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  • 「基礎から学ぶ、1歩先のホームシアター」第5回 シアターファンが知っておきたい!
    「mini LED」の基礎
    従来型から弱点を克服し明暗部を高コントラストに描く

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2022年4月22日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

直下型LEDバックライトを飛躍的に高精度化

「もっと深くホームシアターを楽しみたい」、「映像と音響の技術を知りたい」、そんな声に鴻池賢三氏が応える連載「基礎から学ぶ、1歩先のホームシアター」。液晶ディスプレイの新技術「mini LED」について解説します。

4K/8Kテレビをはじめ、PCモニターやモバイル機器などで、液晶ディスプレイの新技術として注目度が急上昇している「mini LED」。AVファンに新たな楽しみをもたらす可能性を秘めた「mini LED」は、液晶ディスプレイにおけるバックライト技術のひとつです。そもそも液晶ディスプレイは、カラーフィルターと液晶シャッターで作り出した画柄を、バックライトで照らし出すことにより、カラー映像を表示しています。液晶テレビが登場して以降しばらくは、光源はCCFL(冷陰極管)が主力でしたが、LED(発光ダイオード)の発光効率向上や低コスト化に伴って、徐々に置き換わりが進みました。

  • mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビのイメージ。光源が画面全体に細かく分散されることで高コントラストを実現。加えて近年は、青色発光LEDと量子ドットシートの組み合わせにより、より高効率にRGB光を取り出す手法も採用が増えています。

そしてさらに、LEDの小型かつ分散配置が可能な特性を生かし、バックライトの輝度を部分的に制御するローカルディミング技術により、映像の明部は明るく、暗部は暗く調光して黒を引き締め、同一画面内のコントラスト向上が図られました。しかし、LEDをもってしても画面のエリア分割数は数百止まりと限定的で、細かい制御ができず、高精度なコントラスト表現は難しいものでした。例えば、フルHD(約200万画素)の画面を500個のエリアに分割すると、1つの光源が担当する画素は約4000個、4Kなら約16000個、8Kなら約64000個といった具合で、分割数がまだまだ充分と言えませんでした。そこで、従来の直下型LEDバックライトを採用した液晶ディスプレイを、さらに高精細へと進化させたのが「mini LED」技術です。

  • 従来技術では、バックライトが画面全体を一定の明るさで照らし出すため、映像の暗部は液晶シ ャッターから漏れ出た光によって「黒浮き」が発生、コントラストの低下、暗部階調の浮き潰れが問題でした。mini LEDは、そうした液晶の弱点を補い、高画質化に貢献します。

超高コントラストとバックライトの薄型化

「mini LED」に厳密な定義はありませんが、“mini”と呼ぶ理由は、従来に比べて小さなLEDを用いるため。4Kテレビの場合、バックライトに相当する基板上に、米粒よりも小さなLEDを数千個敷き詰め、1000~2000個のエリアに分割して駆動するイメージです。「mini LED」のメリットですが、まず、分割数が多くなればなるほど細かい制御が可能となり、暗部で気になりがちな画柄からはみ出したバックライトの光が目に付く「ハロー現象」を抑えることができます。また、輝度の向上によって明部をより明るく表示することができ、超高コントラストを実現。HDR映像の輝くようなピーク表現もさらに伸ばすことができます。

ほか、光源が分散することで、光を拡散するために設けていた空間や部品を少なくでき、バックライトシステムを薄くすることが可能。テレビ製品自体をスリムにするなど、デザインの自由度も高まります。

  • mini LEDの特長を示す具体例としては、夜空に浮かぶ月の画柄がわかりやすいです。月の輪郭をより精密にトレースして部分的に点灯することができ、従来技術に比べ、暗部のハローが目立ちにくく、明るい月と暗い背景のコントラストを高めることができます。また、月表面の模様もコントラスト豊かに表現することができます。

4K/8Kテレビのフラグシップに採用

「mini LED」は、TCLがIFA 2018で展示、年にテレビ「X10」として発売を開始。CES 2020ではμmクラスの極小LEDを数万個、ガラス基板上に並べる「Vidrian Mini-LED Technology」を、CES 2021では同社が第3世代と呼ぶ「OD Zero」、液晶パネルとバックライトの間に空間がなくより効率化した技術を発表。液晶の高画質化技術として「mini LED」はメインストリームになると予想されます。

現在「mini LED」採用を謳っているテレビメーカーとしては、TCL、LG、シャープが代表的で、今後も4K/8Kのフラッグシップラインを中心に採用モデルが増えそうです。また、Apple社のiPad、MacBook Proでも採用が進んでいます。

有機ELを遥かに超える高輝度も期待できる「mini LED」技術。暗室ではなく明るい視聴環境なら、有機ELでは味わえない映像体験をもたらす可能性をもち、今後も要注目です。

  • ノートPCやタブレットなど小型のディスプレイをもつ製品でも、mini LEDを採用したモデルが登場。今年、Appleから登場した「iPad Pro(12.9インチ)」や「MacBook Pro」では、ミニLEDを採用した「Liquid Retina XDRディスプレイ」を搭載しています。
  • mini LEDを採用したテレビ

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