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  • 連載「8K最前線インタビュー」 8K最前線インタビューPART.1[前編]
    シャープに聞いた!8Kならではの魅力とは?
    驚くべき解像度と臨場感

    取材・執筆 / 松井泰裕(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2019年5月8日更新

世界に先駆けて、8K放送が始まった!

未だかつてない高解像な映像を楽しめる「8K」をご存知でしょうか? 8Kの解像度は、私たちが普段見慣れている地上波デジタル放送の約16倍もの解像度を誇ります。
また、8Kの映像表現は放送だけにとどまらず、さまざまな分野で注目を集め、活躍の場が広がっています。医療では内視鏡のカメラを8K化する動きが高まっていて、8Kの高精細な映像を使って正確かつ効率的な手術を実現させています。さらに家庭での楽しみ方の可能性も高まっており、写真のディスプレイ出力、コンピューターグラフィックなどにも活用されており、従来では味わえなかった新次元の映像を体験できる機会がより身近なものになろうとしています。

  • 新4K衛星放送と同時に開始された8K放送。2020年東京オリンピックは、新8K衛星放送でも放送される予定だ。

本連載では、2018年12月から世界に先駆けて放送も開始された「8K」について、最新の情報を追い掛けていきます。
そして今回、2018年11月に世界初の民生用8Kチューナー内蔵テレビ「AQUOS AX1シリーズ」を発売したシャープから、8Kの最前線で活躍するキーマンとして8K推進部の上杉俊介氏に突撃取材を実施。8Kならではの魅力を語っていただきました。

  • 取材にご協力いただいた、シャープ株式会社 スマートTVシステム事業本部 国内TV事業部 8K推進部 部長 上杉俊介氏

後編はこちら>>>8K最前線インタビューPART.1[後編]世界初8Kテレビが描く新たな映像体験

地デジの約16倍以上の解像度

まずテレビなどで表示される映像は、細かな点が集まりそれが塊となって表れているもので、それを私たちは“映像”として認識しています。その点(ドット)の目が精細であればあるほど、人は解像感が高い映像だと感じます。

地上波デジタル放送やブルーレイ・ディスクで採用される2KやフルHD(最大で1920×1080ピクセル)から、さらにひとつのドットが4つ(4倍)に細分化され、解像感が高まったものがいわゆる4K(3840×2160ピクセル)です。フルHDや4Kの解像度は、テレビやプロジェクターなどの製品でも一般的に採用されているため、よく目にする機会があると思います。そして8K(7680×4320ピクセル)になると、4Kのさらに4倍(フルHDでは16倍)の細かいドットによって描画されます。画素数はおよそ3300万画素となり、圧倒的な解像度を誇る映像フォーマットと言えるのです。

  • 私たちが観ているテレビの映像は、実は細かな点が集まってできており、それを映像と認識しています。8K(7680×4320ピクセル)は、フルHD(1920×1080ピクセル)の16倍にも及ぶ解像度を誇り、超高精細な映像表現が可能になります。

人間が目にしている実物とほぼ変わらない

8K放送を牽引するNHKでは、人間が視覚できる解像度の段階によって「どれくらい本物に近づけるか、どれくらい本物と遜色がないと感じるか」といった評価を数値化する研究を行なっていますが、“8K映像は人間が目にしている実物とほぼ変わらない”という、驚くべきスコアを記録したと発表しています。

「例えば彫像は彫り込んだ凹凸の陰影によって立体感を感じますが、それを解像度の低い映像で見ると陰影のグラデーションが粗くなり、明るいだけの部分と暗いだけの部分しかないように見えて立体感を感じることができません。一方で、解像度が高くなれば一つ一つの陰影が細かく表現できるため、グラデーションが滑らかになり、実物のような立体感が生まれます。つまり、8Kであれば現実に近い映像表現ができるのです。」(上杉氏)

8Kの高精細から生まれる現実のような映像世界は、これからの私たちの映像体験に大きく影響を与える存在になることは間違いないでしょう。

  • 8Kは、従来まで表現できなかった物の素材の質感、細かい文字なども、精細感高く、実際に目で見ているような実存感を持って表現することが可能になりました。

スポーツ中継の臨場感がすごい!

8K対応の民生用テレビだけでなく、撮影現場で使われる8Kカメラまでも開発しており、全社で総力を挙げて8Kに取り組んでいるシャープ。上杉氏は、番組制作においても8Kの高精細さを活かす新たな試みをしていることが特長の一つだと語ります。

「サッカーの試合では、フィールドをより大きく見せることができる”引いた視点”からの撮影を、8K放送用として意図的に採用しています。ボール周辺だけでなく逆サイドで選手がどのように動いているのか、あるいはディフェンスのラインがどのようにオフサイドラインを取っているのか、8Kの解像度を持ってすれば引いた視点でも各選手の動きがわかるのです。フィールド全体を見渡せることがスタジアム観戦の醍醐味だと思いますが、8K放送ではスタジアムの全体像を捉えられるため、非常に現実感に近いまさにスタジアムに足を運んでいるような感覚が味わえます。」(上杉氏)

現実感や臨場感といった、これまで放送からでは感じ取ることのできなかった新しい映像の価値観が8Kによって生み出されているのです。

  • シャープは業務用として8K対応のカムコーダーも開発しています。写真は、「8C-B60A」。3300万画素を誇るSuper 35mm CMOSイメージセンサーを搭載しており、8K/60pの撮影にも対応しています。
    ※写真は、レンズ、ビューファインダーなど社外別売品を装着したイメージ。

8Kはライフスタイルまでも変える

かつてないほどの映像体験を楽しめる8K放送ですが、実は音声についてもその映像に相応しい新しい規格に対応しています。それは、なんと合計24本(22.2ch)ものスピーカーを用いたサラウンド音響で、全方位から音に包み込まれる空間を演出できるのです。
シャープはご家庭でもその8K放送を存分に楽しめるように、8Kチューナー内蔵テレビ「AQUOS AX1シリーズ」に加えて、その22.2ch再生を再現したサウンドバー「8A-C31AX1」から、8K放送の録画に対応したUSBハードディスク「8R-C80A1」まで、革新的な8K製品群を精力的に開発しています。

「一度ソファに腰を落ち着かせて8Kテレビに対峙したら、そこは窓の向こう側にある本物の景色や情景を見ている感覚に陥るでしょう。8Kの体験はテレビの“ひとつの究極の形”だと、我々は信じています。8Kであれば“ユーザーに大きな感動を与えられる”と確信していたからこそ、シャープはいち早く8K製品群の製品化を目指し、製品の発売を実現させたのです。」(上杉氏)

  • これからの私たちの生活に直接関わってくることがますます増えることが予想される8K。これからもぜひ期待していただきたいと語る上杉氏。2018年11月に発売された、世界初の8Kチューナー内蔵テレビ「AX1シリーズ」(写真は80型モデル「8T-C80AX1」)、そして22.2chの立体音響を楽しめるサウンドバー「8A-C31AX1」、8K対応USB HDD「8R-C80A1」と共に取材を行ってくれました。

自宅に居ながらにしてテレビから現実のような体験を楽しめる8K。紀行番組やスポーツ番組はもちろん、今後も8Kならではの未知なる映像体験を味わわせてくれる番組が待ち構えています。来年には、東京で開催される4年に1度のスポーツの祭典も、8K放送で予定されており、「8K」というワードはこれから見逃せないものとなりそうです。