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  • 鴻池賢三のホームシアターTips 「タダ」でできる調音テクニック〈吸音編〉 家にあるもので残響音をコントロール

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年1月12日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

シリーズ記事「遮音と調音の違いを知ってサウンド体験をステップアップ!」では、ホームシアター体験向上のポイントといえる、部屋の遮音や調音について概要を解説しました。今回は、「調音」の要素の一つである「吸音」について、その必要性と、対策が必要な場合に、「なるべくタダ」でできるアイデアをご紹介します。

「遮音と調音の違い」をおさらい

調音における「吸音」とは?その必要性は?

極端な例ですが、コンクリート製のトンネル内やコンクリート打ちっぱなしの部屋で話すと、声がワンワンと響き、言葉が聞き辛いといった経験はないでしょうか? これは、音が吸収されずに何度も壁面で反射を繰り返し、音が重複するためです。このような環境でオーディオ装置から音を出すと機器本来の性能は発揮できず、また作品の意図を正しく受け取れなくなるのはご理解頂けるでしょう。

以下のグラフは推奨(適正)残響時間の一例です。ポイントは空間の広さに応じて適正残響時間は異なり、狭い空間ほど時間が短くなる傾向があることです。

推奨残響時間例
出典: http://hoteiswebsite.c.ooco.jp/room/chpt01/002.htm

ホームシアターの場合、サラウンド音源はソースに残響成分も含まれるので、そもそも適正とされる残響時間は短めです。さらに空間としても狭めなので、残響時間は「短すぎ」よりも「長過ぎ」が問題になりがちです。よって調音は先ず、「吸音」をチェックしたいものです。

「なるべくタダ」でできる吸音テクニック

では筆者の測定も交えた経験から、実際にありがちな部屋のパターンと残響時間を例としてご紹介しましょう。

まず、あまり見かけませんが、コンクリートの打ちっぱなしの部屋は残響時間が長くなりがちなので、充分な吸音対策が必要です。特に低域は物理特性上、薄手のグラスウール等では吸収しきれないため、壁面に布や吸音材などを貼り付けると、高域の残響時間のみ減少し、低域はそのままとアンバランスになるため、さらに音質体験が悪化します。「タダ」で手に負える範囲外と言え、専門家への相談をお勧めします。

  • コンクリートの打ちっぱなしの部屋の場合、タダでできる範囲で十分な調音をするのは難しいです。

次にフローリングの洋室。残響時間は長めですが、家具などを入れるとそれらが拡散材や吸音材の役割を果たし、ある程度落ち着きます。残響時間が長めの場合は、ソファを革張りではなく、ボリュームのある布製を選んだり、床は厚手の絨毯敷きにすると吸音効果が得られます。どちらも手持ちの家財が流用できれば、「タダ」と言える吸音テクニックです。

  • 布製のソファや絨毯は吸音材の役割を果たします。また、窓も大きな反射面になります。厚手のカーテンを設置し、ホームシアターを楽しむ際に閉めて吸音しましょう。

最後に和室。意外かもしれませんが、そのままでも残響特性が良いケースが多いものです。遮音性能が低い裏返しでもありますが、天井や襖による仕切りは気密性が高過ぎず、また、押し入れのスペースと布団も低音を吸収。畳や漆喰の壁も適度に音を吸収および反射するのが功を奏するようです。洋室と和室が選べるならば、和室を選ぶのも「タダ」でできる改善アイデアと言えます。

なお、現実的には、洋室を利用することが多いでしょう。この場合、タダあるいは特別な出費を抑える吸音方法を整理すると:

①ソファは布製。ボリュームがあると低音も吸音。

②床はフローリングよりも絨毯。毛足が長く厚手だと低音も吸収。

③カーテンは厚手で音を吸収しやすい素材を選ぶ。

【番外】多人数で鑑賞。人間も音を吸収します。(厳密な設計では、残響時間の計算時に考慮します。)

吸音のし過ぎも注意!

一般的なご家庭の場合、「吸音のし過ぎ」はあまり起こりませんが、闇雲に吸音材を使用すると、特定の周波数帯域だけを吸収してしまい、残響音がアンバランスになってサウンド体験が低下する恐れがあります。ネット等で安価で販売されている吸音特性が明示されていない吸音材を壁にペタペタと貼り付けるのはお勧めできません。因みに出費を覚悟すれば、吸音特性が明示された吸音材や、高域から低域までバランス良く音を吸収する専用品も販売されていますので、併せてご検討を!

  • 調音パネル
    ヤマハ
    ACP-2 MN」 
    ¥66,000(税込)
    グラスウールなどで吸音が難しい低音域にも吸収効果を発揮します。

さいごに

今回は「タダ」を意識して、調音の基礎と対策アイデアをご紹介しました。さらなる上質なシアターを実現する「調音」は奥深い世界。この連載では、またの機会に「フラッターエコー」や「鏡像現象」など、ホームシアターで起こりがちなトラブルを掘り下げ、改善方法をご紹介したいと思いますのでお楽しみに!