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レビュー

  • SONY「HT-AX7」 ソニーのポータブルシアターシステム「HT-AX7」
    立体音響をこっそりと楽しむ
    スマホやタブレットにサラウンドを!

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2023年9月6日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

映画館や劇場のように、ひとつの作品をみんなで大画面で共有するのがホームシアターの醍醐味。とはいえ、映画鑑賞とは、ひとりひとりが自らの人生と照らし合わせて観ることで、様々な解釈があっていいはずのものです。この作品は家族に隠れてこっそりと…なんて気分に寄り添ってくれる「ポータブルシアターシステム」が、ソニーから登場しました。スマホやタブレットはもちろん、モバイルプロジェクターとともに屋根裏部屋あたりに持ち込んで、「モバイルシアター」はいかがでしょう? サウンドバーかBluetoothスピーカーしかなかったライトなホームシアターの世界に一石を投じる意欲的初号機(と個人的には評価したい)HT-AX7について紹介します。

サウンドバーとは根本的に違う!?

「手軽に持ち運び、好きな場所が立体音響のシアター空間になる」とのキャッチコピー。おそらく、スマホやタブレットと一緒に「持ち運べるサウンドバー」で、「小型ワイヤレスリアスピーカーを駆使した360 Spatial Sound Mapping」も楽しめるもの、というのがコンセプトなのでしょう。

そんな企画意図から、

(1)フロント2chと、リア2chのスピーカーは、電源も音声信号もすべてワイヤレス伝送
(2)音源はステレオ2ch
(3)それを360 Spatial Sound Mappingに再構成して再生する(サウンドフィールドのエフェクトをオン時)

という仕組みの商品を導いています。

  • SONY
    ポータブルシアターシステム
    HT-AX7
    ¥OPEN(実売価格¥77,000/税込)
  • HT-AX7にはブランド独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」(サンロクマル スペーシャル サウンド マッピング)が搭載されています。3つのリアルスピーカーから出る音の波面を合成し、複数のファントムスピーカー(仮想音源)を生成することで、視聴者のまわりに立体的な音場を創り出すといいます。

実際にソニーの視聴室で体験する機会を得ました。

「モバイル」という割には、幅30cmほど、高さ13.3cmほどの現物は、ニュースリリースの写真から受けた印象より存在感があるなあというのが第一印象。

もっとも、今回ソニーが初採用したというペットボトル由来のグレーのファブリックと、オブジェのように円筒を繋いだデザインが優しくシンプルで、使い方もすぐにイメージできるスタイルは、初号機のイメージとして強烈で、好感が持てます。

蓋を外すようにふたつのサラウンドスピーカーを両手でとりあげ、視聴位置の背面のソファ背もたれへ。フロント2chスピーカーを内蔵した筐体とおおよそ半径1m強の円を描くように配置すれば、設置完了です。距離や音量など、細かい設定が不要なのもいいですね。

  • フロントスピーカー上部に手のひらサイズのリアスピーカーを2つ搭載した、新形状の3in1ボディ。リアスピーカーは完全ワイヤレスなので自由度の高いレイアウトが可能です。

セリフもしっかり聞こえる中低域&自然なサウンド感

タブレットで映画を観ながら、Bluetooth接続して「サウンドフィールド エフェクトON」のサウンドを聴いてみます。

「360 Spatial Sound Mapping」の搭載技術はホームシアターサラウンドシステムHT-A9と同等とのことですが、Bluetoothの2ch信号をリアルタイムで処理してサラウンドスピーカーに伝送している割には、映像に対する遅延をあまり感じさせず立派だと思いました。

音質も、よくあるパッシブ型サテライトスピーカーセットよりも中低域がしっかりして樹脂っぽい箱鳴りもないオーディオクオリティ。包まれるようなサラウンド感も自然に得られ、なによりセリフがきちんと入ってくるのがいい。

人は映画に集中すると、自然と体が前のめりになります。するとこのシステムでは前からの音が近く・大きくなり、セリフが強調されるんです。カメラが引いて映像が開けてくると、自然とソファの背もたれによりかかってゆったりしますよね。そうすると、自然と後ろに置いたサラウンドスピーカーに包まれ、広い音場が得られます。実に理にかなった、実践的な仕掛けだと思いました。

  • 「サウンドフィールド エフェクトON」
    サウンドフィールドのエフェクトをオンにし、自分の周りに半径1m強の円を描くようにサラウンドスピーカーを設置すれば、ソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」の音をパーソナルな空間で楽しむことができます。
  • タブレットやスマートホンなどのモバイル機器でコンテンツを鑑賞する際にも、HT-AX7と繋げることで立体音響を楽しむことができます。

ちなみに「サウンドフィールド エフェクトOFF」は、いわゆるパーティーモード。位相の問題を鑑みて、オールチャンネルステレオではなくあえてリアスピーカーをモノラルで再生、広い部屋を音で満たします。

本モデルで重要なのは、マルチポイント接続対応。たとえばプロジェクターとBluetooth接続しながら、スマホアプリで音量・低音レベル調整・サウンドフィールド切り替えといった操作が可能です。リモコンが付属しないこともあり、イヤホンやヘッドホン以上に便利かつ必要な機能です。

  • 「サウンドフィールド エフェクトOFF」
    エフェクトをオフにして部屋を囲うようにスピーカーを配置して音楽を再生すると、3基のスピーカーからの音がBGMのように部屋中を満たします。

屋根裏隠れ家シアターに使いたい

このHT-AX7、個人的には、近年爆発的にニーズが増している10万円前後のモバイルプロジェクターと組み合わせて屋根裏部屋あたりで観たら楽しそうだなと妄想しました。その場合、映像に対する音声の遅延があるか気にはなるものの、機会があればぜひ試してみたいものです。

価格はオープンで、実売77,000円前後。この「ポータブルシアターシステム」の初号機、HT-AX7がヒットして、5万円のAX5、3万円のAX3…とシリーズ化されることを期待しています。

  • フロントスピーカーを覆っているグリル。フロントスピーカーは2chフルレンジユニットの両サイドにパッシブラジエーターを配置しており、裏側にも内圧を逃がすための穴が空いているのがわかる
  • 筐体サイズありきで、効率よく音圧を得られるユニットを探求。偏心楕円構造にしてサイズを拡大したフロント2chスピーカーと基盤
  • リアスピーカーも微妙におにぎり型の偏心構造。コーン型のユニットとバッフルが浅く、上向きに置いても広い指向性が得られる工夫が施されている
  • フロント2chスピーカーと各サラウンドスピーカーにバッテリーと基板が
  • フロント2chスピーカー天板の凸部が、リアスピーカーの凹部とカチッとマグネットキャッチで嵌まる仕組み
  • 本体に再生ファブリック、再生プラスチックを使うとともに、梱包もリサイクル紙を用いてサスティナブルに

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