簡単画質調整シリーズ第二弾! 今回は、メジャーな調整項目ながらわかりづらい「ガンマ」について、調整のコツをご紹介します。ガンマの肝がわかれば、みなさんの視聴環境や好みに合わせて、より快適な映像体験ができるはずです。
映像の調整項目「ガンマ」の正体とは?
解説記事では、原理など基礎のお話から始まりがちですが、本シリーズ記事は“簡単”がテーマなので、なるべくふれないようにしたいと思います。なぜならば、そもそも「ガンマ」はブラウン管時代の名残で、現代では不必要な概念ともいえるからです。
ではさっそくガンマを忘れて、言葉を置き換えましょう。HDR時代の今では「EOTF」が相当します。こちらもまだ慣れない言葉なので、「入力信号と画面の明るさの関係」くらいに捉えると理解しやすいでしょう。
- 映像装置に入力された輝度信号は、最終的には画面の明暗としてビジュアル化されます。前述の「入力信号と画面の明るさの関係」とは、このときの入力信号と、実際に描写される明るさの程度の関係、と考えてみましょう。図はイメージです
映像の画柄は明暗で構成されます。制作者の意図した明暗、すなわち信号に含まれる明暗の情報は、画面上に正確に反映されるのが理想です。この関係が崩れるのは、映像装置の精度が不十分か、またはユーザーが意図的に調整をおこなった場合です。
ガンマの“強弱”で映像の見え方も異なる
映像装置の画質調整項目には、ほぼ例外なく「ガンマ」という項目があります。まず、ガンマの標準値は2つ。明るい部屋での視聴を想定した「2.2」と、暗室を想定した「2.4」(最新規格ではBT.1886)があります。
- ガンマが“強い”とは、数値が大きくなる方向。たとえばガンマ2.2を基準にすると、2.4はガンマが強いといえます。逆にガンマが“弱い”とは、数値が小さくなる方向です。画像はPANASONIC「TH-55MZ2500」の調整画面
ガンマが弱い場合と強い場合で、映像の見え方はどのように変化するのでしょうか? ここだけを押さえておけば、ガンマ調整はマスターできたのも同然です。
「ガンマが弱い」状態とは、中間調(映像の暗部および明部ではない中間的な輝度の部分)が基準よりも明るく映ります。コントラスト感が低下しますが、映像としては明るく柔らかな印象を受けます。
「ガンマが強い」状態とは、中間調が基準よりも暗く映ります。映像の印象としては暗くなりますが、暗室に近い暗い部屋では、黒が引き締まってコントラストが高く感じます。
現代の映像装置において、ガンマ調整で知るべき基礎知識はここまでで充分です。歴史やメカニズムについて知るのも楽しいですが、必須ではありません。
基本の操作と調整のコツを実践指南!
まずお手持ちのテレビやプロジェクターなどで、映像の調整項目を確認してみましょう。ガンマが数値で表示されているものと、「強」「標準」「弱」のようなタイプがあります。
ガンマが2.2や2.4といった数値で表示されている映像装置の場合、数値で記載されているのは、設計や製造上でケアされている証といえます。画面上の映りは数値どおりになると期待でき、調整のしがいもあります。
「強」「標準」「弱」タイプの場合はメーカーやモデルによって差異があると考えられますが、ねらいとしてはおおむね、強=2.4、標準=2.2、弱=2.0、程度と考えて差支えないでしょう。
より高画質を追求するなら、ガンマを調整した映像がそれぞれ適正に見えるよう、部屋の照明環境も整えましょう。
<調整スタート>
調整のポイントはどちらの場合もおおむね同じ。日中に日差しが入り込むほど明るい部屋の場合、「弱」を選択すると、映像が明るくなって視認性が高まるはずです。
逆に暗室に近い場合は「強」を選択すると、中間調のほか、暗部に近い階調(グラデーション)も黒側にシフトし、黒の表現力が増すはずです。
ここからは筆者の考えですが、大半のテレビでは、日中にニュースやバラエティーなどの放送番組を視聴する際、ガンマは弱めの方が快適に感じられるケースが多いものです。筆者の経験上、ガンマ1.8などでもよいと考えています。
映画のように制作者の意図が隅々まで込められているコンテンツではない場合、ユーザーが快適に感じるように調整するのは“アリ”です。
映画作品では、ガンマは2.4(最新規格ではBT.1886)に設定すると、制作者の意図した明暗表現を受け取ることができます。このとき、照明を落として暗室に近い状態をつくり、ガンマ2.4の映像が適正に見えるよう整えるのがポイントです。
手持ち機器だからこそ使いこなして楽しもう
「かんたん画質調整シリーズ・ガンマ編」はいかがでしたでしょうか? まずは、試しにお手持ちの映像装置でガンマを調整してみて、映像の見え方を確認されるとよいでしょう。この調整で映像装置が壊れることはなく、またリセットすれば元に戻るので、恐れずにチャレンジしてみてください。きっと、より快適な映像体験につながるはずです!