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レビュー

  • ソニー6年ぶりのAVアンプ「STR-AN1000」をレビュー。自宅で試してみた! リアスピーカーがワイヤレスに

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2023年4月7日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

  • 7.1ch AVアンプ
    SONY「STR-AN1000
    ¥OPEN(直販サイト価格¥121,000/税込)

ホームシアターといえば、AVアンプを活用してサラウンドを楽しむスタイルが代表的。とはいえ実際にリビングに設置するとなると、機材の配置やケーブルの配線が面倒で、あきらめてしまうユーザーも多いのではないでしょうか? ソニーのAVアンプ「STR-AN1000」は、新しい立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」や独自の音場補正機能「D.C.A.C. IX」(Digital Cinema Auto Calibration IX)のほか、リアスピーカーをワイヤレスにできる機能も搭載していて、お薦めのアイテムです。そこでホームシアターコンシェルジュ・遠藤義人さんに、自宅リビングで使い勝手を検証、レビューしてもらいました。

STEP1 まずはステレオ再生を試してみる

ソニーから約6年ぶりにリリースされたAVアンプ「STR-AN1000」。どんなモデルか聴いてみたいと思っていたら、編集部から「エンドーさんちのリビングで現実的なホームシアターシステムの構築とかやってみていただけませんか?」と甘〜いオファーが。そこで、拙宅の応接間に視聴機一式をお預かりし、実際のリビングではどう組み合わせるのが理想的かを探ってみることとしました。

  • テストに使用した部屋は、約10畳の地下室です。

まず、リビングボードにソニーの有機ELテレビ「XRJ-55A95K」を設置しました。普段、専用室でもリビングでもプロジェクターを使っている筆者にとって、大画面テレビはとても新鮮で、パネル全体から「面」で放たれるパワフルな音にテレビサウンドの進化を感じました。「LSPX-S3」といったグラスサウンドスピーカーのような、ちょっと独特なクールなサウンドで、低音を欲張らなければ、バランスのいいパッケージだと思いました。

そこに、ソニーのAVアンプ「STR-AN1000」を投入します。どれだけサウンドをグレードアップできるでしょうか?

まずは、ステレオ再生から試してみます。筆者はホームシアターのご相談があった場合、テレビやプロジェクターと接続するためのHDMI入力が付いているアンプで、2本のスピーカーをしっかり鳴らすご提案をしています。なぜなら、テレビ放送のほとんどは2chだからです。

  • ソニー「SS-CS5」(¥30,800/ペア・税込)

今回はリビングボード周りをコンパクトにまとめたいので、ソニーのブックシェルフスピーカー「SS-CS5」を選びました。芯のあるしっかりした定位感があるサウンドで、これがペアで¥30,800(税込)とは驚きです。

実際に「STR-AN1000」で鳴らしてみると、Hi-Fiオーディオの折り目正しい香りがしつつも、ハイレゾを殊更に意識させるようなキツさは皆無。ソニーの歴代AVアンプ「TA-DA5400ES」や「STR-DN1050」とも、プリメインアンプ「TA-A1ES」とも異なる、どちらかというと80〜90年代のESシリーズの系統に属するような落ち着きあるトーンで聴き飽きません。

AVアンプは2chの音楽から映画、スポーツ、ゲームまでさまざまなコンテンツを扱うこともあり、フラットな音作りを求められることも多いですが、それを過不足なくカバーしていると感じました。

  • STR-AN1000にはプリアンプ専用IC「CXD90035」を搭載。アンプの最大立ち上がり速度であるスルーレートを従来モデルの2倍以上に高めています。ハイレゾ音源など高速な応答性が求められるコンテンツも、高域の硬さやゆがみがなくエネルギー感にあふれた抜けのよい音を実現できる、とソニーはアピールしています。
  • STR-AN1000のスピーカー端子は、AVアンプとしては一般的なサイズ。LINNのスピーカーケーブル「K10」(¥1,100/m・税込)の太さでギリギリのサイズでした。

STEP2 ワイヤレスで、サラウンドとサブウーファーを足す

続いて、ワイヤレスのサラウンドとサブウーファーを足して4.1chにチャレンジしてみました。

一般家庭のリビングでサラウンド構築をためらう大きな理由のひとつが、リアスピーカーやサブウーファーまでの配線です。ソニーはそれを少しでも解消しようと、ワイヤレス接続できるサラウンドスピーカーとサブウーファーを用意しています。これまでは一部のソニー製サウンドバーとの組み合わせに対応するオプションでしたが、これらを新しいAVアンプ「STR-AN1000」では活用することができます。

  • リアスピーカー
    SONY「SA-RS3S
    ¥OPEN(直販サイト価格¥60,500/ペア・税込)
  • サブウーファー
    SONY「SA-SW3
    ¥OPEN(直販サイト価格¥52,800/税込)

今回は、インテリアとの親和性を求める観点から、ソニーのラインアップでもよりコンパクトな「SA-RS3S」と「SA-SW3」をチョイスしました。

ワイヤレスとはいうものの、配線しなくていいのは音声信号線だけ。電源ケーブルの接続は必要なのをお忘れなく。また、SA-RS3Sは左右が指定されているので、それに従って背後の本棚に設置する必要があることにも要注意です。

独特なのが、自動音場補正の途中で、距離を自分で“実測して”入力する工程があること。しかも、各スピーカーから視聴位置までの距離ではなく「スクリーンからの距離」「試聴位置の高さ」「天井の高さ」「スクリーンの高さ」を求められます。続くマイクを使った測定でスピーカーからの距離も自動設定してくれるのですが、一般的な「マイクを本体に差せばあとは全自動…」ではないんです。

なぜなのか? このときは首をかしげましたが、この実測しなければわからない“部屋や画面と視聴位置との距離”こそが「マイクでは測れないけど、いまのソニーが重視している世界観」の前提なんだということは、のちにわかります。

サラウンドを追加した4.1ch構成になると、作り込まれた劇場サウンドや、音楽ライブの開放感など、テレビあるいは2chステレオでは味わえない世界観に突入してきます。たとえば香港映画『インファナル・アフェア無間序曲』冒頭、カットを変えながらも聴こえてくる壁掛け時計の音のように、シリーズ全体の“狙い”がわかるようになったりして、より一層作品を楽しめるのです。

  • 各スピーカーの緑のランプが点滅している間に、AVアンプのホーム画面「設定」>「スピーカー設定」>「ワイヤレススピーカー設定」で、SA-RS3SとSA-SW3をリンクさせます。続いて「設定」>「自動音場補正」を進んでいくと「スピーカー無線接続最適化」が1分ほど施されますので、“接続済み”となるのを確認。
  • 「スクリーンからの距離」=1.57m、「試聴位置の高さ」=0.95m、「天井の高さ」=2.30m、「スクリーンの高さ」=1.04mを実測して入力。1センチ単位まで要求されるので、できればレーザーセッターのご準備を。通販サイトなどで手に入る安いモノで十分です。
  • 「プリセット1」に入力値を保存し、その後ようやくマイクを使った測定に。指示に従い付属のスタンド上下2箇所で順次測定すると、約1分ほどで完了。
  • サブウーファーが入ると機器の存在感が増すものですが、SA-SW3は比較的スリムで縦型なので大助かり。

STEP3 センターとイネーブルドを足して「360SSM」にチャレンジ

次にいよいよ、フル装備へ挑戦です。センタースピーカーとイネーブルドスピーカーを追加してみましょう。センタースピーカーはソニー「SS-CS8」、イネーブルドは「SS-CSE」をチョイスしました。

  • センタースピーカー「SS-CS8」(¥16,500/税込)とイネーブルドスピーカー「SS-CSE」(¥35,200/ペア・税込)を足して5.1.2chへ挑戦。

さっそく聴いてみると、イネーブルドスピーカーが加わったことで、ぱあっと縦方向の臨場感が増したのは◎。ソニー独自の立体音響が楽しめる「360 Spatial Sound Mapping(360SSM)」をON/OFFして聴きくらべても「ON」のほうが断然楽しめます。あざとさはなく、自然な表現です。

それがひときわ顕著なのは音楽ライブです。テレビアプリからAmazon Prime Video『DREAMS COME TRUE Prime Video Show』や『This Is It』を楽しみましたが、多くのユーザーが「360SSM=ONがいい」というに違いありません。ちなみにSSM360のON/OFFは、リモコンボタンでもトグルでかんたんに切り替え可能です。

もっとも、この構成ではセンタースピーカーが勝ちすぎました。センタースピーカーSS-CS8は背面にバスレフポートがあり、テレビ画面で盛大に音が反射しているようです。かといって、このテレビとテレビ台のコンビでは他に気の利いた設置のしようがありません。センターとの距離も近すぎるこの環境で、とくにユニット横並びのセンタースピーカーはかなり使いこなしが難しいことを改めて痛感しました。

  • さきほどと同じように「距離」を求められますが、前回測った数値が予め入っているのでそのまま進み、こんどは「プリセット2」に保存。マイクによる測定へ進みます。
  • 「360 Spatial Sound Mapping(360SSM)」はソニー独自の立体音響技術。距離、音圧レベル、周波数特性に角度も加え、スピーカー配置を3次元で精密に測定する自動音場補正「D.C.A.C. IX」と組み合わせることで、スピーカーの設置状況に応じて最適なファントムスピーカーを生成、より広大な音場空間を再現できます。
  • さらに、精度の高いファントム定位によって実現する自動位相マッチング機能「A.P.M.」による「スピーカーリロケーション」では、サラウンドスピーカーの左右の位置がずれていたり、部屋の4隅にスピーカーを配置したような場合でも、サラウンド再生の理想とされる位置と角度にスピーカー音源をファントムで再配置。理想的な音場表現を楽しめます。

STEP4 テレビ内蔵スピーカーを活用「アコースティックセンターシンク」

最後に、ソニー独自の「アコースティックセンターシンク」機能を使ってみましょう。

  • 「アコースティックセンターシンク」は、テレビをセンタースピーカーの一部として駆動、映像と音の位置を一致させることで定位感が向上するというブランドの独自技術。センタースピーカーを外して、音を確かめてみます。

ここで問題発生! AVアンプSTR-AN1000とテレビのS-センタースピーカー入力端子は、別売のいわゆるステレオミニプラグで接続するのですが、拙宅の手持ちのものでは長さが足りず、急遽、駅前の家電量販店まで買いに走りました…。

繋げてみると、無事にステレオミニプラグの接続を完了すると「リスナーレベルスピーカー」に、さっきまでなかった「“テレビセンタースピーカー:あり”5.1」という項目が出てきました!

実際に音を聴いてみると、存在感ありありの“センター感”がなくなり、むしろ最初にテレビだけで聴いたときに感じた“面”による新鮮な音像が得られます。対応するブラビアをお持ちの方はぜひ試していただきたいです。

一方でSTR-AN1000による一定の補正はかけているのだろうなと思わせるものの、テレビ画面のガラスが本来持つ素材感と、フロントスピーカーの深い包容力の違いは時折みられます。とくに音が水平にパンニングしていくときなど気になる方は気になるだろうなとは感じました。アコースティックセンターをOFFにすればいいだけですので損することはありません。ブラビアユーザーはぜひトライしてみることをお薦めします。

  • 「設定」>「自動音場補正」を進み「テレビセンタースピーカー」でS-センタースピーカー入力端子を「設定する」を選択。
  • Sーセンター端子同士をステレオミニプラグで繋ぎさえすれば、STR-AN1000のスピーカー出力端子やテレビのスピーカー入力端子には何も繋ぐ必要はありません。なお、取扱説明書によるとSTR-AN1000側も「HDMI OUT A」に接続せよとあるので注意。
  • あとは「ハイト/オーバーヘッドスピーカー」>「FD」を選べば、「テレビセンター」を使った「5.1.2」ch構成に。

2chからステップアップしていくのもお薦め

ソニーの新しいAVアンプ「STR-AN1000」は、サウンドバーからの次の一歩を考えているユーザーにとって、魅力的な選択肢です。フロント2本+ワイヤレスサラウンド2本+ワイヤレスサブウーファー+イネーブルド2本でのテレビシアター、いかがでしょうか? もちろんブラビアユーザーなら、ぜひ「アコースティックセンターシンク」も試していただきたいところ。¥1000くらいのステレオミニケーブル1本あれば試せますから。

この新しいソニーのAVアンプが紡ぎ出すのは、もともとの部屋の響きだけでは得られない“画面との一体感”と“360度サウンド”。これがあるだけで、日々リビングでエンタメを楽しむひとときを豊かにしてくれるハズです。2chから一歩一歩ステップアップしながら、部屋の壁が取り払われたかのような開放感あふれるホームシアターの世界に飛び込みましょう。

  • HDMIで接続すれば、大半の動作がブラビアのリモコン(写真右)で操作できますが、音場切り替えを頻繁に試すならAVアンプのリモコン(写真中央)がベンリ。UHD BDプレーヤー「UBP-X800M2」のリモコン(写真左)と同じサイズで、ソニーファンにはややこしいかも?!
  • STR-AN1000は「Chromecast built-in」「Spotify Connect」「Apple AirPlay 2」に加え、新たに「works with SONOS」「Roon Tested」のネットワーク機能に対応しました。「Works with the Googleアシスタント」にも対応しているので、ボイスコントロールも設定できます。

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SPEC

  • AVアンプ「STR-AN1000」の前面/背面。

SPEC
●パワーアンプch数:7.1ch ●定格出力:100W+100W(6Ω、20-20kHz、2ch駆動時)●実用最大出力:165W(6Ω、1kHz、1ch駆動)●周波数特性:10Hz-100kHz(+0.5、-2dB)●HDMI対応サウンドフォーマット: Dolby Atmos、DTS:X、DTS Neural:X、IMAX Enhanced、MPEG-4 AAC、MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)●対応サンプリング周波数/量子化bit数:PCM最大192kHz/24bit、DSD最大11.2MHz/1bit ●主な入力端子:HDMI×6、光デジタル×1、同軸デジタル×1、アナログ音声(RCA)×4、USB-A×1、LAN×1ほか ●主な出力端子:HDMI×2、アナログ音声×9、サブウーファープリアウト×2ほか ●消費電力(待機時):240W(0.5W)●外形寸法:430W×156H×331Dmm ●質量:10.3kg

REFERENCE

  • 有機ELテレビ
    SONY「XRJ-55A95K
    ¥OPEN(直販サイト価格¥473,000/税込)
  • 3ウェイ・スピーカーシステム
    SONY「SS-CS5
    ¥30,800(ペア/税込)
  • リアスピーカー
    SONY「SA-RS3S
    ¥OPEN(直販サイト価格¥60,500/ペア・税込)
  • サブウーファー
    SONY「SA-SW3
    ¥OPEN(直販サイト価格¥52,800/税込)
  • イネーブルドスピーカー
    SONY「SS-CSE
    ¥35,200(ペア/税込)
  • センタースピーカー
    SONY「SS-CS8
    ¥16,500(税込)