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  • 『すずめの戸締まり』も徹底解説! 新海誠作品の4K Ultra HD ブルーレイ
    画質と音質のチェックポイントは?
    『君の名は。』『天気の子』もあわせてプロが見どころを解説します!

    取材・執筆 / 伊尾喜 大祐
    2023年11月2日更新

3作品の4K UHDブルーレイの見どころを一挙にご紹介!

2016年に『君の名は。』、2019年に『天気の子』で国民的大ヒットを放った新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』。2022年に公開されるや息の長い大ヒットを記録し、公開から1年が過ぎた現在も「おかえり上映」が行われるほどの人気作になりました。

そんな本作のパッケージソフトが9月20日(水)にリリース! 4K Ultra HDブルーレイ(UHD BD)収録のBlu-rayコレクターズ・エディション5枚組(初回限定生産)、Blu-ray1枚組のBDスタンダード・エディション、DVD1枚組のDVDスタンダード・エディションのラインアップで発売されました。ホームシアターファンの皆さんが注目するのは、やはりUHD BDのクオリティではないでしょうか。ということでこのコラムでは、『君の名は。』『天気の子』もあわせて、UHD BD化された3作品の見どころをご紹介したいと思います。

  • 今や国民的アニメーション作家となった新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』の4K Ultra HDブルーレイがリリースされました。新海作品の魅力はなんと言っても圧倒的な映像美。『君の名は。』と『天気の子』も合わせて、伊尾喜大祐氏に見どころを解説していただきます!(編集部)
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

『君の名は。』

  • 「君の名は。 コレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組(初回生産限定)」
    好評発売中
    13,200円(税抜価格 12,000円)
    発売・販売元:東宝
    ©2016「君の名は。」製作委員会

豊かな自然と煌びやか大都会、彗星舞う星空が透明感あふれる色彩で描かれる

日本映画UHD BDの黎明期である2017年にリリースされた、新海監督作品初の4Kパッケージソフトです。ちなみに筆者も特典映像のビジュアルコメンタリーをプロデュースしています。豊かな自然に囲まれた糸守町と煌びやかな大都会・東京、そして彗星が舞う星空が、新海監督らしい透明感あふれる色彩で描かれます。そのHDR10収録映像はコンテンツ最大輝度(MaxCLL)は777nits/平均輝度(MaxFALL)は370nits。無理に輝度ピークを上げることなくあくまでSDR映像をベースに、要所でHDR効果を活用した画作りになっています。

チャプター7、三葉たちの巫女装束の輝き。チャプター12、RADWIMPS「前前前世」をBGMにカットバックする、東京の瀧と糸守の三葉の対照的な生活。タイムラプスをアニメで再現した見事なカットも必見です。チャプター25、「カタワレ時」に山頂でとうとう出会う瀧と三葉が、日没の陽光の中でシルエット気味に描写されます。チャプター26、町を救うべく奔走する三葉たち。縁日の灯り、原付のヘッドライト、発電所の爆発、そして落下する彗星…!

  • ●本編ディスク:本編107分、ビスタ、HDR10
    ●本編音声:日本語5.1ch DTS-HDマスターオーディオ、日本語2.0ch DTS-HDマスターオーディオ、英語主題歌版 5.1ch DTS-HDマスターオーディオ、音声ガイド2.0ch DTS-HDマスターオーディオ
    ●特典:同梱の特典BDに収録/ビジュアルコメンタリー(神木隆之介・上白石萌音・RADWIMPS)、ビデオコンテ、『君の名は。』メイキングドキュメンタリーほか
    ©2016「君の名は。」製作委員会

『天気の子』

  • 「天気の子 Blu-rayコレクターズ・エディション4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組(初回生産限定)」 
    Blu-ray発売中
    13,200円(税抜価格 12,000円)
    発売元:STORY/東宝
    販売元:東宝
    ©2019「天気の子」製作委員会

光と影のコントラストが大胆! HDR映像のリアリティに驚愕

『君の名は。』と同様、驚異的な緻密さで描かれた東京が舞台のファンタジー…ですが、主人公の帆高と陽菜が暮らすのは「貧困」に喘ぐ世界。MaxCLL 992nits/MaxFall 772nitsと輝度は高めに設定されています。世界の閉塞感の反映か、映像はどこかザラリとした風合いで、輪郭線もカリカリにシャープ。鮮やかすぎるほどの色彩も相まって、前作から大きく方向性を変えた攻めた画作りです。それだけに100%の晴れ女・陽菜が起こす気象現象が、大きなカタルシスを生み出します。

降りしきる雨、雲間からさす光、眩い夕陽、深く青い空、夜空を照らす花火…光と影のコントラストが大胆な、HDR映像のリアリティは驚くばかり! 特にチャプター10〜11、お台場のフリマや神宮外苑花火大会が晴れ渡っていく描写は必見。チャプター18、5.1ch音場を揺るがす雷鳴と豪雨。真夏の池袋に降る雪の奥行き感と浮遊感。チャプター27、眩しいほどに鮮烈な「青」が彩る雲の上の世界。雲の龍の出現と同時に、豪雨が音場に叩きつけます!

  • ●本編ディスク:本編113分、ビスタ、HDR10
    ●本編音声:日本語5.1ch DTS-HDマスターオーディオ、日本語2.0ch DTS-HDマスターオーディオ、英語主題歌版 5.1ch DTS-HDマスターオーディオ
    ●字幕:バリアフリー日本語、英語、中国語、
    ●特典:同梱の特典BDに収録/ビジュアルコメンタリー(醍醐虎汰朗・森七菜・RADWIMPS)、ビデオコンテ、『天気の子』メイキングドキュメンタリーほか
    ©2019「天気の子」製作委員会

『すずめの戸締まり』

  • 「すずめの戸締まり Blu-ray コレクターズ・エディション4K Ultra HD Blu-ray 同梱5枚組(初回生産限定)」 
    Blu-ray発売中
    Blu-ray:14,300円(税抜価格 13,000円)
    発売元:STORY inc./コミックス・ウェーブ・フィルム
    販売元:東宝
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

最新作は新海誠作品初のシネマスコープサイズ

日本各地の廃墟に出現する災い=大地震を招く「扉」を閉じていく少女・すずめ(原菜乃華)と、椅子に姿を変えられてしまった「閉じ師」の青年・草太(松村北斗)の冒険を描く本作。2人がめぐる日本各地の精緻で美しい描写は『君の名は。』を、スペクタクルな災害表現は『天気の子』を想起させる、まるで新海作品の集大成のような作風です。

映像は新海作品初のシネマスコープサイズ。扉から巨大な「ミミズ」が出現するシーンの怪獣映画のごときスケール感もワイドサイズならではの迫力。ちなみにミミズや椅子になった草太のCGキャラクター演出は、アニメ版『GODZILLA』三部作やNetflix『GAMERA -Rebirth-』の瀬下寛之監督によるものです。

  • ●本編ディスク:122分、スコープ、HDR10
    ●本編音声:日本語DTS-HD マスターオーディオ5.1ch、日本語DTS-HD マスターオーディオ2.0ch
    ●字幕:バリアフリー日本語、英語、中国語
    ●特典:同梱の特典BDに収録/ビジュアルコメンタリー(原菜乃華・松村北斗)、ビデオコンテ、メイキングドキュメンタリー『すずめの戸締まり』を辿るほか
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

新海誠作品の集大成! 澄み切った情景と災い禍々しさをHDRで描写

チャプター1、震災直後の被災地を彷徨う幼いすずめが見つけた「扉」。その向こうには『君の名は。』を思わせる、黄昏のような美しい星空が広がります。MaxCLL 996nits/MaxFALL 817nitsと、HDRの高輝度で描くその光景は、被災直後の煤けた空気感とは対極の、澄み切った映像世界です。

チャプター4、扉から吹き出すミミズの巨体。凄まじい重低音が5.1ch音場の高みへと駆け上り、土地の記憶のような無数の声が観る者の耳元に漂います。このように、本UHD BDの音声は5.1chサラウンド収録ですが、AVアンプ側でドルビーサラウンド再生を行うと、天井スピーカーからも独立性の高い音があふれ出すので驚きです。扉を封じる呪文と共に現れる、紋様のような鋭く青い光も印象的。

チャプター10、民宿ですずめがいただく夕食やミカンがシズル感豊か。チャプター13、廃墟の遊園地からミミズ出現。観覧車やジェットコースター、夜の街の光が大気でかすかに揺らめくのが大画面再生では明らかです。計らずもライトアップされてしまう、遊園地の発色の美しさも特筆ものです。

チャプター17、東京・お茶の水の地下鉄トンネルから最大級のミミズが出現。ミミズの周囲を飛ぶカラスの群れが、その大きさを実感させます。東京の夕空を覆っていく巨大な姿は、筆舌に尽くし難い禍々しさ!

…と、ここまでで物語はまだ半分。この後にすずめたちを待つ運命とは?怒涛と感動のクライマックスは、ぜひ皆さん自身の目と耳で体感してください!

  • チャプター1、幼少期のすずめが見る、災いをもたらす「扉」の向こうの澄み切った景色。
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
  • チャプター4、扉から吹き出すミミズと「閉じ師」草太との戦い。鋭い青色の光線が印象的です。
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
  • チャプター13、廃墟の遊園地からミミズが出現する場面。ライトアップされる観覧車やジェットコースターの光が美しいシーンです。
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
  • チャプター17、ミミズが東京の夕空を覆うシーン。筆舌に尽くし難い禍々しさです。
    ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

伊尾喜大祐氏のホームシアター「シン・イオキネマ」視聴システム

●プロジェクター:VICTOR DLA-V80R
●スクリーン:KIKUCHI SE-120HDC
●有機ELテレビ:東芝 REGZA 65X9400
●Ultra HDブルーレイレコーダー:Panasonic DMR-ZR1
●AVアンプ:DENON AVC-X8500HA
●フロントスピーカー:KEF R7
●サラウンド&サラウンドバックスピーカー:DALI OBERON ONWALL
●トップフロント/トップミドル/トップリアスピーカー:DALI PHANTOM E50
●サブウーファー:KEF Kube10b Subwoofer

伊尾喜大祐氏のホームシアター「シン・イオキネマ」の構想から完成まで密着した連載はこちら!