この記事では、より自身にピッタリの製品を選ぶための基礎知識として、プロジェクターのスペックの読み方や機能について解説します。紹介する7つの項目は、プロジェクターの性能の目安となる要素。とくに、実物を確認できない環境でネット購入を考えている方は「こんなはずじゃなかった!」と後悔しないためにもご一読を!
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おさえておくべき7つのスペックを解説
(1)明るさ
プロジェクター選びでもっとも重要なのが映像の明るさです。スペックのみを読む際は「ANSIルーメン(lm)」で表記されているかがポイント。200ANSIルーメン級になると、暗室なら100インチ程度の大画面映像を楽しむことができます。
プロジェクターの映像は大きく投写するほど光が拡散して暗くなるので、明るい部屋で見る時は画面を小さく、言い換えると投写面とプロジェクター間の距離を短くしていくと、映像が明るくなり視認性が向上します。
暗室にするのが難しい場合は、800ANSIルーメン程度あれば、日没後に照明を少し暗く調整すると100インチ程度の大画面を楽しむことができます。据え置き型で3,000ANSIルーメン級になると、日中の明るい部屋でも映像の内容が確認できるほど。ルーメン値は大きい方が有利ですが、大型で高価になりがちなので、用途や予算に合わせて判断を。
- 寝る前に寝室でなるべく大きな画面で映画を見たい、画面サイズはそこそこでも昼間に家中を持ち歩いてアニメをながら見したい、など見たいシチュエーションやコンテンツによって必要な明るさは変わってきます。住環境やライフスタイルと照らし合わせて、まずは必要なスペックを見極めるのが吉。画像はエプソンのホームプロジェクター「dreamioシリーズ」特設ページ内の明るさシミュレーターより
(2)表示解像度
プロジェクターの映像は画素の集合体。画素数が多いほど、細部まで緻密で美しい映像を楽しむことができます。製品として現在一般的なのは、HD(1280×720)/フルHD(1920×1080)/4K(3840×2160)の3種類。画素数は多い方が有利ですが、大型で高価になる傾向があるので、用途を満たすミニマムな選択を。
100インチ程度になるとHD解像度では画素のツブツブが見えてしまうので、フルHDモデルをお薦めします。画質にこだわるなら4Kを。スペック欄には必ず記載されているのでチェックしてみましょう。
(3)投写サイズ
プロジェクターが写す映像のサイズは、投写距離と比例して変化します。標準的な製品は、約3mで100インチが得られるよう設計されています。ほか「短焦点」と呼ばれるタイプは約1.5mで100インチ。「超短焦点」と呼ばれ、画面下から急角度で映像を投写するタイプは、数十センチで100インチサイズの映像が得られます。
超短焦点タイプは人の導線と交わらないので使い勝手がよく人気ですが、急角度で投写するので、映像の歪みや明るさにムラが大きくなりがちな点に注意も必要です。スペック欄には距離と投写サイズの関係が記載されているので、実際の設置環境と照らし合わせて確認するのが吉。
(4)色域
スペックに記載されている色域は、表現できる色の最大範囲を示します。おもな規格としては、色域が広くなる順にBT.709(sRGB)/DCI-P3/BT.2020の3つがあり、スペック表では「DCI-P3 98%」などと記載されています。色域性能は広い方が色表現はより鮮やかといえますが、中には誇張され不自然に感じるケースも。同じようなスペックを備えていても、各社の画づくりによって異なる画質となることもめずらしくありません。
また色域性能が高いほど製品は高価になる傾向があります。後述のコントラスト性能が高ければ、BT.709相当でも色鮮やかさは充分に感じられることもありますので、スペック値は目安と考え、購入に際してはレビューなども参考にされることをお薦めします。
(5)コントラスト比
映像をもっとも明るく表示できる部分と、もっとも暗く表示できる部分の輝度を比率で表したもので、たとえば明るい部分が1000nits、黒が1nitなら「1000:1」と記載されます。
コントラスト比は高いほど明暗がダイナミックでメリハリが得られ、いまならHDR映像の“HDRらしさ” もより楽しめます。
注意すべきは「ダイナミックコントラスト」です。ダイナミックコントラストとは、光源の明るさ調整を加味した動的性能のこと。暗いシーンはより暗く、明るいシーンはより明るく見せることができますが、同一画面上では再現できない、つまり明るい部分と暗い部分が共存するシーンを描写する場合は適用されないので実力とはいえません。
対になる「ネイティブコントラスト」の比率が高い製品は実力のある高性能といえます。ネイティブコントラストが高いと、暗部はより暗く、階調表現が豊かなことに加えて、ピュアな色表現も可能です。
(6)投写デバイス/方式
現在方式としてDLP/液晶(LCD)/反射型液晶(LCOS)の3種類があります。コンパクトモデルを中心に多数派といえるのがDLP。DMDという画素数分の小さな可動式鏡に光を反射させ、鏡の方向によって光のオンオフを制御し、明暗をデジタル的に表現します。通常はRGBそれぞれのモノカラー映像を素早く連続して投写、カラー映像として認識させる仕組み。構造上、製品や見る人によっては、カラーブレーキングやレインボーノイズという、白色が虹のように見える現象が発生します。コンパクトさとのトレードオフと考えればよいでしょう。
液晶や反射型液晶ではRGBを同時に投写する製品しか現存せず、原則DLPのようなカラーブレーキングは発生しません。とくに反射型液晶(LCOS)はネイティブコントラスト性能が高く、一部のハイエンド製品で採用実績があります。
(7)光源
現在はLEDまたはレーザーが主流です。両光源とも、白色発光をカラーフィルターによってRGBに変換するタイプと、RGB三色独立発光(3RGB)タイプがあります。従来の高圧水銀ランプと比べると、光源モジュール自体が小型で発熱も少ないので、プロジェクターの小型化に寄与しています。
DLPタイプで3RGBを採用すると、カラーホイールと呼ばれるカラーフィルターが不要かつ、高速切り替えによってカラーブレーキングを少なくできるほか、色域の拡大や製品の小型化にも繋がります。レーザー光源は単波長(色の純度が非常に高い)という特性から、色域を広くでき、最新の超広色域規格BT.2020のカバー率100%を超える製品も登場しています。
使用も設置も簡単なモバイルタイプが登場
ひと昔前まで、プロジェクターといえば重厚長大でマニア向けのイメージでしたが、最近ではモバイルタイプの製品も多数発売され、誰もが気軽に使えるようになりました。その背景には技術革新があります。特に光源はランプからLEDやレーザーに置き換わったことで、飛躍的な小型化と低消費電力化を達成。手のひらに乗るコンパクトモデルでも実用的な映像の明るさを確保しつつ、内蔵バッテリーで2時間程度駆動できるなど、使い方の自由度が広がりました。
ブームのきっかけのひとつとなったのは、モバイルバッテリーで有名なAnkerブランドのポータブルプロジェクター。350ml缶程度のサイズ、Wi-Fi対応で配信映像を視聴でき、バッテリーとスピーカーを内蔵した “完全ワイヤレス” を実現したのは画期的でした。
いまでは各社から、コンパクトを重視したモデル、映像の明るさや画質を重視したモデル、さらには4K対応モデルなどバリエーションも豊富に。自身に合った製品を選ぶことで、大画面映像のある新しいライフスタイルが手に入ります。