ホームシアターの環境づくりに極めて重要なのが、部屋の照明です。とくにホームシアターにおいては「直接照明ではなく間接照明」がキーワード。照明器具は白熱や蛍光灯に代わり、LED照明に一変しました。自由度が高まったLED時代、どんな器具をどう使えばいいのでしょうか? 多様な空間のニーズに応えてきた国内メーカー「DNライティング」で、最新の“間接照明事情”を訊いてきました。
テレビもスクリーンも照明は大事
リビングの照明でいまもよく見られるのが、部屋の中心にシーリングライト一灯配置。賃貸住宅やアパートなどではあらかじめ天井カセットが設置されているため、できることといえば好みのデザインの器具を選ぶだけ、というのが一般的でしょう。
しかしこれは、ホームシアターに適した環境とはいえません。光源がスクリーン映像に直接影響を与えるプロジェクターを使う場合のみならず、たとえテレビシアターであっても画面に反射して見にくく、結局、照明の光量を下げるしかありません。
さらにリビングシアターの場合は、ダイニングで夕食をとり、その後リビングに移動してソファで寛ぎながら映画を楽しむ場面への「シーンチェンジ」には、それぞれにふさわしい照明が必要です。この「調光」は次回にゆずるとして、まず、基本となるリビングシアターにふさわしい照明環境をどうつくるかについて考えてみます。
ライン照明で光量とデザインを両立
ホームシアターにふさわしい照明としての役割を担ってきたのが、ダウンライトです。ビーム角を絞ればスクリーンへの映り込みも防止でき、設置が容易で器具自体も安いため、多用されています。しかし、たくさん配置しないと部屋に十分な明るさをもたらさないため、結局天井にたくさんの“穴”が空く状態となってしまいます。
そこで、LED時代のホームシアター照明として俄然注目したいのが、ライン照明。間接照明に最適で、配置の仕方によって、十分な光量とオシャレなインテリアを両立できます。
「天井直付けの照明一灯と比べて『折り上げ天井(天井の中央が一段掘り込まれている天井)』や『コーブ天井(アーチ型の天井)』に仕込む間接照明であっても、適切に配置さえすれば、十分な照度が得られます」(DNライティング・高橋さん)
照明が映えるテレビシアターとは?
──なるほど、こうしたコーブ照明は、照明リテラシーの高い建築家や照明デザイナーが設計した豪邸のイメージですね。では、カジュアルなテレビシアターでもマネできる実践的な知恵・Tipsはないですか?
(高橋さん) テレビバックを珪藻やテラコッタなど素材感のある仕立てにして、そこに光を当てる『コーニス照明』がオススメです。テレビとの輝度差が少なくなるので目に優しく、何より陰影のグラデーションが美しいのです。ただ、落とし穴があって…
──落とし穴!?
(高橋さん) “カットオフライン”を設定することが大切です。間接照明は、光源が直接見えないように設置する必要があるのですが、逆に隠しすぎると、光のグラデーションが綺麗に出ず、光と影の境界線がクッキリ出てしまうんです。
- 上手なカットオフラインの配置
- よくない例。中途半端に履いた靴下のように壁にクッキリ境界線が
- よくない例。光源が丸見えに
──たしかに、腕のいいホームシアターインストーラーは巻き上げスクリーンを造作などで上手く隠しますが、そういった細かい配慮が照明でも必要ということですね。
(高橋さん) LEDライン照明はカッコいいのですが、意外に光量があり、眩しいこともあります。リビングシアターのようなくつろぎのシーンでは、埋め込むスリット(溝)を深く大きめに設定すると、光が溝の中で乱反射してほどよく柔らかになり、器具自体も目立ちません。
- スリットを巧みに利用した設置例
- よくない例。光源が眩しい
- よくない例。光源が眩しい
DNライティングとは
今回話をうかがったのは、1977年創業のLEDモジュールや照明器具類の製造・販売から設計施工まで行うDNライティング。製品の7割は100%子会社である秋田DNライティングによる国産が占めています。もともとは蛍光灯を製造していましたが、フレキシブルLEDライトをはじめ、LED時代の到来とともに多様な高品質LED照明を生み出しています。最近では収納家具内部に仕込むディスプレイ照明としてのニーズも高まっているそうです。
- 「MU-LED」はなんと幅5mm(左から2番目)。薄い棚板や、意匠を重視する造作向け
- 長さも多様なラインアップを揃え、カスタマイズも可能。50mmから2750mmまで全73サイズあり、さらに連結もできる「MC-LED4」のようなタイプも
- 連結できるタイプは、連結箇所の光が欠けないよう掘り込みが施されています
- 吊り下げて設置してもOK。継ぎ目も分からず端までキレイに光ります
- ヘビのように曲線の場所にも置けるチェーン式の新製品「CHC-LED N20」
次回は「調光/調色」の最新事情について訊いていきます。
INFORMATION
- 「照明実験空間 TOKYO STUDIO E139」
東京都品川区西五反田1−3−5
TEL:03-3492-4460
営業時間:10:00〜12:00、13:00〜17:00
定休日:土日祝
- 「照明実験空間 OSAKA Lab E135」
大阪府吹田市豊津町54−6
TEL:06-6338-1081
営業時間:10:00〜12:00、13:00〜17:00
定休日:土日祝