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「粗い」「カクカク」の原因はデコードかも
ネット経由で映画や音楽ライブといった映像コンテンツを視聴中「4Kのはずなのになんだか粗いな」「カクカク止まって集中できない」なんて、画質や再生に関する違和感を抱いた経験がありませんか? それは「デコード」の性能が原因かもしれません。
4K・8K/60fpsといった高解像度/ハイフレームレートなど、映像コンテンツが急速にハイスペック高画質へ向かう昨今、自身の再生環境によって本来の画質が損なわれている可能性は大いにあります。
そこで今回は、世代の変わり目で留意すべき「ソフトウェアデコード」と「ハードウェアデコード」について解説します。より高画質な映像をいち早く体験したい方は、知っておくと製品選びや設定で役に立ったり、トラブルの解決につながったりする可能性も。ぜひご注目を!
デコードとは?基本を知って適切に対処しよう
デジタル映像は、データ量を削減するため、ほぼ例外なく圧縮(エンコード)が施されています。くわしくは下掲の記事で解説していますので、ご興味のある方はご参照ください。
送出側で圧縮(エンコード)された映像は、わたしたち視聴者が利用する再生機器で展開(デコード)がおこなわれることになります。このデコードは、圧縮率が高いほど、また高解像度でフレームレートが高いなどデータ量が大きいほど、より多くの演算パワーを必要とします。簡略化していますが、ここでは「古いプレーヤーで最新の高画質映像をスムーズに再生できない」場合において、おもな原因はデコードである可能性が高い、とご理解いただければ充分です。
デコードは「ソフトウェアデコード」と「ハードウェアデコード」に大別できます。ソフトウェアデコードは、CPUの演算能力を用い、ソフトウェア(プログラム)でデコードします。CPUの演算能力が十分に高い場合、ソフトウェアの追加で新しいコーデックにも対応できるなど、柔軟性の高さがポイントです。
しかしCPUの演算能力を多く利用すると、消費電力が高くなり発熱をともないます。また、演算能力が不足すると映像がカクカクとコマ送りのようになったり、停止してしまうことも。
この場合、解像度やフレームレートを下げる、言い換えると画質を落とせば再生できることがほとんど。「ソフトウェアデコード」の特性を理解していれば、故障とあきらめずに視聴を継続できるでしょう。ただし、動画のタイトルに「8K/60p」などと記載されていても、その画質では視聴できない点は忘れてはいけません。
もう一方のハードウェアデコードは、機器本体へCPUとは別に設けられた専用の回路でデコードをおこないます。CPU上で演算するためのソフトウェアが不要で、各コーデックに特化されたミニマムな回路でデコードをおこなうので、効率が非常に高い方法といえます。
- 「ソフトウェアデコード」と「ハードウェアデコード」の違いをたとえると、「はさみ」と「芝刈り機」に例えることができます。広い面積の芝を一定の長さに整える際、はさみでもおこなえますが、長さに注意する必要があり、労力も時間も多くかかります。一方で芝刈り機を使うと非常に楽ですが、はさみのように紙を切るなど他の用途には使えないといった具合です
またGPUを用いたデコードはCPU以外での処理、という観点からハードウェアデコードと呼ばれるようですが「汎用の回路を用いて何らかのソフトウェアを必要とする場合、ソフトウェアデコードといえる」と筆者は考えています。
高スペック映像を快適に視聴するなら?
もうお気づきかもしれませんが、目的のコーデックに対応するハードウェアデコード機能を搭載しない再生装置は、追加投資しても映像再生においてはあまりよい結果を得られません。よいモノを長く使いたい気持ちはあっても、デジタル機器においては、最新モデルに買い替える方が合理的なケースは多いものです。
たとえば、1世代前のPCではハイエンド品でも再生(ソフトウェアデコード)が困難な高画質映像を、比較的安価なPCやスマホでも、新しいモデルならハードウェアデコードが搭載されており、楽々と再生できてしまうイメージです。
具体的な対応例を挙げるなら、現時点でより高効率および高圧縮なコーデック「AV1(AV01)」への対応がポイント。Intel「インテル Coreプロセッサー」(CPUを含むシステム)は第12世代モデルから、最大8K/60pのAVIのハードウェアデコードに対応しています。
スマートフォンはクアルコムのSoC「Snapdragon 8 Gen 2」がAV1のハードウェアデコード(最大8K/60p)に対応、Appleは「A17 Pro」(iPhone 15 Pro)と「M3」が対応、というのが2024年10月現在のおもな対応状況です。高画質にこだわる方なら「ハードウェアデコード」の対応コーデックは、一つの判断基準になるかもしれません。