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  • 『スター・ウォーズ』を4K/HDRとアトモスで
    コンプリートBOXを徹底レビュー PART2
    EP1/2/3「プリクエル」をチェック!

    取材・執筆 / 伊尾喜 大祐
    2020年5月7日更新

4K Ultra HDブルーレイが映し出す映像革新の歴史

「フォースの光と闇にバランスをもたらす」と預言された少年アナキン・スカイウォーカー。愛する人々への深すぎるほどの思いと強大なフォースを持つゆえに、彼は暗黒面へと巧妙に誘惑され、暗黒卿ダース・ベイダーへと変貌していく・・・この悲劇を描くのが1999年のEP1『ファントム・メナス』、02年のEP2『クローンの攻撃』、そして05年のEP3『シスの復讐』の三部作、通称「プリクエル」です。

自ら監督を務めたサーガの創造主ジョージ・ルーカスは、EP1公開時にこう語っています。「プリクエルを観るとオリジナル三部作の意味が変わる」と。これはつまり、スター・ウォーズはルークを主人公とした三部作ではなく、アナキンこそが主人公の六部作だったことを意味するのです(しかしシークエルを加味すると、パルパティーンこそが…あれ?)。

そしてプリクエルは、映画がフィルムからデジタルへと移行するための、映画史の重大なターニングポイントでもありました。その映像革新の歴史を4K Ultra HDブルーレイ(以下、UHD BD)がどう映し出すのか? 11年に発売されたブルーレイ(以下、BD)と比較しながらレビューしていきましょう。そうそう、前回同様にUHD BDの再生前には字幕の輝度を下げることと、アトモス鑑賞の場合にはAVアンプの音量を上げておくことをお忘れなく(詳細は前回をチェック)。

  • 1999年公開『ファントム・メナス』、2002年公開『クローンの攻撃』、2005年公開『シスの復讐』で構成される通称「プリクエル」三部作。シークエル同様に、各エピソードの本編ディスクとボーナスディスクがまとめられて収納されています。

エピソード1『ファントム・メナス』

  • 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』
    ディズニー
    ●製作:1999年/米
    ●本編ディスク:約136分、シネマスコープ、HDR10
    ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

実写とCGの馴染みが大きく向上

奴隷の少年アナキン・スカイウォーカーが、ジェダイ騎士のクワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービ、そして惑星ナブーの女王パドメ・アミダラとの出会いを通じて、ジェダイへの第一歩を踏み出します。本作は35mm撮影ですが、CG合成の際に映像の質感を揃えるべくグレインを除去した結果、実写部分の階調情報が失われたフラットな画調となってしまっています。BDはこれを2KスキャンしたDIマスターが使用されましたが、UHD BDには12年公開の3Dバージョンの4K DIマスターを採用しています(ポッドレースでアナキンが使う装置が3D版のものに)。

とは言え本来の解像度は2Kなので、4Kとは言え精細感はいまひとつ。BDでは実写とCGの質感の乖離が目立ちましたが、UHD BDでは暗部が引き締まり両者の馴染みが向上。CH7の海底都市やCH27の都市惑星コルサント、そしてパドメの様々な衣装などに、HDRと広色域化の効果を実感できます。特にダース・モールのアップでは、赤と黒の隈取りの発色が力強く圧巻です! オリジナルの6.1chサラウンドEX音声からアトモス化されたサウンドも「激烈」のひと言。白眉はCH20〜のポッドレースで、無数のマシンが音場を爆走する様は実にスリリング。CH39、三つ巴のライトセーバー戦では重低音が唸りを上げて音場を切り裂き、HDR化で輝きを増したセーバーが画面狭しと振り回されて強烈なインパクトです!

  • 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』
    画質評価/音質評価
  • 『ジェダイの帰還』から、実に16年振りに製作されたEP1。シリーズ屈指のライトセーバー戦は、HDR化によって描かれる、煌めく三色のカラーのセーバーが鮮烈です!
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

エピソード2『クローンの攻撃』

  • 『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』
    ディズニー
    ●製作:2002年/米
    ●本編ディスク:約143分、シネマスコープ、HDR10
    ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

「見やすさのBD」と「深さのUHD BD」

パドメ暗殺計画の真犯人をオビ=ワンが追う探偵ドラマと、アナキンとパドメのラブロマンスが交錯し、クライマックスでSW版『地獄の黙示録』に変貌するEP2。フィルムとデジタルの混在で複雑化した前作の制作工程を踏まえ、ジョージ・ルーカス監督は本作でメジャー映画史上初のフルデジタル撮影を敢行(色深度が8bitのHDCAM収録)。これにより本作は、撮影から仕上げ、そして上映までの行程が一貫してデジタル化された、革命的な作品となりました。

BDにはこの2K DIマスターが使用され、UHD BDではさらに4K/HDR化されたマスターが採用されています。しかし精細感にBDと大きな差が感じられない上、マスターの問題なのか、随所で斜線や曲線部分にジャギーも散見されます。興味深いのはHDR効果で、明るくフラットなBDの画調に対し、UHD BDはハイライト部分の輝度こそ大差はないものの、暗部はぐっと強調されて深みのあるトーンになりました。CH4の執務室やCH8のナイトクラブなどは陰謀劇の雰囲気が増し、CH32のタスケン虐殺やCH45のドゥークー戦ではライトセーバーの恐ろしささえ実感。しかしその弊害か、人肌や風景描写の色彩がBDより不健康に見える箇所も。どうにも好き嫌いが分かれそうな映像です。一方で、6.1ch音声をリミックスしたアトモス音声はパワーに満ちあふれ、移動感・包囲感ともに圧倒的。CH28の隕石の中の追撃戦、CH38のドロイド工場の稼働音、CH41〜のスペクタクルな地上戦など、聴きどころは枚挙に暇がないほど! でも最も印象的なのは、ラストで高らかに鳴り響く「あのマーチ」かもしれませんね。

  • 『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』
    画質評価/音質評価
  • 大量のドロイドと数多くのジェダイによるスペクタクルな地上戦は、ドルビーアトモス化によって包囲感と移動感が抜群に向上し、圧倒的なスケールで楽しめます!
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

エピソード3『シスの復讐』

  • 『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』
    ディズニー
    ●製作:2005年/米
    ●本編ディスク:約140分、シネマスコープ、HDR10
    ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

凄まじい映像情報をUHD BDが受け止めた

ジェダイの奮戦むなしく帝国が勃興し、アナキンは暗黒卿ダース・ベイダーに生まれ変わる…プリクエルが凄絶な悲劇で幕を下ろします。本作の撮影は10bitのHDCAM SR収録に進化。BDはこの2K DIマスター、UHD BDにはさらに4K/HDR化されたマスターが使用されています。10bit収録ゆえに広色域化が可能となり、BD版より色の深みが各段に向上しました。

CH3の大艦隊戦は、EP9すら凌ぐ緻密で膨大な映像情報に目が眩むほど。CH9のコルサントの「4K夜景」も驚きのリアリティです。映像トーンはEP2同様にハイライトより暗部を強調するもので、CH10のヨーダとアナキンの対話や、CH11での暗黒面への誘いも、光と闇の対比が実に不穏。そしてCH38のアナキンVSオビ=ワンは、燃えたぎる溶岩に映える青いセーバーが美しくさえありました。映像の完成度が高いだけに、CH45の蒸気がたちこめるベイダー誕生場面などが、マスターの問題なのか、ややノイジーに見受けられたのが惜しまれます。6.1ch音声をリミックスしたアトモス音声は、戦闘シーンやライトセーバー戦を中心に前2作以上に音数が多くパワフルに。しかし忘れられないのは、ジョン・ウィリアムズのスコアです。CH30のジェダイ殲滅、CH36の揺れるアナキン、CH38の決闘など、音場を満たす荘厳なレクイエムが悲劇を大いに盛り上げ、ラストでは「新たなる希望」をEP4へと繋ぎます。

  • 『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』
    画質評価/音質評価
  • ついに登場のベイダー卿。暗黒面へと堕ち、誕生したダース・ベイダーの漆黒が、HDR化によって暗黒面の深さを細部までとらえることができます。
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

意義深いパッケージながら特典には不満も

映画のデジタル化の歴史と共にある「プリクエル」。そのUHD BDの画質は決してパーフェクトではありませんが、ルーカスのチャレンジ精神と黎明期のデジタル撮影の進化を目の当たりに出来る、意義深いパッケージなのは間違いありません。一方、音質面はシークエルと同様に素晴らしいクオリティでした。アトモス音声のベースとなった6.1chドルビーサラウンドEX音声が、実はEP1のために開発された方式であることも、感慨深いものがあります。

最後に特典映像について。各作品の特典BDには、DVD特典のメイキングや未公開シーンに加え、BD-BOX特典のデジタルアーカイブに加え、15年リリースの配信版の特典も新たに収録されました。いずれも短編ながら、EP1に収録のミニチュア制作秘話、EP2の効果音の成り立ちなど、サーガの歴史を網羅した内容は興味深いものばかりです。

しかしEP2のDVD特典だったR2-D2のフェイクドキュメンタリーや、EP3の隠し特典でヒップホップを踊るヨーダなど、お遊び系コンテンツの収録が見送られたのは残念でした。そしてシークエル同様、本国の動画配信サービス「Disney+」で配信中のドルビービジョンにはUHD BDは非対応。さらに本編UHD BDには音声解説がなく、音声解説付きの本編BDも非収録です。どうやらプリクエルも、旧盤が手放せないようですね。

さて次回の最終回では、いよいよEP4〜6のレビューをお届けします。これがプリクエル以上に難物でして…?

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