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  • 鴻池賢三のホームシアターTips スピーカーのベターな“置き方”とは? 3つの工夫でシアターの音質アップをねらう! おさえておきたい基本の3点をプロが解説:フロア5.1ch編

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年12月20日更新

家族や友人が集まるリビングにホームシアターを導入する場合、動線やインテリアとの両立にお悩みの方も多いでしょう。ここで紹介する “やってはいけないスピーカーの置き方” を覚えておけば、本来の音質を損なう可能性を極力避けることができます。ちょっと配置をずらすだけでも、クオリティアップにつながるかも! THX/ISF認定のホームシアターデザイナーである鴻池賢三氏が、おさえておきたい基本の3つを解説します。

聴感アップをねらう3つのポイントをチェック

その1 高さは「耳」に揃えるのがイイ!

視聴者を取り囲むサラウンドスピーカーは、耳の高さに揃えるのが基本です。スピーカーの音色はトゥイーター鉛直軸上を基準として設計されていて、角度がつくと聴こえ方が変化します。フロア型スピーカーの場合、高さがピッタリの製品を選ぶか、または座面の高さを調整するとよいでしょう。

フロントスピーカーが画面より下に位置する場合は、トゥイーターが耳を向くように仰角を設けます。こうすることでスピーカーから聴こえる音色が全体で整い、音の移動がスムースで空間の再現性も高められます。

極端な例ですが、フロント左右のスピーカーの高さが異なると、音の移動がその通りに斜めになって不自然に。画面に被らない範囲で、フロントスピーカーの高さも極力耳の高さに近づけるのが理想です。

  • 3ウェイのフロア型スピーカーなら、一番上がトゥイーターユニットであるのが一般的です。画像はJBL「STAGE 280F」

その2 壁から少し離して設置するほうがイイ!

生活空間で邪魔になりがちなスピーカーは、壁にピッタリとくっつけて設置したくなります。しかし、音質やサラウンド効果の観点では考えもの。スピーカーから出た音は壁面を反射するため、壁との距離が近いと干渉して音色の変化を起こしやすくなります。

とくにフロントスピーカーで左右の音色が整わないと、定位が乱れ音像も偏るなど、違和感を覚えやすいもの。センタースピーカーは床との関係が大きく、映画でもっとも重要とされるセリフの聴こえ方に悪影響をおよぼしやすいので注意が必要です。なるべく高い位置に設置するか、仰角を設けるように心がけましょう。リアスピーカーは、フロントに比べると再生される音のエネルギーが少ないので、それほど神経質になる必要はありません。ですが、品位を重視するなら少しでも壁から離すのがお薦めです。

  • とくに映画作品を視聴する際は、人のセリフの帯域の再生を担当するセンタースピーカーが重要。なるべく高い位置に設置するか、仰角を設けるように心がけましょう

その3 スピーカーの上には雑貨を置かないほうがイイ!

インテリアや趣味の観点では、平らなスピーカーの上に何か飾りたくなるかもしれませんが、これも音質的には好ましくありません。上に置いたものがスピーカーと共振して、カタカタと音を立てるのは論外です。

また、スピーカーの前にモノを置く方は少ないと思いますが、これも好ましくないので念のため。似たような問題としては、スピーカーをラックの中に入れるのも音色の変化に注意が必要です。THXでは、ラックの中にスピーカーを収める場合、充分なスペースの確保と吸音処理を推奨しています。

  • サラウンドの理想は視聴位置を軸にした「同心円状」の配置。難しい場合はAVアンプの音場補正機能も活用してみましょう

音質にも配慮した「お気に入りの空間」をつくる

さいごに、ここではホームシアターにおけるスピーカー構成の基本といえる5.1chのセッティングを想定して解説しました。スピーカーがフロント左右で2台、センターが1台、リアが2台、そしてサブウーファーは低域のみを担当して帯域が狭いので0.1とカウントし、トータルで5.1chと呼んでいます。音声フォーマットとしては7.1chや9.1chもありますが、実スピーカーでのシステム構築においては “中抜け” を防ぐのが主な役割です。十数畳と広い空間でスピーカー間の距離が遠く離れてしまう場合に、音源の数を増やして音のつながりを強化できます。

また、チャンネルという概念に縛られない「ドルビーアトモス」に対応する場合も同様で、一般的なご家庭なら5.1chを基本にフロントハイトスピーカーを2基追加する「5.1.2」くらいが現実解といえるでしょう。やはり基本はリアスピーカーが存在して前後の立体感も表現できる「5.1ch」、と考えて差支えありません。

もちろん楽しんでこそのホームシアターですので、お気に入りの空間づくりをするためには、上述で「NG」とした置き方も絶対というわけではありません。ですが、音質やサラウンド効果を少しでも洗練したいとお考えなら、この記事を思い出していただければと思います。

  • 鴻池賢三 氏。VGP審査副委員長、オーディオ・ビジュアル評論家。メーカーにてAV機器の商品企画職、アメリカ・シリコンバレーのデジタルAV機器用ICを手掛けるベンチャー企業を経て独立。THX/ISF認定のホームシアターデザイナーとしても活躍しています