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  • プロが推す!4K Ultra HDブルーレイ
    ハイクオリティソフトBest3[2022上半期]
    伊尾喜大祐が画質と音質で選んだ3タイトル

    取材・執筆 / 伊尾喜 大祐
    2022年9月30日更新

新作・旧作ともにかつてないほどの盛況ぶり

映画界の好不況が、良くも悪くも直撃してしまうのがパッケージソフト。ここ数年は世界的なパンデミックの影響からハリウッド超大作の公開延期が相次ぎ、4K UHD BDのタイトルも旧作のリマスターで何とか糊口を凌いできた感がありました。

しかし2021年も後半にさしかかるとコロナ禍も落ち着きを見せ始め、公開が延期されていた『マトリックス レザレクションズ』『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』などのブロックバスター作品もようやく上映され、4K UHD BDでも次々リリースされるようになりました。往年の名作群のリリースラッシュも続いており、2022年の4K UHD BD市場はかつてない盛り上がりを見せています。

  • 4K Ultra HDブルーレイ(UHD BD)は、4K/HDRなどの高画質フォーマットや、ドルビーアトモス、DTS:Xなどのイマーシブサウンドによって、DVDやBDでは知覚できなかった映像情報も味わうことができます。

そこで本稿では、2022年上半期に発売された4K UHD BDの中から、内容面はもちろん画質・音質でもオススメしたい作品をチョイスしてみました。新作からは、HDR再生でこそ監督の意図したビジュアルが完成する『THE BATMAN-ザ・バットマン-』。旧作リマスターからは35mmフィルムに記録された映像情報が徹底的に引き出された『レオン 完全版/オリジナル版』。そしてアニメからは、40年以上前の作品とはにわかに信じがたいクオリティの『銀河鉄道999 4Kリマスター版』をご紹介します。ぜひ秋の夜長にホームシアターでお楽しみ下さい!

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

  • 『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
    ¥8,980 円(税込)
    ワーナー・ブラザーズ
    1000815488
    ●制作:2022年/米 ●本編映像:176分、シネマスコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語DD 5.1ch

ホームシアターの暗部描写力の限界に挑む

ゴッサムシティの市長選が間近に迫ったある夜、現職市長が殺害され、街の有力者たちが次々と殺される異常事態に発展。調査に乗り出した若き日のブルース・ウェイン=バットマン。しかし殺人の度に、犯人はブルースに次なる犠牲者のヒントを送りつけ始め・・・新生『バットマン』は、これまで以上にノワールな趣きの作品となりました。

ノワール=ダークなのは映像トーンも同様で、4K UHD BDは4K/HDRのドルビービジョン収録とはいえ、コンテンツ最大輝度は413nits/平均輝度は53nitsと極めて暗い設定に。4K UHD BD版が「闇」ならばBD版は「暗がり」と言いたいほどに印象が異なります。 HDR再生で初めて闇の中のディテールが克明に描写される、まるでホームシアターシステムの暗部表現の限界に挑戦するかのような画作りです。部屋を可能な限り暗く(できれば全暗に)して本作を再生すれば、CH1で闇の中から静かに現れる漆黒のバットマンの姿に鳥肌が立つこと間違いなし。

CH1のバットサインを始め、CH3のダンスフロアのイルミネーションや、CH4のバイクのヘッドライト、CH15の巨大な爆炎など、闇とコントラストをなす光源の表現もまたリアルなものばかりです。ドルビーアトモス音響もアクションシーンを中心に大活躍ですが、全編に通奏低音のように流れる不穏で美しいテーマ曲も、いちど聞いたら忘れられないインパクト。

  • DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.
  • 『THE BATMAN-ザ・バットマン-』画質/音質傾向

『レオン 完全版/オリジナル版』

  • 『レオン 完全版/オリジナル版』
    ¥10,780(税込)
    TCエンタテインメント
    TCBD-1131
    ●制作:2022年/仏、米 ●本編映像:110分(オリジナル版)/133分(完全版)、シネマスコープ、HDR10/ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語DTS-HD MA 5.1ch

35mmフィルムに記録された情報を余さず映し出す

日本では1995年に公開されたリュック・ベッソン監督のアクションサスペンスが、劇場公開版(110分)と完全版(133分)の2バージョンを収録したBOX仕様で4K UHD BD化。筆者も劇場公開初日に衝撃を受けて以来、LD→DVD→BD→4K UHD BDへとパッケージメディアの変遷と共に追いかけ続けてきたファンのひとりです。

そんな視点から見た4K UHD BD版は、紛うことなき『レオン』パッケージ史上最高画質&最強音質! 4K/HDRのドルビービジョン映像には、35mm撮影によるきめ細かなフィルムグレインが紡ぐ映像に加えて、ダイナミックな光と影の情報までも余すことなく記録。両親を悪徳警官に殺害された少女と、殺し屋の中年男のプラトニックな関係のドラマが、驚くほど温かく描かれていたことを再確認させてくれます。

劇場公開版のCH7、助けを求めたマチルダにレオンが部屋のドアを開けるカットでは、正面から彼女を包み込む柔らかな光がより印象深いものに。ふたりの生気に満ちた肌、衣服、安アパートの構造物に至るまでも、ディテールも質感も非常にリッチ。CH12の屋上の場面では、マンハッタンの高層建築群が目が醒めるような鮮鋭感で立体的に描かれます。ドルビーアトモス化されたサウンドはエリック・セラの楽曲が浮遊感たっぷり。CH8など、要所で展開する銃撃戦もド迫力!

  • ©️ 1994 GAUMONT
  • 『レオン 完全版/オリジナル版』画質/音質傾向

『銀河鉄道999 4Kリマスター版』

  • 『銀河鉄道999 4Kリマスター版』
    ¥9,999(税込)
    東映
    USTD20581
    ●制作:1978年/日 ●本編映像:128分、16:9、HDR10 ●本編音声:日本語ドルビーアトモス

HDRによる進化と色域の深化で名作が蘇る

母親を機械伯爵に殺害された少年・鉄郎は、謎の美女メーテルから銀河超特急999号の乗車パスをもらい、ともに地球を旅立つ…。1979年に公開されるや国民的大ヒットになった超大作が、公開から43年を経て4K UHD BD化です。5Kスキャン&4K HDRリマスターで甦った映像には2つの「シンカ」を実感します。

ひとつ目はHDR化による「進化」。HDR化による明暗のダイナミックレンジの拡大により、999号の黒い機体のディテール、ヘッドランプの輝き、飛び交う光線など、光の表現が非常に力強く進化しました。透過光によるダイレクトな光はもちろん、画材で描かれた大都市の高層ビル群の窓明かりなどもきちんと発光して見えるから驚きです。ふたつ目は広色域化による発色の「深化」です。鉄郎やメーテルの肌や衣服、999号の内装、食堂車のウェイトレス、ガラスのクレアの身体の透明感、そしてキャプテン・ハーロックやクイーン・エメラルダスの戦艦の派手な外装など、豊かな発色はセル画そのものを目の当たりにするかのよう。

ドルビーアトモス音声はサラウンドもトップチャンネルも大胆に活用された立体的な仕上がりで、劇場公開時はモノラルだったのが信じられないほど! 音場高く響く999号の汽笛、チャンネル間を駆け抜ける動輪の回転音、光線が飛び交う銃撃戦、機械化母星を総攻撃するクライマックスなど、その聴きどころも枚挙に暇がありません。ぜひ最新のオーディオビジュアル機器で、日本アニメ史に残るこの名作と再会して下さい!

  • ©️ 松本零士/零時社・東映アニメーション
  • 『銀河鉄道999 4Kリマスター版』画質/音質傾向