いま、ホームシアターファンが見るべき4K Ultra HDブルーレイの注目タイトルを、プロの評論家が画質と音質の評価チャート付きで紹介する連載企画。2023年12月時点で発売中の旧作リマスター『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』と『ローマの休日』、『ゴジラ』の3タイトルについて、画質音質チェックの見どころを大橋伸太郎氏が自宅のホームシアターで徹底的にチェックしました。
CONTENTS
・『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』
・4Kで描く人形たちの立体感が見事
・『ローマの休日』
・名作の4Kリマスター、柔らかく深みのある黒の表現を実現
・『ゴジラ』
・映像改善は完成形! 音響は量感たっぷりに
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
- 『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
¥7,590(税込)
ウォルト・ディズニー・ジャパン
VWBS7490
●製作:1993年/米 ●ジャンル:洋画アニメーション ●本編ディスク:76分、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語DTS-HDマスターオーディオ7.1ch、日本語ドルビーデジタル5.1ch ●字幕:英語、日本語、日本語吹替用
©︎ 2023 Disney
●ストーリー
ハロウィンタウンのカボチャの王ジャックは偶然、森の中の扉から別世界へ迷い込む。そこは色鮮やかなクリスマスタウン。モノクロームの世界に飽き飽きしていたジャックは、自分がサンタクロースになってクリスマスを演出しようとするが…。
4K映像で描く人形たちの立体感が見事
今から20数年前、サリーとジャックが結ばれるラストシーンで、一緒にレーザーディスクを見ていた当時5歳の娘が感極まってわっと泣き出したことを懐かしく思い出しました。LCOS方式プロジェクターと有機ELテレビの両方で見ましたが、適性は一長一短。どちらも漆黒の背景が心地よく、前景のライトアップされた人形たちが4Kの精細感でこれまでにない立体感です。ゼラチンライトが人形たちを照らすうっすら濡れたような演色の工夫や布、粘土などの質感描写は有機ELテレビの透明感ある画質で最大の効果を発揮する一方、LCOS方式プロジェクターはモノトーンのハロウィンタウンを深いコントラストとなめらかな暗部階調でスクリーンに描き出します。クリスマスタウンのジェリービーンズをまき散らしたようなBT.2020の広色域に20数年の映像の進歩を実感します。(大橋伸太郎)
『ローマの休日』
- 『ローマの休日』
¥6,589(税込)
NBCユニバーサル
PJXF-1580
●製作:1953年/米 ●洋画ドラマ ●本編ディスク:118分、スタンダード、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーTrueHD2.0chモノラル、日本語ドルビーデジタル2.0chモノラル ●字幕:日本語、英語
©︎ 1953, 2023 Paramount Pictures.
●ストーリー
各国を歴訪中のアン王女が最後に訪問したのはイタリアの首都。退屈な公務にうんざりしてひとりローマの街に飛び出すが、疲れて深夜に公園で寝ていたところを新聞記者のジョーに起こされ、彼のアパートに転がり込む…。
- ●監督:ウィリアム・ワイラー ●出演:グレゴリー・ペック、オードリー・ヘプバーン ●特典:同梱のBDに収録/映画製作者に迫る:レナード・マルティンが語る「ローマン・ホリデー」、ゲートの内側:衣装、王女とローマ、オードリー・ヘプバーン:パラマウント時代 ほか
©︎ 1953, 2023 Paramount Pictures.
名作の4Kリマスター、柔らかく深みのある黒の表現を実現
モノクロ・スタンダードの旧作ですが、HDR10エンコード。ディスプレイにとって今期一番の難関ソフト。テーマはフィルムらしい柔らかく深みのある黒の表現、につきます。CH10の美容院で髪を切るシーンの黒髪と眉、瞳、CH15ダンスパーティのほの暗い電飾の照らす夜の高揚と虚脱、CH16一夜を過ごした2人の官能の残り火の描写、アンの娘→女への変化、車中で別れにむせび泣く一人の生身の女の暗がりの中の表情、CH18王宮の冷厳な空気の中、再び王族の女に戻ったアンの再会の動揺と、4K HDRの映像は伝説の映画の謎めいたヴェールを1枚1枚剥がしていき感動を新たにします。シーンによってフィルムグレインの粒子が圧縮プロセスで粗く大きいので、ディスプレイのノイズリダクション機能の試金石といえそうです。(大橋伸太郎)
- 『ローマの休日』画質/音質傾向
『ゴジラ』
- 『ゴジラ』
¥6,600(税込)
東宝
TBR33183D
●製作:1954/日 ●ジャンル:邦画特撮 ●本編ディスク:97分、スタンダード、SDR ●本編音声:日本語リニアPCM2.0chモノラル ●字幕:日本語バリアフリー
©︎ 1954 TOHO CO.,LTD.
●ストーリー
日本近海で漁船が次々に消息不明に。「ゴジラの仕業じゃ…」という大戸島の古老の呟き通り、巨大な古代生物が出現し、東京に上陸。ちょうどその頃、戦争で負傷、隠棲して研究に没頭していた物理学者の芹沢が恐るべき破壊兵器を完成していた。
- ●監督:本多猪四郎 ●出演:宝田明、河内桃子 ●特典:「シネスコ版 怪獣王ゴジラ 海外版」 (HD 画質)、各種予告編(予告編/海外輸出用予告編、8mm映画『ゴジラ』(70年代に販売されていた、約15分の『ゴジラ』)、わが映画人生 本多猪四郎監督(本多猪四郎のインタビュー映像) ほか
©︎ 1954 TOHO CO.,LTD.
映像改善は完成形! 音響は量感たっぷりに
本編部分の画質がBDからさらに向上しました。積み上げられたノイズ除去と階調改善の完成形と言っていいでしょう。フィルムグレインの粒子が非常にきめ細かく落ち着いていて、120インチで見ても妨害要因になりません。SDRですが、暗部階調は大きく改善され、闇に妖しく息を潜める芹沢の研究室のシーン(CH11)は、本作のゴシックロマン性と悲劇性を引き立てます。河内桃子の黒髪がしっとりと艶やかで瞳のきらめきが美しく、本編部分を疎かにしないリマスターが劇映画としての品格を生みます。特撮シーンの大半がナイトシーンですが、黒潰れがなく細部まで明瞭。PCM音声(2.0chモノラル)はノイズ、歪みが除去され冒頭の跫音、咆哮とも量感十分、サラウンドへ変換して再生することをお薦めします。4Kで精細感が上がった分、新聞紙面のクローズアップでゴジラと無関係の文言(エロ本の是非を問う)が遠目にもはっきり読め、思わず失笑しました。(大橋伸太郎)
- 『ゴジラ』画質/音質傾向
【2023年12月版】いま見るべき4K Ultra HDブルーレイ『クリード 過去の逆襲』&『ザ・フラッシュ』、画質音質チェック