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  • カリモク家具「THE FIRST」座り心地のよさを追求したゆったりパーソナルチェア ホームシアターにひとり1台、出荷台数10万台の国産チェア

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2024年2月26日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

カリモク家具のパーソナルチェア「THE FIRST(ザ・ファースト)」。90年代後半から“座る”を科学し、着座による身体の負担を軽減するための独自の座り心地研究の集大成として、2012年に発売されました。パーソナルチェアで30万円超えもある価格帯ながら、ついに10万台を突破したと聞き(2024年2月中旬現在)、愛知県東浦町にある2000坪にも及ぶカリモク家具本社ショールームを訪れました。

創業80年の国産家具メーカー

カリモク家具は、創業者・加藤正平が愛知県刈谷市に1940年に設立した木工所が発展して、1947年に「刈谷木材工業株式会社」として誕生しました。下請け企業として、豊田自動織機の紡織機の木部品やミシンテーブルをはじめ、ピアノの鍵盤やステレオキャビネットなど、様々な木工品を手掛けるようになります。

1960年代には自社ブランドとして家具を製造、「カリモク家具販売会社」を立ち上げて日本全国へ向けた販売を始め、1983年には高級ブランド「Domani(ドマーニ)」を百貨店経由で広めるなど、現在に至るまで自社ブランドは10にも及びます。

近年は海外への取り組み強化のほか、多彩な木工技術を生かしたOEM提供も盛んに。事業拡張により東浦町に敷地を移して2010年には「カリモク家具株式会社」に統合、日本有数の家具メーカーとしての地位を盤石にしています。

手間とコストがかかる資材管理から間伐材の利用等によるSDGsへの取り組み、最新のNCルーターなどを使ったハイテクを駆使して安全性と効率化を進めながらも工程の最初と最後には必ず熟練の職人が手がける「ハイテク&ハイタッチ」、3年保証に加えて全国の拠点で行う修理対応、きめ細かいカスタムオーダー対応など、日本人らしいおもてなし精神にあふれたこだわりには頭が下がります。

「ザ・ファースト」こだわりの仕様

カリモク家具らしいこだわりが最大限発揮されている製品のひとつが、今回紹介する「ザ・ファースト」。同社では従来より、リクライニングできるパーソナルチェアを提供していましたが、大学の研究所で人間工学(エルゴノミクス)を研究してきたある社員によって、徹底的に磨き直され誕生したといいます。

  • 2005年発売の「座り心地研究」の第一号「ZT73」モデル。座ることを科学し、着座による腰椎部の負担や血流値の妨げといった身体への負担を軽減すべく誕生したソファです。それを更に脳波や脈波解析まで発展させて誕生したのが「ザ・ファースト

「ザ・ファースト」は、従来モデルで必要としていたレバーなどの操作が不要で、後ろに身を委ねた分だけリクライニング。そのとき背もたれがシート下に潜り込むことで、腰部に隙間ができない構造になっています。

リクライニングしても体と背面・座面の距離が変わらず、第三腰椎を支えて猫背にしないという長所は、生地に布を選んだとき如実に表れます。レザーでは滑るので問題にならなくても、布では衣服との摩擦でうまくリクライニングできないためです。

そして、ホームシアターユーザーにとってもっともメリットがあるのが、リクライニングしたとき自動的にヘッドレストが持ち上がる機構。画面に視線を向けたまま、リラックスした姿勢を取ることができます。もっとも、完全に倒したときは睡眠姿勢と判断し、ヘッドレストのロックもリリースされます。

  • 「ザ・ファースト」の機構
  • リクライニングしたとき自動でヘッドレストが持ち上がるので、楽な姿勢で映像鑑賞できます
  • 完全に倒したときはヘッドレストのロックも自動で外れます

究極の寛ぎの秘密は内部素材にも。スポーツカーのシートにも採用される水平方向にはほとんど伸縮しない「3Dネット」が、いわばハンモックのように、体全体を支えているのです。なお、プレステージブランドであるDomani「EXEFORT(エグゼフォート)」に採用されている3Dネットは同種最高級生地で、それらがそのまま価格差に表れているとのことです。

  • 価格が70万円ほどする「エグゼフォート」は見るからに高級感漂いますが、座ってみると驚くほどふっかふか! 内部も、クッション材を贅沢に使用しているのはもちろん、複数の最高級「3Dネット」の採用も効いているそう

張地(生地)と木部(ベース部)にもカリモクならではのこだわりが。張地のオススメは布ですが、本革の多彩なカラーも魅力。また、張地が覆うアーム部、全体を支えるベース部には、カリモクならではの成型合板技術が生かされています。

自分好みのサイズ&デザインを選べる

そんな「ザ・ファースト」は、現在「RU78」「RU71」「RU72」「RU73」「RU76」「RU75」の6つのラインアップを揃えます。

  • 発売当初よりラインナップし、いまだにベストセラーなのが「RU72」(Sサイズ¥257,400円税込~/オットマン別売)。価格と性能のバランスが取れており根強い人気があります

オススメは、座面を拡張してリラックス度を高めた「RU76」(S+サイズ¥349,800円税込~/オットマン別売)。「RU74」のバージョンアップモデルです。体圧分散層を表面に移動して吸収層と2層にすることで、最初の当たりはちょっと硬めとし長時間座った場合の快適性を向上させました。綿の入り方も変えており、ヨーロッパの高級車のシートのようなイメージです。

  • RU76」。クッション構造に従来モデルとの違いが
  • 写真左が「RU78」(Mサイズ)、右が「RU76」(Lサイズ)

「ザ・ファースト」には「S」「S+」「M」「L」のサイズがあります(モデル毎にサイズ展開は異なります)。単に拡大縮小しているのではなく、身長に合わせた骨の寸法を研究して導き出したといいます。発売当初に取材したときは存在しなかった「S+」サイズは、その後のリクエストに基づくもの。小柄な人でも「座面は低くていいがゆったり掛けたいから奥行が欲しい」といったニーズに対応したものだそうです。

  • 6モデルの違い、サイズごとの座り心地など、ぜひ全国のショールームや展示取扱店で体感してみてください

ソファもいいけど贅沢な一人一台も!

一台一台個別発注できるので、生地や色、木部の材質もカスタムに選択可能。ソファにみんなで一緒もいいけど、リビングシアターにそれぞれがピッタリの一脚を選び取るのもイイですね。

次回は「ザ・ファースト」の製造工程に潜入、こだわりの秘密に迫ります!

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