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ガイド

  • 連載「ハウスメーカーが考える いえなかホビー」 スマートホームの旗振り役に
    IoTで暮らしはより面白くなる
    Vol.5「三菱地所」のいえなかホビー

    取材・執筆 / 塚田真由子(ホームシアターファイルPLUS編集部)
    2022年10月7日更新

総合デベロッパーがつくったスマートホームサービス

声をかけるだけでホームシアターを上映できたり、帰宅するとともに照明が点いて音楽が再生されたり…。そんなSF映画のような世界は、家電機器などがインターネットにつながるIoTによって既に現実のものとなっていますが、日本ではあまり普及しているとはいえない状況が続いています。

そんな現状を打破すべく、総合デベロッパーである三菱地所が立ち上がりました。住宅向け総合スマートホームサービス「HOMETACT (ホームタクト)」を開発。HOMETACTとは、特定のブランドやメーカーに依存せず、幅広いIoT機器、住設機器を連携させ、オリジナルスマホアプリを使って制御できるサービスのことです。 三菱地所レジデンスが開発する賃貸マンション「ザ・パークハビオ」シリーズの麻布十番、小石川、目黒桜邸に導入済みのほか、今後は三菱地所グループに限らない、幅広い住宅、マンションへの導入を目指しています。

そこで今回は、HOMETACTを体感できる「HOMETACT Labs赤坂」(東京都港区)を訪れ、HOMETACTのプロジェクトリーダーである同社の橘 嘉宏さんに、IoTとホームシアターの未来についてお話を伺いました。

  • 三菱地所株式会社
    街に住む人、働く人、訪れる人。株式会社三菱地所は、さまざまな空間やサービスに求められる本質的な価値に思いを馳せ、真に価値ある社会を実現するためにチャレンジを続けている総合デベロッパーです。グループ企業の事業領域は、丸の内に代表されるオフィスや商業施設の開発・賃貸・運営管理、住宅の開発・分譲、さらには不動産仲介や設計監理など多岐に渡ります。
  • ●お話を伺った方
    住宅業務企画部
    新事業・DXユニット 主事
    橘 嘉宏さん
    2008年三菱地所株式会社入社。用地業務やリノベーション事業立ち上げなどを経験後、住宅事業のグループバリューチェーン推進業務に従事。以後、DX施策企画と新事業立上げを担当しています。
    「HOMETACT」プロジェクトリーダー。
  • HOMETACTは、家を意味する「HOME」と、機転、指揮を意味する「TACT」を組み合わせたもの。自由自在な家はもちろん、家ナカを指揮するサービスという意味も込められています。その最大の特長は、特定のブランドやメーカーに依存せず、さまざまなIoT機器・住設機器との連携が可能なこと。スマートスピーカーや赤外線コントローラーなどのIoT機器はもちろん、スマートロックや給湯器、スイッチ、カーテンまで幅広い住設機器に対応。対応機器は順次拡大予定だといいます。

次回はこちら>>>Vol.6「LIFE LABEL」のいえなかホビー「ライフレーベルは機能より“こうしたい”を優先する住宅 “好き”のある家は最強エンタメ」

前回はこちら>>>Vol.4「スウェーデンハウス」のいえなかホビー「快適の土台は北欧のものづくり 世代を超えて住み継げる家を!」

囲い込みを手放してオープンな仕組みに

― 不動産デベロッパーである三菱地所が独自のスマートホームサービスを立ち上げた背景についてお聞かせください。

橘氏「日本でスマートホームが普及していない背景に、三つの障壁があると考えています。まず、国内の住宅向けIoT機器は通信仕様や操作アプリが製品ごとに異なり、一括で操作できないという問題があります。二つ目は、お客様自身に設置、設定をお願いするパターンがほとんどという点。加えて、相談や緊急対応といったサポート体制が不十分であることも普及の障壁となっていると考えています。これらの問題を解決するため、HOMETACTでは、特定のブランドやメーカーに依存しない、幅広いIoT機器・住設機器との自由な連携を実現しました。」

  • スマートデバイスを一括で操作できる独自のアプリ「HOMETACT」を開発。ユーザーは、エントランスや自室のスマートロック、給湯コントローラー、スマートライト、スマートカーテン、ロボット掃除機やWi-Fiスピーカーなど、対応するデバイスをアプリ上から、一括で操作・管理できます。特定のブランド・メーカーに依存することのないため、幅広い機器との連携が可能です。
  • 「HOMETACT(ホームタクト)」のスマホアプリ画面。直感的にわかりやすいUIデザインを採用しています。このアプリでは、自分の暮らしに合わせて、「シーン」「マイルール」を設定することができます。たとえば、「おはよう」「おやすみ」をタッチ、もしくはスマートスピーカーなどに話しかけるだけで、複数の設備のオン/オフを一斉に操作できます。

橘氏「自社でつくったアプリを使って、自社の機器に接続してほしいという想いから、API(ソフトウェアの機能を共有する仕組みのこと)を公開しないというメーカーもありますが、我々はスマートホームを日本に根付かせたいという想いから、API連携によって各メーカーのデバイスを束ねる作業を地道に行ってきました。メーカーの協力が得られれば、Wi-Fiを経由してインターネットに繋がっているデバイスならば、オープンに繋がっている仕組みになっています。いまもさまざまなメーカーさんと交渉を進めており、連携する機器を今後どんどん増やしていく予定です。」

  • HOMETACTは、本誌お馴染みのオーディオブランド「Sonos」とも連携しています。HOMETACT Labs赤坂には、4基のミッドウーファーと1基のトゥイーターを搭載するサウンドバー「Sonos Beam」に加え、ワイヤレススピーカー「Sonos One」2基を組み合わせ、5.0chサラウンド構成を楽しめるようにしています。
  • フランス生まれのスマートカーテンブランド「Somfy(ソムフィ)」にも対応。さまざまなシーンに合わせて、カーテンが自動で開閉します。

― 特定のメーカーによる囲い込みではなく、さまざまなメーカーが横に繋がれる仕組みをつくったのですね。ほかの障壁はどう解決なさったのですか?

橘氏「HOMETACTアプリやスマートスピーカーで、エアコンやテレビ、照明、カーテンといった 数メーカーのIoT機器をコントロールできるようにしました。また、各メーカーのアプリで提供している設定をアプリで省いたのも特長です。専用アプリではより細かなカスタマイズができますが、HOMETACTは使われるIoTとするためにあえてシンプルな設計にしています。
さらに、お客様が安心して利用できるよう、導入からアフターケアまでのサポートサービスを充実させました。アプリの設定はHOMETACTのサービスに含まれていて、利用開始後のトラブル等で困った方には専用コールセンターも設けています。これらのサポートサービスを運営するのにあたり、ビックカメラさんやソフマップさん、ラネットさんの協力を得ることができました。」

スマートホームによって暮らしはもっと面白くなる

― 橘さんがここまでしてスマートホームを普及させようとする想いの原動力はどこにあるのでしょうか?

橘氏「2019年、スマートホーム先進国であるアメリカを訪れた際、多くのIoTデバイスが世に出ていることに愕然としました。スマートスイッチひとつを取っても、スマホのようにさまざまなものと繋がっていて、しかも見守りまでしてくれるのです。
それまでは日本の住空間はこれ以上進化しないのではないかと危惧していたのですが、自分の住空間はもっと面白くすることができる、楽しみ方の幅も広げられるというのを知る契機になりました。
ホームシアターに限っていうと、アメリカでスマートホームオーディオ業界をリードするブランド「Sonos」のWi-Fiスピーカーやサウンドバーの先進性にも驚きました。何といっても、部屋の音響を測定して音場を補正できるんですからね。有線でなくても、どんな場所にでもスピーカーを置けるというのは、目から鱗でした。私自身、SonosのサウンドバーやWi-Fiスピーカーを早速導入し、ストリーミングライブを観る時に活用しています。それらにスマート照明「Philips Hue」を組み合わせると、映像に合わせて照明の色が変わるので、まるでライブ会場にいるかのような感覚を味わえるんですよ。」

  • スマホアプリの「リラックス」シーンをタッチしたところ。Philips Hueの色味は青みがかった白色から、温かみのある電球色に変わり、グッと落ち着いた雰囲気に変わりました。また、Sonosのスピーカーからは、眠りにつく前やリフレッシュタイムに最適なBGMが流れ出しました。
  • HOMETACT Labs赤坂には、さまざまな場所にスマート照明「Philips Hue」が設置されています。スタンドライトには「フルカラー シングルランプ」が、カーテンボックスの上には「ライトリボン プラス」が仕込まれており、さまざまなシーンに応じて部屋を彩ってくれます。
  • 「Philips Hue Sync Box」を組み合わせると、Philips Hueシリーズの照明を、テレビの映像や音楽と連動させることができます。写真のようにテレビの映像が紫色だと、Philips Hueも紫色にチェンジします。

橘氏「スマートホームは必ずしも暮らしに必要なものではありませんが、導入すると暮らしがインプルーブされる感覚があります。私自身がかつて味わったように、その感覚をぜひ多くの方に味わっていただきたいのです。そのために、私たち三菱地所が旗を振り、メーカーや不動産会社各社と地道に連携していくことが大切だと思っています。」

― HOMETACTが吹き込んだ新風の行方に期待が高まるばかりですね。本日はありがとうございました。

  • スマホアプリをタッチする、もしくはスマートディスプレイにひと声かけるだけで、家電や照明が自動で動いたり、オフになったりします。
  • 声をかける前の様子。照明は白っぽく青みががった明るい色で、日中にぴったりな色になっています。
  • 「パーティータイム」とひと声かけるだけで、自動でカーテンが閉じられ、スマート照明「Philips Hue」がカラフルな色にチェンジ。気分を高めるBGMも流れ出し、まるでパーティー会場のようです。

HOMETACT Labs赤坂

  • HOMETACTが連携される商品のフルパッケージを搭載。HOMETACTのある暮らしを体感できます。