VGP phileweb

ソフト

  • 『スター・ウォーズ』を4K/HDRとアトモスで
    コンプリートBOXを徹底レビュー PART1
    EP7/8/9「シークエル」をチェック!

    取材・執筆 / 伊尾喜 大祐
    2020年4月30日更新

42年間の歴史の重みを実感させるBOX

シリーズ全9作を4K Ultra HDブルーレイ(以下、UHD BD)で収録した「スター・ウォーズ スカイウォーカー・サーガ 4K UHD コンプリートBOX」が待望のリリースとなりました。42年分の歴史を改めて実感させるズシリと重いボックスには、1977年〜83年公開の通称「オリジナル」、99年〜05年の「プリクエル」、そして15年〜19年の「シークエル」の3つの三部作の本編UHD BD+特典ブルーレイを収めた特製ケース。そしてルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルからのメッセージと、新編集のビジュアルブックが収められていました。実は海外盤ではビジュアルブックがケースの役割も担っており、各ページにディスクを収納する形状でした。しかし国内盤はディスクを余計に傷つけないよう、ボックスデザインがアレンジされたと考えて良いでしょう。それでは最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を含むシークエル3部作から、UHD BD化によるSWの進化を観ていきましょう!

  • 『スター・ウォーズ スカイウォーカー・サーガ 4K UHD コンプリートBOX(数量限定)』
    ¥50,000(税抜)
    本編の4K Ultra HDブルーレイディスク9枚、ボーナス・ディスク9枚に加えて、ビジュアルブック、マーク・ハミルのレターが付属した数量限定ボックス。総分数は、なんと1235分。“ステイホーム”は、ホームシアターで『スター・ウォーズ』の魅力にどっぷり浸るチャンスかも!
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

新世代のSW=「シークエル」三部作とは

類い希なるフォースを持つ謎めいたヒロイン・レイ。新たな銀河の脅威となったファースト・オーダーから脱走したストームトルーパー・フィン。反乱軍のエースパイロット・ポー。そしてスカイウォーカーの血を引きながらもダークサイドに堕ちたカイロ・レン。彼らを主人公とした「シークエル」は、2015年公開のEP7『フォースの覚醒』、17年公開のEP8『最後のジェダイ』、そして19年公開のEP9『スカイウォーカーの夜明け』で構成される三部作です。EP7は今回が初のUHD BD化で、音声もドルビーアトモスにアップグレード。EP8はすでにUHD BDがリリース済ですが、旧盤のドルビービジョン仕様がオミットされ、HDR10のみの収録に。そしてもちろんEP9は今回が初のソフト化です。そのクオリティはいかに?

  • 2015年公開『フォースの覚醒』、2017年公開『最後のジェダイ』、2019年公開『スカイウォーカーの夜明け』で構成される通称「シークエル」三部作。各エピソードの本編ディスクとボーナスディスクがひとつにまとめられる収納されています。

作品の印象が激変! 再生直前に要チェック

待ちに待ったボックスが届いて、もういても立ってもいられないという皆さん! 実は再生前に調整しておきたいポイントが2つあります。まず、どの作品も日本語字幕の白文字が眩しいので、可能であればプレーヤー側で輝度を下げておきましょう。筆者のパナソニックのUHD BDプレーヤー「DP-UB9000」では輝度を「-8」にしています。そしてドルビーアトモス音声は収録レベルが低いので、AVアンプのボリュームを通常より上げておくのがお薦めです。筆者のヤマハのAVアンプ「RX-A3070」では「+3dB」がベストでした。

  • 伊尾喜大祐氏のレファレンスシステム
    ●有機ELテレビ:LG ELECTRONICS「OLED55B7P」
    ●Ultra HDブルーレイプレーヤー:PANASONIC「DP-UB9000」
    ●AVアンプ:YAMAHA「RX-A3070」
    ●スピーカー(7.1.2ch構成):BOSE「AM-15W」(フロント3ch+トップフロント2ch+サブウーハー1ch)、BOSE「AM-10」(サラウンド2ch+サラウンドバック2ch)

エピソード7『フォースの覚醒』

  • 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
    ディズニー
    ●製作:2015年/米
    ●本編ディスク:約136分、シネマスコープ、HDR10
    ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch

4K/HDRによって期待以上の映像進化が!

EP4を下敷きにした本作は、新旧キャラのクロスオーバーが絶妙で、シークエルの見事な導入編となりました。デジタル撮影を一気に推進したプリクエルから一転、本作はオリジナル三部作のトーンを再現すべく、主に35mmフィルム(一部はIMAX)で撮影されました。16年発売のブルーレイ(以下、BD)も十分に高画質でしたが、4KのDIマスターはグレインが更に緻密になり、ディテールと質感をより精緻に、立体的に描き出します。特筆すべきはHDR化の期待以上の恩恵。明暗のレンジの拡大により、CH2の村の夜襲ではブラスターや炎の勢いが倍加。CH29、仄暗い地下室でレイが見るビジョンの眩さ。CH44のライトセーバー戦は、赤と青の光刃が森の闇を切り裂きます。ドルビーアトモス音声も音像がグッとシャープに。CH18のファルコンのチェイス、CH32ほかのXウイング編隊の戦闘では、無数の機体とレーザーが音場狭しとド派手に飛び交い、リアルな距離感で爆破音が炸裂!

  • 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
    画質評価/音質評価
  • ダース・ベイダーを受け継ぐ存在で、暗黒面の強力なフォースを持つ戦士カイロ・レン。赤い十字のライトセーバーは、破裂寸前のように強烈なサウンド!

エピソード8『最後のジェダイ』

  • 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
    ディズニー
    ●製作:2017年/米
    ●本編ディスク:約152分、シネマスコープ、HDR10
    ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

こだわりの画面構成と鮮烈な色彩で随一の映像美!

野心的な作風と冗長な展開が相対し、賛否両論が巻き起こったEP8。とは言え多用されるシンメトリーな画面構成と、赤と黒を基調とした鮮烈な色彩設計の映像美は、間違いなくシークエルのベスト。CH4のスペースバトルやCH41のライトセーバー戦、CH46の塩の惑星での最終決戦など、かつてないアクション描写にも手に汗握ります。CH31、回想シーンでルークの瞳に映り込むセーバーの光は、HDR効果が迫真の心理描写さえ実現した好例と言えるでしょう。そんな本作は35mm(一部IMAX65mm)フィルムとデジタル撮影の混成映像で、4KのDIマスターからUHD BD化されました。筆者の環境ではドルビービジョン収録の旧盤の方が、わずかに色彩のコントラストが強く、S/N感も高い印象です。今回の新盤はHDR10収録ですが、漆黒の宇宙空間に数フレーム毎に明滅する染みのようなブロックノイズ(CH12)や、スノークの玉座の赤いカーテンにジラつく階調のムラ(CH39)が散見されました。これはドルビービジョン版にはなかった現象です。特に前者はEP7や他作品でも散見されたのが非常に残念です。

  • 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
    画質評価/音質評価
  • 赤と白のコントラストが印象的な塩の惑星。スピーダーの戦闘シーンのサラウンド効果は必聴!
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

エピソード9『スカイウォーカーの夜明け』

  • 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
    ディズニー
    ●製作:2019年/米
    ●本編ディスク:約142分、シネマスコープ、HDR10
    ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語ドルビーデジタルプラス7.1ch
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

4K/HDRの見所満載! 芸術的な音響設計は絶対アトモスで!

レイはいったい何者なのか? カイロ・レン率いるファーストオーダーと、レイアたち反乱軍の決戦の行方は? 謎の復活を遂げた皇帝パルパティーンの企みとは…遂にサーガが完結します。本作もまた、35mm(一部65mm)撮影、4KのDIマスターからのUHD BD化です。先行配信されたiTunes版(2K/SDR)もハイクオリティでしたが、UHD BD版は高精細・広色域・広レンジで圧勝! CH4、次々と落ちる雷光に浮かび上がる無数の戦艦の影。CH12、カイロ・レンのヘルメットの赤い継ぎ目が鮮烈な発色。CH13、原色が豊かな、異星人たちの祭りの衣装。CH27、緻密なディテールに圧倒されるデス・スターの廃墟。CH28、荒波が轟く海上でのライトセーバー戦。レイの青、レンの赤のブレードが眩く激突する光景は、まるでEP3のアナキンVSオビ=ワン!もう全編が4K/HDRの見どころの連続です。アトモス音声もシリーズを彩ってきた音楽と効果音の集大成。CH15のスピーダーチェイス。CH28のセーバー戦、CH34〜の大艦隊戦など、その芸術的とも言える音響設計には、SWサーガが映画音響の進化の立役者だったことを改めて実感させられました。エンドクレジットのまさに「SW組曲」で、目頭が熱くなるファンも少なくないことでしょう。

  • 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
    画質評価/音質評価
  • 「シークエル」シリーズ最大の山場、レイとカイロ・レンによる海上でのライトセーバー戦を、ぜひ4K/HDRとアトモスで!
    (C) 2020 & TM Lucasfilm Ltd.

「シークエル」特典BDへの複雑な心境

シークエルのUHD BDは音質面ではパーフェクト、画質面では言いたいこともあるものの、総じて満足というところでしょうか。最後に特典映像について。EP7とEP8は旧盤BDの内容に加え、デジタル配信のみだったコンテンツも追加収録されました。EP9はデジタル特典の音楽メイキング「マエストロのフィナーレ」は惜しくも未収録ですが、42年を振り返る2時間超のドキュメンタリー「スカイウォーカーの遺産」が素晴らしい完成度です。ですが困ったことに今回のボックスの本編UHD BDにはいずれも音声解説がなく、音声解説付きの本編BDも収録されていません。さらに3Dディスクもオミットされており、音声解説や3DのファンはEP7とEP8の旧盤を手放せない上に、EP9を単品で追加購入する必要があります。何とも商売上手ですよね(苦笑)。さて次回はサーガをぐぐっと遡り、EP1~3のインプレッションをお届けします。これがまた、なかなかレビューが難しい産物でして…?

関連記事

「『スター・ウォーズ』を4K/HDRとアトモスで コンプリートBOXを徹底レビュー PART1」~EP7/8/9「シークエル」をチェック!

「『スター・ウォーズ』を4K/HDRとアトモスで コンプリートBOXを徹底レビュー PART2」~EP1/2/3「プリクエル」をチェック!

「『スター・ウォーズ』を4K/HDRとアトモスで コンプリートBOXを徹底レビュー PART3」~EP4/5/6「オリジナル」をチェック!