に選べるため、組合せの妙を楽しんだり、グレードアップも容易ですね。反面かなり割高で、設置場所も確保しなくてはいけません。
- アンプ1台だけで全ての動作ができるため省スペースにも繋がる一体型のプリメインアンプ、プリとパワーを分離させることで高音質を追求できるセパレート型、両方とも長所と短所を持ち合わせています。
パワーアンプの基本的な内部構成
プリアンプについては、第12回にてブロック図で解説しましたね。ではパワーアンプの方はどういった構成になっているのでしょうか。もっぱら電力増幅する役目のパワーアンプですが、最終的にスピーカーを駆動するところにいくまでにいくつかの段階があるのです。ずばり、初段、ドライバー段、そして主役の出力段となります。
プリアンプから受け取った信号は、まず初段に入ります。ここはメインアンプの受付にあたります。電圧増幅でしっかりゲインを稼ぎ、ノイズに強くしておいてから次にバトンタッチ。ドライバーは、実はプリドライバーとドライバー段とに分かれるのです。プリドライバーまでは電圧増幅で、さらにゲインを稼ぎ水流を増しながら、グングンと勢いをつけてからドライバー段、そして出力段へと音楽信号が引き継がれるのです。
最後はふたつのステージが一体となって働く電力増幅というわけです。出力段に用いられるパワー素子は大電力用で、トランジスタ式のアンプであればパワートランジスター、真空管式アンプならぐんと大型の出力管が使われるわけです。
- パワーアンプは基本的に大きな電流を扱っており、主に「電圧増幅」と「電力増幅」を行っています。そしてさらに負帰還回路によって信号の歪みを防いで、さらに増幅する仕組みを採用しています。
おっと忘れていました。出力の一部を初段に戻していますね(フィードバックといいます)。何とまあもったいない! なんて言わないでください。これは増幅後の大きな信号と最初の小さな信号がキチっと相似形になっているかどうかを比較、チェックするところ。これによって歪みのない増幅をする負帰還回路(NFB:ネガティブ・フィードバック)を形成しているのです。
ところでプリは電圧増幅、パワーアンプは電力増幅の役目なのですが、イマイチその違いがハッキリしないネという方もいるでしょう。それぞれどう大きさが違うかというと、プリアンプの方は小信号を扱うので電圧増幅がメインです。縦に伸びて電流は微々たるもの。でもメインアンプは違います。「電流×電圧=電力」という公式を理科の授業で学んだはずですが、この力(面積)がスピーカーを動かすもと。なので電流をたっぷりと流し、熱を出しながらがんばっていますね。だからヒートシンク(放熱板)が必要なのです。
- 左図は縦がプリの電圧増幅、横がパワーの電力増幅を表しています。プリアンプは小信号を扱うので、縦に伸びて電流は微々たるもの。一方、メインアンプの電力はスピーカーを動かす原動力。図でいうと、黄緑の図形の面積が広いほど強いエネルギーを駆動させることができます。
真空管アンプと半導体アンプの特長
静かな人気を誇るのが真空管アンプ。真空管はバルブ、タマともいい、ガラスの容器に電極を封じ込めた構造。ヒーター(正しくはカソード:陰極)から出た熱電子をコントロールすることで、増幅作用を行うというしくみです。ほの明るいタマの光がいい雰囲気ですね。
かたや半導体アンプの方は、デバイスとしてトランジスタを使ったもので、一部にFFT(電界効果トランジスタ)のアンプもあります。どちらも素材はシリコンなので、ソリッドステート(固体)と呼ぶのです。
半導体アンプは先端をいくスマートな回路で、現代的でハイスピードな音。真空管は暖かみのあるアナログ的なサウンド…とよくいうのですが、実際はそうでもありません。真空管も料理しだいで、現代的なシャープな音が得られるのです。レトロなものと、最新設計のものの両方があると思ってください。タマか石か、さああなたはどちらをお好みですか?
- 真空管アンプと半導体アンプ、どちらも各々の特徴を持っています。音の傾向に違いあるのはもちろんですが、苦手分野、取り扱いの注意点なども異なります。
次回は「アンプのクラス(級)」について解説していきます。