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レビュー

  • KEF「Blade Meta Series」「The Reference Meta Series」 KEFフラグシップ、音響技術「MAT」搭載
    音の純度を高めた「Blade」「The Reference」
    MAT搭載第12世代Uni-Qドライバーを投入

    VGP 取材・執筆 / 生形三郎
    2022年4月5日更新

    • VGP審査員
      生形三郎

MAT技術でさらに高まるUni-Qドライバーの価値

この度、英国を代表するスピーカーブランドKEFのフラグシップ「Blade」と「The Reference」が待望のリニューアルを果たしました。大きなポイントとなるのは、「LS50 Meta」に搭載されたMAT(Metamaterial Absorption Technology)技術の投入です。実機の試聴とともにアップデートの詳細について、KEFのベン・ヘイゲンズ氏に伺うことができたので、その内容とサウンドをレポートしていきます。

  • 「Blade Meta Series」
    究極のリスニング体験を叶える「点音源」のコンセプトを、まったく新しい発想で推し進めた、KEF独創のハイエンドスピーカー。個性的なデザインも含めて、オーディオ界において、もはやアートともいえる存在です。
  • 「The Reference Meta Series」
    いちはやくコンピューター解析をスピーカー設計に持ち込んだ、KEFの現在の最高峰。すべて受注生産で熟練工がハンドメイド。全数測定をおこない、厳しい基準を満たしたものだけが、誇り高き”The Reference”の称号が得られます。
  • オンラインでの取材でコメントを寄せてくださったベン・ヘイゲンズ氏。KEFグローバルにて、アシスタント・プロダクトトレーニング・マネージャーを努めています。

KEFは、世界で初めてコンピューター解析をスピーカー設計に取り入れたことで知られるほか、伝説的なBBCモニター「LS3/5a」の開発、マルチウェイスピーカーにおけるタイムアライメント理論の採用、そして音響芯を同一点に揃える同軸ユニット「Uni-Qドライバー」の実現など、世界的なスピーカー開発のトレンドをリードしてきた存在です。

Uni-Qドライバーは、1988年に初代が開発されて以降、現在まで第12世代にも亘って進化を続けている同社を代表する技術であり、その種類は優に50種類以上にも及ぶといいます。「高低のスピーカーユニットを同軸上に並べる手法は古くから存在するものの、前後方向の音響芯を一致させたのはUni-Qが史上初」ということで、位相特性やタイムアライメントを非常に高い精度で追求した技術といえます。

  • KEFの代名詞といえば同軸ユニット「Uni-Qドライバー」。従来の「Blade」には第10世代、「The Reference」には第11世代のUni-Qドライバーを搭載していましたが、いずれも「第12世代」の最新バージョンへと進化を遂げました。最も大きな変更ポイントは、主に高音域の歪みを抑える「MAT」技術の搭載。それに伴い、クロスオーバー設計なども抜本的に見直されているといいます。

そんな長年の改良を続けるUni-Qドライバーに、2020年、新たな技術が投入されました。それがLS50 Metaに初搭載されたMAT技術。これは素材ではなく構造を指すもので、ユニット背圧の消音技術です。原理としては、小さく薄い円盤の中に設けられた複雑な音響迷路構造の中でトゥイーターの背圧を吸音するもので、この限られたスペースの中で「620Hz以上の帯域を99%以上消音させる」という画期的な技術なのです。このような消音装置は、通常は長い管やロード状の構造が必要となるのが一般的で、同社でも「これまで長さ50cmの逆テーパー状の消音器を開発していたものの、620Hzの消音率は60%程度だった」といい、MAT技術を用いたこの機構がいかに画期的かわかります。

  • 「MAT(Metamaterial Absorption Technology)」
    ドライバーの裏側に、迷路のように複雑に入り組んだ、写真のようなパーツを配置することで、トゥイーターの後方から排出された音を620Hz以上の帯域で99%以上吸収して、歪みを極限まで抑える音響技術です。

タイミング的にフラグシップではなくLS50への搭載が先になりましたが、「小ささと革新性を証明するために、LS50の小さな筐体に搭載するというチャレンジを優先して、価格的にも手の届きやすいモデルで、この技術の価値を届けて、より多くの方に素晴らしいサウンドをご提供したい」という思いからだそうで、当然ながらフラグシップへの採用、開発も並行して進められていたそうです。

ここにしかない定位感を得た革新の「Blade」

さて、第12世代のさらなる進化版となる最新のUni-Qドライバーも、今回の「Blade Meta」と「The Reference Meta」では多くの刷新が行われました。アップデートについて、ベン氏は大きく次の4つのポイントを指摘。まず、磁気回路に用いているリングマグネットの形状や大きさを最適化することで、磁力の強化と磁界の均一化を図ったことが大きいといいます。これによって、ボイスコイル動作領域での応答性を大幅に改善しました。2つ目が、トゥイーターハウジングとミッドレンジコーンとのギャップ部分で生じる共振を排除したことです。これは、トゥイーターのギャップダンパーとMATとの合わせ技だといい、まさにUni-Qの泣き所であった問題を解決したのです。

  • フロア型スピーカー
    Blade One Meta
    ¥4,400,000(税込/ペア)
  • フロア型スピーカー
    Blade Two Meta
    ¥3,300,000(税込/ペア)

3つ目がスピーカーユニットとキャビネットとの相互干渉を避けるために、ボイスコイルとフレームシャーシの間に制振素材を配置した「デカップリング・シャーシ」の採用。これによって、建造物の免震構造などと同様の振動対策が施され、Uni-Qの性能がより十全に発揮されるのです。そして最後が、MAT技術の投入です。他にも、上記に合わせて振動板を支えるダンパーやエッジも両シリーズ用に新規開発されたといい、実に抜本的なアップデートと言えます。

さらに、スピーカーユニットの駆動に欠かせないクロスオーバーネットワークも、帯域分割周波数の変更のほか、構成パーツの全てを刷新。この部分は、LS50 Metaの開発の際に新たに導入されたコンピューター・シミュレーションによって、より精度の高い研究開発が進められるようになった恩恵も大きいそうです。

  • すべてのサウンドは単一の点から放たれる、ということに注目して生まれたコンセプトが「Single Apparent Source(S.A.S)」。フォースキャンセリング技術を搭載した4つのベースドライバーの中心点に同軸ユニット「Uni-Qドライバー」を配置する、ユニークな構造となっています。そのためスピーカーのまわりには、ある程度(背面の壁から50cm、側面からは100cmほど)スペースを空けて設置するのがお薦めだ。

2011年に登場したBladeは、既成概念や制約に囚われずに、一切を自由にエンジニアが設計した、いわばコンセプトモデルともいえる存在。Uni-Qドライバーの思想を徹底追求し、全方向全帯域での点音源構造を実現することが最大の特長です。ウーファーユニットを本体側面に対向配置することで、Uni-Qからの中高域とウーファーからの低域の音響芯が同一線上に形成されるとともに、左右ウーファーを同相駆動させることで互いの振動を相殺する画期的な構造となっています。

今回の刷新では、Uni-Qドライバーに加えて、クロスオーバーネットワークも大幅に改訂。特にウーファーとのクロスオーバー周波数が高めに設定され、全方向へ放射される低音域のエネルギーが大幅に均一性を増していることが注目に値します。

「Blade One Meta」を一聴して驚かされたのは、やはりその唯一的な低域の定位感。ともすれば低い位置に定位しがちなバスドラムやベースなどの低音楽器が立体的にスピーカー間センター位置に浮かび上がる様や、左右方向へとリアルな音像で定位するティンパニやコントラバスの表現は、まさにBladeにしかなし得ない再現だと感じました無論、センター中空に3次元的な音像と余韻を伴ってポッカリと浮かび上がる澄んだボーカル表現も、実に究極的な描写です。

  • COLOR
    写真上 グロス仕上げ
    写真下 マット仕上げ

中高域の透明感が際立つ「The Reference」

Referenceは創業者レイモンド・クックによって命名されたシリーズで、1973年から続く同社の顔ともいえるシリーズ。その名の通り同社の基準となる精度と性能を与えられたもので、周波数応答が全体域で基準機との誤差0.5dB以内に揃えられるとともに、インピーダンス特性も正確なマッチングが参照されるといい、KEF全製品のベンチマークたるポジションの製品となっていて、KEFの実質的なフラグシップと呼べるものです。

  • フロア型スピーカー
    「The Reference 5 Meta」
    ¥2,618,000(税込/ペア)
  • フロア型スピーカー
    「The Reference 3 Meta」
    ¥1.958,000(税込/ペア)

キャビネット内部はドライバーユニットごとに部屋が区切られており、帯域同士の干渉が起きないようコンピューター解析によって最適なブレーシングが施されています。アルミニウムと木材によるハイブリッド構造として振動を最適化するほか、後方に設けられたバスレフポートは長さを調節できるようになっており、スピーカー後方との距離に応じて最適なポート設計を得られるのも特長です。

  • ブックシェルフ型スピーカー
    「The Reference 1 Meta」
    ¥1,089,000(税込/ペア)
    ※フロアスタンドは別売

なお、新世代のReference 4および2は、必ずしもセンターとして利用するだけでなく、いずれのチャンネルにでも使用可能なほか、サウンドバランスを調整可能なEQ端子を持っていることにも注目。また、Reference 3と5、および専用スタンドに載せたReference 1は、Uni-Qドライバーが同一の高さに来るように設計されており、サラウンドを組んだときにも最適位置で用いることができます。ベン氏によるとホームシアターを構築する場合には、埋め込みスピーカーとしてUni-Q搭載「Ciシリーズ」をトップスピーカーに、「Reference 8b」や「KF92」をサブウーファーに使うのもお薦めとのことです。

  • センタースピーカー
    「The Reference 2 Meta」
    ¥880,000(税込/1本)
    ※写真上

    「The Reference 4 Meta」
    ¥1,122,000(税込/1本)
    ※写真下

    「The Reference 4 Meta」と「The Reference 2 Meta」は縦置き横置きどちらも可能。サウンドスクリーンの裏に設置する場合などに便利な、HFとLFを調整できるEQ端子も備えています。なお、ホームシアター利用時は、KEFのサブウーファー「Reference 8b」や「KC92」、Uni-Qドライバーを搭載した埋め込みスピーカーと組み合わせるのがお薦めです。

新旧Referenceのサウンドを確認すると、やはりUni-Qドライバーが担当する中高域の表現力の差は非常に大きく感じました。明らかに歪み感が減り、音色のキャラクターの透明性も増しています。歌声やピアノの音色はよりナチュラルな再現で、音像の定位の仕方も一体感が向上し、高いリアリティを獲得していることに驚かされます。元来、ハイブリッド筐体やキャビネットのブレーシングによって、同軸構造を生かした精妙な定位感や音離れのよさ、そして滲みのない低域の再現性に優れていましたが、今回の中高域方向の透明性の飛躍的な向上によって、スピーカーの完成度が一層高まっているのです。とりわけ上下方向へ澄んで広がる空間表現が実に爽快で現代的です。

  • COLOR
    写真上左から、High-Gloss White/Champagne、High-Gloss White/Blue
    写真下左から、Satin Walnut/Silver、High-Gloss Black/Grey、High-Gloss Black/Copper

今回のBladeおよびReferenceシリーズの刷新は、KEFが追求してきた理想の点音源再生を、より高度な次元で達成したものであるといえます。Uni-Qドライバーの大幅な刷新、MATによって大きな進化を遂げたフラグシップの登場を心より祝福したいです。

SPEC

[Blade One Meta]
●型式:3ウェイ・5スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、225mmアルミウーファー×4 ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:363W×1590H×540Dmm ●重量:57.2kg

[Blade Two Meta]
●型式:3ウェイ・5スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、165mmアルミウーファー×4 ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:338W×1461H×475Dmm ●重量:35.5kg

[The Reference 5 Meta]
●型式:3ウェイ・5スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、165mmアルミウーファー×4 ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:323W×1402H×467Dmm ●重量:60.2kg

[The Reference 3 Meta]
●型式:3ウェイ3スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、165mmアルミウーファー×2 ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:323W×1207H×467Dmm ●重量:51.3kg

[The Reference 1 Meta]
●型式:3ウェイ2スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、165mmアルミウーファー ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:205W×440H×422Dmm ●重量:18.2kg

[The Reference 2 Meta]
●型式:3ウェイ・3スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、165mmアルミウーファー×2 ●インピーダンス:4Ω ● 外形寸法:630W×205H×335Dmm ●重量:22.8kg

[The Reference 4 Meta]
●型式:3ウェイ・5スピーカー ●ユニット:Uni-Q(MAT搭載25mmアルミトゥイーター/125mmアルミミッド)、165mmアルミウーファー×4 ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:1090W×205H×463Dmm ●重量:45.2kg

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