伊尾喜大祐が「画質」で選ぶ！2023年ハイクオリティ4K Ultra HDブルーレイBest5

CONTENTS

・時を超えて評価されるタイトルを選出
 ・画質で評価した５作品を発表！
・『スパイダーマン：アクロス・ザ・スパイダーバース』
・『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
・『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
・『フェイブルマンズ』
・『ゴジラVSビオランテ』
・惜しい…画質が残念だったタイトルは？

時を超えて評価されるタイトルを選出

4K Ultra HDブルーレイソフト（UHD BD）が着実にタイトル数を増やしつつあった2023年。その主力はやはり新作洋画でしたが、ハリウッドメジャーの超大作以外の中規模な作品になると、パッケージよりデジタルセル配信に軸足が移行してきた感があります。たとえばMCU作品や『ワイルドスピード』などの大作シリーズは、UHD BDが充実した仕様とコンテンツで続々とリリースされています。しかし『バビロン』や『TAR／ター』のような作品は配信こそUHDリリースでしたが、パッケージは簡素なBD止まりで、中にはDVDのみというタイトルも。

とはいえ海外では「こんな作品まで！？」と驚くようなタイトルが次々とUHD BD化されていますし、我が国でもシネフィルWOWOWや是空などのレーベルがバラエティに富んだ通好みな作品をリリースしています。さらに「新たなる希望」は日本映画界にも。東宝と東映が新旧作品を問わず、本格的なUHD BDタイトルの拡充に乗り出したのです。東宝は黒澤明作品や『ゴジラ』シリーズ。東映は『ONE PIECE FILM RED』や『THE LEGEND & BUTTERFLY』などの新作に加えて、1971年版「仮面ライダー」をBOXで投入したりも。さらにこれまで同様、角川映画の名作群も続々リリースされています。

前置きが長くなりましたが、UHD BDはフィルムが本来持っていた情報量を余すことなく後世に残せる、最良の、そして最後のパッケージメディアといえます。時を超えてそのクオリティが評価され続けていくであろうタイトルを、2023年にリリースされた作品群から選んだつもりです。どうぞお楽しみ下さい。（伊尾喜）

画質で評価した５作品を発表！

※本日公開の記事では、前半編として、伊尾喜大祐さんが「画質」で選んだ注目作をピックアップしました。（編集部）

『スパイダーマン：アクロス・ザ・スパイダーバース』

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
デジタル配信中
4K Ultra HD＆ブルーレイセット¥7,480円（税込）
発売・販売元：ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
●製作:2023年／米 ●本編ディスク:140分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語DTS-HDマスターオーディオ5.1ch
© 2023 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: © & ™ 2023 MARVEL

これはもうアニメーション・アート！前代未聞の映像美をぜひ4K UHDで

「ただのアニメ版スパイダーマンでしょ？」なんて侮っていたら大間違い！CH1は水彩画風、CH2に登場する敵はダ・ヴィンチの手稿風、CH3はコミック雑誌の誌面風、CH9はインド×NYな雰囲気の都市をスケッチ風に描出、そしてCH10の未来都市はシド・ミード風と、無数に登場するスパイダーマンの並行世界が、それぞれ全く違ったビジュアルスタイルで描かれるのが本作の凄みなのです。クリエイターたちのイメージが激流のように押し寄せる、これはもう4K HDR映像ならではの、前代未聞のアニメーション・アート超大作。だからと言って前作のエモーショナルな物語構成が決して失われていないのも本作の素晴らしさと言えるでしょう。

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』画質／音質傾向

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

『アバター：ウェイ・オブ・ウォーター』
¥9,790（税込）
デジタル配信中（購入／レンタル）、4K UHD発売中
発売：ウォルト・ディズニー・ジャパン
●製作：2022年／米 ●本編ディスク：約192分、ビスタ、HDR10 ●本編音声：英語ドルビーアトモス、英語DTS-HDマスターオーディオ2.0ch、日本語ドルビーデジタルプラス7.1chほか
© 2023 20th Century Studios.

HDR映像で描く海洋シーンは、息を飲むほどの美しさ

惑星パンドラの森から海へと舞台を移し、ジェイクとネイティリ、そして３人の子供たちの冒険が繰り広げられるシリーズ第２作。最大の見どころは、4K HDRのハイコントラストと色数豊富な広色域映像で描かれる、鮮烈な「海」の描写。CH23からの海中シーンなど、パンドラの海も海洋生物もすべて「作り物」にも関わらず、ただ普通に海の中を撮っただけの映像に見えるほどにリアルです。同梱のBlu-ray3Dディスクを（映画再生の禁じ手ですが）フレーム補間をかけて再生すると、パンドラの海でダイビングしている感覚すら味わえるほどです。CH67からの『タイタニック』を思わせる沈み行く船での水中シーンの数々も、身の危険を感じるほどの臨場感！

『アバター：ウェイ・オブ・ウォーター』画質／音質傾向

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
4K Ultra HD+ブルーレイ:¥7,260円 (税込)
Blu-ray+DVD:¥5,280円 (税込)
発売：NBCユニバーサル・エンターテイメント
●制作：2023年／米 ●本編映像：92分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声：英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーアトモス
© 2023 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.

ゲームの世界を豊かなディテールで描く

ファミコンのドット絵からSwitchの3Dグラフィックへと進化を遂げてきたマリオたちが、UHD BDでさらにディテールアップ！CH２ではマリオやルイージのヒゲや肌、帽子やオーバーオールの生地の質感が克明で、まるで動くフィギュアを見るかのよう。CH5ではキノコの世界の色彩がHDR化でさらにポップに。金色に輝くコインの眩しさにもびっくりです。CH7、マリオのトレーニングシーンでは、ゲーム世界をPOV視点で体感！ドルビービジョン＆アトモスのデモにも最高です。そしてCH12の「マリオカート」シーンは、サーキットの虹色が透明感豊かにきらめき、アトモス効果も最高潮。この面白さと楽しさは、まさに無敵の「スターマリオ」級！

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』画質／音質傾向

『フェイブルマンズ』

『フェイブルマンズ』
4K Ultra HD+ブルーレイ:¥7,260(税込)
Blu-ray:¥2,075(税込)／DVD:¥1,572(税込)2024年1月12日発売
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
●製作：2022年／米 ●本編ディスク：151分、ビスタ、ドルビービジョン ●本編音声：英語ドルビーTrueHD7.1ch、日本語ドルビーデジタル5.1ch
© 2022 Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

光と暗闇のコントラストがHDRで絶大な効果を上げる

スピルバーグが映画に呪われた…もとい、魅せられた少年時代を自ら描いた家族の物語。『未知との遭遇』や『E.T.』、そして『レイダース』など、後の作品群へのオマージュも満載です。撮影は主に35mm／16mm／8mmフィルムで行われ、4Kでマスター制作されています。CH1、幼少期に大劇場で観た『地上最大のショウ』の上映。CH9ほか、少年時代の自主映画の上映。何よりCH8、8mmフィルム編集中に気づいてしまった母親の秘密…。映画が重要なテーマになる作品だけに、映写機や編集機越しの光と周辺の暗闇のコントラストが、HDR効果で絶大な効果を上げています。そしてラスト５秒の驚きの「映画的展開」には、きっと拍手喝采間違いなし！

『フェイブルマンズ』画質／音質傾向

『ゴジラVSビオランテ』

『ゴジラvsビオランテ』　
Blu-ray発売中
4K リマスター 4K Ultra HD Blu-ray：¥6,600（税抜価格¥6,000）
4K リマスターBlu-ray：¥5,500（税抜価格¥5,000）
発売・販売元：東宝
●制作：1989年／日 ●本編映像：155分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声：日本語モノラル（オリジナル）リニアPCM、日本語5.1ch
©︎1989 TOHO CO.,LTD.

飛躍的にブラッシュアップしたリマスター！怪獣バトルを細部まで堪能できる

平成ゴジラシリーズの礎を築いた記念碑的作品がUHD BDに。CH12、芦ノ湖に出現したビオランテ、花弁や体表の質感とグラデーション。CH14、三原山から復活したゴジラ、ゴツゴツした表皮のディテールと立体感。CH16、縦横無尽にピアノ線を駆使したスーパーX2の操演。CH23、ゴジラが襲う大阪市街のセットの奥行き感。CH30の最終決戦、ビオランテ顔面のパイナップル状の質感…などなど、従来のソフトからの画質・音質の飛躍的な向上に唖然、呆然。この精細感、このコントラスト、この発色！SDR収録であることさえ、見ている最中は忘れていたほどです。音ネガから新たに修復された、リニアPCMのドルビーサラウンド音声の力強さも特筆もの！

『ゴジラvsビオランテ』　画質／音質傾向

2023年、画質が残念だったタイトルは？

『ローマの休日』

製作70周年記念記念の、待望の4Kドルビービジョン盤。その映像はグレインの存在感をしっかり残す、フィルムの薫りが漂う画作りなのですが…その分、解像感や階調感が損なわれた印象も否めません。NHK BS4KでのOA版はこれらのバランスが絶妙で、透明感さえ感じる仕上がりでした。角ゴシックの字幕フォントも堅苦しく、作品の雰囲気を損ねていて残念です。

伊尾喜大祐氏のホームシアター「シン・イオキネマ」の構想から完成まで密着した連載はこちら！