CONTENTS
・測定することで明らかになる“画質差”
・Part1 液晶デバイスを比較~明るさは3倍も違う!
・Part2 液晶と有機ELを比較~ピーク輝度と黒の輝度で違いが!
・Part3 有機ELモデルを比較~クラスによる輝度の差が明らか!
・4K/HDRの表現力において差は歴然!
・REFERENCE MODEL
測定することで明らかになる“画質差”
今やテレビと言えば4Kモデルが主流になりました。実際に購入しようと店頭に出向くと、同じ画面サイズでも5万円のモデルがあれば、40万円以上の4Kテレビがあるなど、価格差が大きく驚きますね。
その価格差はどういったところに表れるのでしょう。機能面では、4Kチューナーの内蔵/非内蔵、内蔵している場合はチューナーの数や録画性能、またスマート機能やスピーカーシステムのグレードなど、価格差による違いは多岐に渡りますが、それだけで大き過ぎる価格差の説明はつきません。やはり決め手は画質です。
では、その画質の“差”とはなにか? 今回は、測定による定量的な評価を最大限に採り入れ、「画質差」を徹底的に分析します。スタンダートモデルとハイグレードモデル、有機ELと液晶、それらの違いを、測定を用いて検証していきましょう。
- 取材では、PORTRAIT DISPLAYSの「VideoForge PRO」からHDMI経由で、検証する4Kテレビにテストパターンを出力し、表示された映像をコニカミノルタの「CA-P427」で測定。PORTRAIT DISPLAYSのキャリブレーションソフト「CalMAN Studio」を用い、テレビの明るさやコントラストなどの性能をチェックしました。
Part1 液晶モデルを比較~明るさは3倍も違う!
まずは、4Kテレビでもっともシェアの高い液晶モデルをチェックしてみましょう。今回、5万円台で購入できる安価なモデルと、ソニーの最上位モデル「X9500G series」を比較してみました。
測定によって決定的に分かった違いは、映像の明るさです。明るさの数値(nit=cd/m2)を見ていくと、ピーク輝度の数値が、5万円台のモデルは326.2nit、X9500Gは1122.0nitで、約3倍の差があります。HDR映像の表示において、400nitの平均輝度で問題ないとされていますが、1,000nit以上が理想的です。ハイダイナミックレンジの映像美を堪能するには、ハイグレードモデルが有利だと分かります。
- 5万円台の4K液晶モデルは、ピーク最大輝度の表示が326.2cd/m2 (nitと同義)。HDR対応の液晶モデルの中でも数値が低く、暗い印象を与えます。
- ソニーの4K液晶「X9500G series」は、液晶の最上位にふさわしい高い輝度性能を備えており、ピーク最大輝度の表示は1120.0cd/m2 。また最大輝度・面積50%で715.6cd/m2 という数値も併せ、液晶モデルのなかでも非常に明るく、輝度が圧倒的に高いモデルと言えます。
色域は、測定グラフ(2次元)で大差なく見える一方、エラー率に違いがあります。5万円台モデルは彩度こそ出ていますが、明度が不足しています。X9500Gは明るく色鮮やかで、実際の映像では夕日のオレンジ色も濃厚に表現できていました。
視野角やユニフォーミティの違いも明白。5万円台モデルは、斜め横から見ると輝度落ちや黒浮き、色の薄まりなど液晶デバイスによるデメリットが目立ちますが、X9500Gはそのデメリットをできるだけ改善し、4K液晶テレビとして高い次元の視野角とユニフォーミティを実現できています。
- 5万円台の4K液晶テレビの画面を、正面から見た映像と、画面から約30~40度の視聴位置から見た映像を比較した写真です。正面から見ても色表現が薄い印象を与えますが、角度を付けて視聴すると、正面から見る映像とさらに色の再現が大きく変わってしまいます。
- ソニー「X9500G series」は、正面から映像を見ると明るく発色の良い映像で、角度をつけて視聴しても色の薄まりがわずかです。液晶テレビは視野角が悪いことがデメリットとして挙げられますが、ハイグレードクラスになると、高画質技術によって大きく改善されていることが分かります。
Part2 液晶と有機ELを比較~ピーク輝度と黒の輝度で違いが!
次に、液晶と有機ELを比較してみましょう。有機ELは高画質と言われていますが、どういった部分が高画質なのか測定で見ていきます。今回は、ソニーの液晶「X9500G series」と、価格の近い有機EL「A8G series」で検証しました。
映像の明るさから比較していくと、ピーク輝度は液晶が1122.0nitに対して有機ELが700.0nit、明るい部分が画面面積の半分を占めている画面でも、液晶が最大715.6nitで有機ELが305.7nitと、液晶の方が明るいテレビと言えます。日中に直射日光が差込むような明るい部屋なら、液晶の方が明るく鮮明な映像が得られるのは間違いありません。
- ソニーの4K有機ELテレビのなかで、スタンダードクラスに位置する「A8G series」。ピーク最大輝度の表示は700cd/m2 で、液晶「X9500G series」の方が高い数値ですが、黒の輝度・4×4が0.002cd/m2のため、暗く引き締まった黒の表現を実現できていることがわかります。確かな輝度表現と暗部表現が可能で、コントラストがとても高いことが明確です。
一方、黒の輝度は、液晶が0.13nitに対して有機ELは0.002nitと桁違い。暗室で見るなら、有機ELの方が、黒が引き締まったコントラストの高い映像美を体感できます。ピーク輝度と黒の輝度によるダイナミックレンジの広さを活かし、室内の光環境を整えて有機ELを導入するのがお薦めです。
- 「A8G series」も正面から見た場合、角度を付けて視聴した場合で、映像の見え方を比較してみました。調度良い明るさと色階調の良さ、そして締まった暗部の表現が目で見てわかります。視野角も抜群によく、視聴位置の違いによる変化が圧倒的に少ないです。
Part3 有機ELモデルを比較~クラスによる輝度の差が明らか!
有機ELでも、各社はスタンダードとハイグレードをラインアップしていて、画質重視で選ぶ際も迷いがちです。そこで、次はパナソニックのスタンダードクラス「GZ1000 series」とハイグレードクラス「GZ2000 series」を比較してみました。価格は、GZ1000 seriesが55型・約29万円/65型・約49万円、GZ2000 seriesが55型・約40万円/65型・60万円と、かなり開きがあります。
GZ2000はピーク輝度が1,000nitに迫る985.4nit、GZ1000の747.8nitを遥かに上回り、HDRの特長であるコントラストをよりダイナミックに体感できることがわかります。測定上、黒の輝度は同等でしたが、テストパターンを表示して目視で比較すると、GZ2000は光始めの2~3ステップも識別可能。黒の表現に粘りがあり、柔らかさとして体感できます。工場出荷時により綿密にキャリブレーションされているのもポイントで、同じ有機ELでも、クラスの違いによる画質差が明らかになりました。
- パナソニックの4K有機ELテレビ、スタンダードクラスの「GZ1000 series」は、ピーク最大輝度が747.8cd/m2 、黒の輝度・4×4の数値も0.001cd/m2 で、有機ELならではの高いコントラストを実現できていることが数値に表れています。
- 4K有機ELテレビの最上位モデルである「GZ2000 series」は、スタンダードクラスのさらに上を行く最大ピーク輝度 985.4cd/m2という数値で、有機ELテレビの中でも随一の明るさを誇ります。その数値は、ハイグレードクラスの液晶モデルに迫る勢いです。高輝度で暗部表現も緻密なため、HDR表現力が圧倒的に優秀です。
4K/HDRの表現力において差は歴然!
価格が高い製品ほどクオリティが良いと想像しながらも、どれほどの差があるのか明確にすることが難しい場合もあります。今回の記事では、測定という方法で比較することで、特に明るさやコントラストに違いがあること、その度合いを数値で確認できたと思います。
- 実際の視聴、横並びでの画質比較と併せて、測定器を用いた検証も行うことで、映像表現のクオリティの高さが、よりわかりやすくなります。今回の取材では、眼で見た印象に近い、製品のグレードによる画質差が、測定数値にも実直に反映されました。
HDRコンテンツが急速に増える中、ピーク輝度とコントラスト性能の高さは映像体験に直結するものであり、結論として画質を最重視するならハイグレードの有機ELモデル、非常に明るい部屋でも画質を追求するならハイグレードの液晶モデルが有利だということが、取材を通してお伝えできたと思います。
同じ4K/HDR対応テレビといっても画質差が確実に存在し、4K/HDRコンテンツが持つ映像美を最大限に引き出すには、ハイグレードクラスが有利であることをご理解頂ければ幸いです。