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  • SONY 徹底して追求してきた “真の没入感”
    2022年のBRAVIA XRの魅力に迫る
    BRAVIA XR開発陣に特別インタビュー!

    VGP 取材・執筆 / 大橋伸太郎
    2022年8月19日更新

    • VGP審査委員長
      大橋 伸太郎

ソニーの4Kテレビであるブラビア(TM)の2022年度モデルとして発表され、店頭に並び始めた、認知特性プロセッサー「XR(TM)」を搭載したハイエンド「BRAVIA XR(TM)」は、従来以上に映像・音響処理能力が進化しており、究極のAV体験を追求しています。本稿では、大橋伸太郎氏のインタビューを通し、その魅力に迫ります。

  • ソニーの4Kテレビのハイエンドモデルに位置する「BRAVIA XR」。2022年度は、4K有機ELテレビ「A95Kシリーズ」「A90Kシリーズ」「A80Kシリーズ」、4K液晶テレビ「X95Kシリーズ」「X95Kシリーズ」、5シリーズが登場しました。

肌色から奥行き感まで制作者の意図を再現

大橋氏 テレビの世界が非常に大きな変化期の中にあります。VODが急速に浸透し、映画はまず映画館から始まるということが常識ではなくなり、映画館上映と配信が同時にスタートする、または配信の方が先に始まるといった現象が起きています。一方で、未だにパッケージならではの価値も薄れてはいません。このようにコンテンツの多様性が急速に進む中においても、テレビの存在感は揺らいでいないと感じています。テレビシーンを牽引する存在といっても過言ではないブラビアを開発する上で、この大変革期を開発陣の皆様はどのように捉えていたのでしょうか?

志岐氏 コンテンツの多様化はお客様のニーズや用途が多様化していることだと考え、まずはしっかりとお客様に向き合い、理解して、それぞれに合わせて最適な体験を提供することがポイントだと思っています。またクリエイターの想い、クリエイターが表現したい画作り、それらのよさをお客様に体感してもらえるようにすることを追求しています。それらによって、経営の方向性である“人に近づく”ことができ、感動を提供できると考えています。たとえば「Netflix画質モード」の搭載や、2021年から開始した「BRAVIA CORE(TM)」もその一環です。2022年は「BRAVIA CAM」によってお客様の視聴状況も把握することで、より最適な画質をお届けできるよう実現しました。

  • 本稿では、開発陣に2022年モデルの「BRAVIA XR」ならではの魅力、従来からの進化点などについて、インタビュー取材を実施しました。
  • オーディオビジュアルの総合アワード「VGP」で審査委委員長を務める、大橋伸太郎氏をインタビューに迎え、BRAVIA XRの画質・音質、そして機能面の魅力に迫ります。

大橋氏 “人に近づく”というコンセプトは、ハイエンドシリーズの「BRAVIA XR」に搭載されたキーテクノロジーといえる、認知特性プロセッサー「XR」に繋がっていますね。では、2022年度の「XR」はどういった面が大きく進化したのでしょうか。あらゆるものを人が視覚的に捉えるとき、どのように見えているか徹底的に分析することが大きな土台にあると思いますが、たとえばHDRの進展、ダイナミックレンジの明部の表現性、暗部の階調性などはいかがでしょうか?

錦織氏 「XR」ではHDR映像の色と輝度をどこまで表現できるか、常に突き詰めています。「X1 Ultimate」の頃から比べても、映像の解析性能やトーンマッピング処理は進化し年々チューニングのブラッシュアップもしています。今回の4K有機ELモデル「A95Kシリーズ」では、非常に高い輝度情報を含む映像でも、明るさを保ったまま色と階調を出すことが可能になっています。

A95Kシリーズは併せて暗部の階調表現も高めています。通常、有機ELの素子は信号の値が小さいほど制御することが難しく、従来のホワイト+RGB画素のパネルでは、ホワイトと他の色のバランスの調整がシビアでした。今回新たな有機ELパネル「QD-OLED」と、パネルを緻密に駆動する「XR」プロセッサーの組み合わせによって、純粋に単色のRGBで細かな制御が行えるようになったため、暗部の階調表現も向上しました。

  • ソニー独自の認知特性プロセッサー「XR」は、映像コンテンツに含まれる情報を、人の脳のように横断的に分析することで、人が目で感じる自然な美しさ、人が耳で感じるその場にいるような臨場感、圧倒的なリアリティを追求した画と音を実現します。
  • 有機ELモデル、液晶モデルの両方の商品企画を担当する志岐氏。高い没入感を追求するBRAVIA XRのコンセプト、ユーザーのニーズに応える設計方針などについて語ってくれました。
  • 4K有機ELテレビ
    SONY
    A95K series
    (XRJ-65A95K/XRJ-55A95K)
  • A95Kシリーズには新たな有機ELパネル「QD-OLED」が採用されています。QD-OLEDの特長である純度の高い発色とXRの解析能力を組み合わせることで、色表現領域を拡大するだけでなく、高い精彩感や奥行き表現の向上、高コントラストなども実現しています。

大橋氏 「XR」によってQD-OLEDをしっかりとコントロールできている証拠ですね。近年は、インテリジェントな認知、それに基づいた処理技術によって、コントラストと彩度を最適化する機能の開発に取り組んでいるメーカーが増えてきています。

中でも肌色に注目されているところが多く、特に放送番組や実景が素材となるビデオコンテンツでのメリットは大きいです。一方で映画コンテンツなど、映画監督がライティングを駆使して意図的に明暗を操作して、心の陰影であったり、人物の心模様を表現したりする、繊細な演出上の工夫を薄めてしまう場合も出てきてしまっている印象がありますが、そういった演出の意図と、テレビの映像表現としての美麗さとバランスについては、どのようなコンセプトをお持ちでしょうか?

錦織氏 クリエイターの意図を崩さないように、お客様が見て心地よいエンハンスを施すことは、我々も一番こだわっている部分です。クリエイターの意図を忠実に再現するためには正しい映像解析と、それを地盤とした映像処理、そこから客様のお好みに合わせて調整して頂ける画質モードと映像調整設定機能が重要であると考えています。中でも肌色常に最も注意しながらチューニングを続けているポイントです。映像信号処理だけでなく、パネルのクオリティをはじめ、工場での調整などにも気を配り、信号に関連する細かいステップのひとつひとつの制御の仕方にこだわり続けています。

大橋氏 クリエイターの意図を表現することへのこだわりの中に、ソニーならではの映像表現も含まれているということですね。
テレビメーカーは数多くありますが、グループ企業に映像製作会社であるソニー・ピクチャーズ エンタテインメントがあるのは、大きな強みになるのではないでしょうか。

志岐氏 もちろん、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントとも連携した上で、クリエイターの意図に沿った忠実な画質を提供すること、最新作から過去の名作映画まで「BRAVIA CORE」経由でお客様に届けられることは我々の強みです。

大橋氏 映画の画質というのがこれほど多種多様な時代もないですよね。今でも35mmフィルムにこだわる監督から、もうフルデジタルで撮る方もとても多いし。それから作品によっては、できるだけCGを使わずにアクション実技を使って、デジタルでも人間くさい自然な映像を撮りたいと考える方もいらっしゃる。映画のルック、映画の美学といったものが、ブラビアを通じて伝えられるといいですね。

  • BRAVIA COREは、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと連携しているBRAVIA XR専用のサービスです。同社の豊富なコンテンツを、最新作から旧作まで幅広く観られます。4K/HDRなど、高画質で楽しめる作品も多数揃えています。
  • 有機ELモデル、液晶モデル両方の画質設計を担当する錦織氏。オブジェクト検出による奥行き表現の向上など、XRの最大の特長である解析能力の進化点について教えてくれました。

大橋氏  2022年度の「XR」のアルゴリズムは、他にどのような点が進化しているのでしょうか。

錦織氏 今回、奥行き表現の向上も大きなトピックです。我々は、テレビ側の画質処理で無差別に奥行きを強調してはいけないと考えています。奥行き感を表現したいタイミングはクリエイター側が決めることであり、奥行き表現を強調したくないシーンも存在します。そこで「XR」の認知特性に新たなAIの技術を取り入れることで、映像の奥行き感が制作者の狙ったものなのか否かを考慮して、インテリジェンスに処理を施すよう工夫しています。進化した「XR」により、より豊かな臨場感、自然な奥行き感のある映像を楽しんでいただけると思います。

大橋氏 シチュエーションとして、映画の登場人物の置かれた閉塞感みたいなものを表現したいがために、あえて被写界深度を深く撮って扁平な感じの映像にする場合はあります。不自然に奥行きを強調するのは撮影の意図に反することもあるでしょうし、高いレベルでの認知精度が求められますね。

人間の目で見える実画像と、それを映像にどう反映させて感動を与えるか。人間が何を見ているのか、何を見たいのか、何を見せたいのか、という、単にテレビの機能ではなく、人間の視覚の本質というものに「XR」は深く踏みこんでいるのかもしれません。

新たなデバイスの性質が「XR」の精度にマッチ

大橋氏 今回液晶モデルで、新たに「Mini LED」を搭載した「X95Kシリーズ」をラインアップしています。「XR」と新たなバックライト「Mini LED」の相性や連携については、いかがだったでしょうか。液晶テレビにおいて、直下型LEDによる緻密なローカルディミングを徹底的に追求してきた御社ならではの特長などもお聞きしたいです。

高橋氏 Mini LEDデバイス自体ももちろん重要ですが、デバイスを動作させるプロセッサーの処理や制御技術と組み合わせた効果が大切であると考えています。バックライトのデバイスも年々進化していますが、単純にLEDを光らせるだけで性能が良くなるわけではありません。「XR」プロセッサーの処理能力と、従来から培ってきた「バックライトマスタードライブ」のノウハウをより高次元で統合することで「XRバックライトマスタードライブ」がMiniLEDの性能を最大限発揮します。ソニーが持つバックライト制御技術と非常に相性の良いデバイスとしてMiniLEDを採用しました。 Mini LEDバックライトの特長を挙げるのであれば、私がお薦めしたいポイントはバックライト駆動の鋭さです。微細なLEDを局所領域で細かくオン/オフのコントロール出来るため、バックライトの応答性に優れています。これまでも「X-Motion Clarity」という、バックライトの制御技術によって、映像が動いたときのボケを軽減する機能がありましたが、より顕著に動きに対する精細感が向上しました。本当に一段階も二段階も性能が上がっていますので、ぜひ体感していただきたいです。

  • 有機ELモデル、液晶モデル両方の画質設計を担当する高橋氏。新デバイスの特長を活かしたXRの制御技術や、開発チームの思いについて答えてくれました。
  • 4K液晶テレビ
    SONY
    X95Kシリーズ
    (XRJ-85X95K/XRJ-75X95K/XRJ-65X95K)

大橋氏 御社の「XRバックライト マスタードライブ」の処理性能に見合ったバックライトとして、ようやくMini LEDが出てきたという印象なのですね。デバイスによっても得意な部分、不得意な部分が異なるので、最適化を図ったアルゴリズムを施すことは容易ではないですね。

高橋氏 そうですね、デバイスによって強みは異なるので、それぞれ使い方の用途を考慮した、最もふさわしい映像チューニングを施しています。有機ELであるQD-OLEDを採用したA95Kシリーズは、黒の階調表現に優れていますし、MiniLEDを搭載したX95Kシリーズは広大な輝度レンジが強みといえます。本当にデバイスそれぞれに特長があります。

どのようなデバイスにおいても我々が目指す映像がありますが、テレビが生まれる以前から、たとえば絵画などでも“映像表現”の仕方は紡がれてきたものと考えています。実は映像技術の開発メンバーはその多くが様々は美術館を巡り、光の当たり方や、細かく描かれているわけではないのに、離れて見るとものすごくリアルに感じられること、そのリアルさはどういった技術や人の完成で感じとっているのか、そういったことを絵画や美術から学びながら画作りを考え、開発を続けています。

また、制作者の方、放送局側の映像の作り方も時代によって変化しています。世界中の映像を確認しながら理想的な画とはどういったものかを、我々も常にアップデートしており、パネルデバイスの特長を考慮して、その理想を実現するためのチューニングを施しています。

  • Mini LEDバックライトを採用したX95Kシリーズでは「XR バックライト マスタードライブ」を搭載しています。XRの映像解析と独自のバックライト駆動技術によって精密な制御を可能とし、映像の色表現や精細感、画面の明るさはもちろん、それらを保ったまま残像感の低減を実現しています。

大橋氏 今回、有機ELモデル、液晶モデル、その双方が各々の特長を主張できていると感じました。もしよろしければ、御社が思う、各デバイスの強みをお聞かせいただきたいですね。

高橋氏 映画などのコンテンツを映画館の様に暗い部屋で集中して観たい場合は、有機ELモデルをお薦めします。黒の表現はバックライトを有する液晶パネルの階調の出し方と、自発光デバイスである有機ELでかなり異なってきます。有機ELと映画の組み合わせは暗部階調表現の相性がよいと思います。

一方、音楽ライブやミュージックビデオなどの比較的明るい作品や目を引く派手なステージ装飾映像などの、ダイナミックレンジが広い作品には液晶モデルがお薦めです。明るい部屋で大勢が視聴するシチュエーションにも液晶モデルが向いていると思います。世の中に様々なコンテンツがありますし、楽しみ方も多様化しています。多くの方々に多様な使い方を楽しんでいただきたいと考えており、そのために最適な画質及び、必要な画質モードといった面も考え、製品つくりに尽力していきたいと考えています。

大橋氏 ブラビアの4K有機ELモデルでは、従来までのラインアップからさらにインチサイズを落とした42インチモデルの「XRJ-42A90K」も加わりましたが、40インチ台の4K有機ELテレビに対して、ユーザーからどのような反響があったのでしょうか。

志岐氏 4K有機ELテレビは、もともと55インチ以上のモデルが中心だったため、特に国内のお客様から「もう少し小さいサイズだったら置けたのに」という声も多くありました。2年前に48インチ、そして今回から42インチをラインアップしたことで、さらに幅広いユーザーの方に4K有機ELテレビの魅力を体感してもらえるようになったといえます。また、ゲームプレイ、プライベートルームでの使用なども意識しており、おうち時間を最大限に楽しんでもらえることを考えた展開となっております。

大橋氏 42インチならではの、画作りのポイントや工夫はありますか?

高橋氏 画質サイズによって、視聴距離や映像の凝縮感、密度感も変化するため、サイズに合わせた調整は行っています。限られた画面サイズの中でも、高い没入感、劇場で感じられるような映像体験を味わっていただくには、人がどのように感じ、どのように見ているかを分析して、映像に浸れる、空気を感じられるものにしていく調整が必要であると考えています。

実設計としては、有機ELはサイズが小さいほどエネルギーが集中しやすく、画面上の輝度レベルに応じて熱が高くなりやすい性質を持っています。熱が高くなると電気的な効率も低下しますし、劣化も考慮しなければなりません。従って、どれだけ明るさのレンジを保ったままに映像を映し出し続けられるかが鍵になってきます。知的なプロセッサー内部の処理とパネルデバイス制御及び発熱・放熱のシミュレーションに加え、オブジェクト検出によって適切な処理をオブジェクト毎に施すことで、全体の明るさやコントラストをを向上させ、没入感を高めるといったコントロールを行っています。

他と一線を画す音の没入感と定位感の高さ

大橋氏 では次に音質面、ドルビーアトモスなど、イマーシブサウンドの表現についてはいかがでしょうか。ブラビアならではの高さ方向の表現や空間表現、また液晶モデルと有機ELモデルによって違いなどあれば、うかがいたいです。

松尾氏 前年モデル群と同様にドルビーアトモスに対応しています。また3D Surround Upscalingにより、ステレオ音声などのドルビーアトモス以外のコンテンツに対しても左右及び高さ方向の立体音響を実現します。 液晶モデルと有機ELモデルともに「BRAVIA XR」でしか味わうことのできない包囲感を意識して、高さ方向のサウンドをしっかりと体感できるよう、サラウンドの方も手を加えて音質調整を行っています。

  • 有機ELモデルの音質設計を担当する松尾氏。XRによるサラウンド処理の工夫や、映像と音の一体感を高める音響技術について詳解してくれました。
  • 有機ELモデルに採用された「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」は、アクチュエーターで画面を振動させて音を出し、セリフや楽器の位置に合わせて音を出すことで、映像と音の一体感を高めています。

大橋氏 有機ELモデルは、アクチュエーターで画面を振動させて音を出し、映像と音声の一体感を高めていますよね。画面と音源を一致させることは、セリフがより自然に聴こえるので、映画の新作だけでなく旧作を観る上でも効果が大きく、御社にしかできない強みだと感じています。

また「BRAVIA CAM」の搭載で、カメラによって視聴環境を認識し、それに伴った映像・音声の調整を行えるとても画期的な機能を拡充しています。画質面と音質面への効果についてお聞かせいただきたいです。

志岐氏 今まではセンサーを使って人や部屋(空間)を検知・感知していました。前モデルでは、自動で画質や明るさ、色温度などを調整する機能と、自動音場補正機能も入っていました。

ただ、それは部屋の明るさや大きさなど空間の認知までで、お客様自身がどこにいるかまでは把握しきれないところが大きな課題でした。今回、新規に「BRAVIA CAM」を搭載することで、お客様の位置を把握して、その位置に向けて最適な画と音を届けられます。これからも没入体験を高めるため、さらにブラッシュアップを図っていきます。

松崎氏 BRAVIA CAMによる音響補正の効果についてですが、液晶モデルX95Kの場合は、正面から見えない部分にスピーカーが設置されているので、視聴位置によっての音のバランスを整えていくことがとても困難でした。例えば画面正面で視聴したときの音と端の場合の音の差をどう埋めていくか、課題がありました。

  • 液晶モデルの音質設計を担当する松崎氏。音による没入感、BRAVIA CAMを搭載したことによって可能となった音場補正技術について語ってくれました。
  • 液晶モデルでは、「アコースティック マルチ オーディオ」を搭載。画面上部に設置されたサウンドポジショニング トゥイーターにより音の定位感を高め、サブウーファーとミッドレンジスピーカーも併せて搭載することで、重低音を向上させています。

松崎氏 最終的にはバランスの崩れた部分を、自動音場補正や、カメラで視聴者を追従することで補正できる機能によって調整することが可能になりました。音の位相が少しずれてしまうと没入感も薄れていってしまうので、カメラを活用した方が、我々の調整の意図を大きく反映できると考えています。

大橋氏 音質の面から、有機ELモデルと液晶モデルそれぞれで試聴してほしいコンテンツやジャンルがあれば、うかがってみたいです。

松崎氏 コンテンツや作品ジャンルというよりも、“テレビの音が悪い”というイメージがまだあるなか、BRAVIA XRは再生帯域もカバーできて、ほとんどジャンルを選ばず従来テレビとは一線を画す音質で楽しめるというところまで来ています。たとえばアクション映画での爆発シーンではしっかり驚きを表現できますし、ホラーシーンははちゃんと背筋がゾクッとするほど怖いんです。テレビ単体でも、十分に音による没入感を体感できることをアピールしたいです。

松尾氏 有機ELモデルは「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」により、いかなるコンテンツでもリアリティの高い音を画面から直接出力できます。音楽であれば、映像と音源が同調して、ボーカルの声をしっかりと画面中心から聴くことができるのが一番推したいポイントです。映画に関しても、作品に含まれるさまざまなオブジェクトに対し、ガラスが割れる音や、飛行機の飛ぶ音など、画面内で動いている物体そのものから音が鳴っている体験を味わうことができるのも、有機ELモデルならではの魅力です。他にはない圧倒的な定位感は、ぜひ聴いていただきたいポイントです。

日々の生活に溶け込むプレミアムモデル

大橋氏 ライフスタイル的な機能面でユニークだったのは「BRAVIA CAM」のジェスチャーコントロールですね。ジェスチャーを設定する上で、こだわった点などはありますか?

志岐氏 手のひらを開く、指を立てるといった、簡単な動作でポップアップを表示できるという形でご提案させていただいています。あまり複雑な操作にならないよう、上下左右に方向を指示する動作で、コンテンツに合った最適な操作が可能です。コンテンツを観ているときに、わざわざリモコンを探すといった動作をいかに省略できるか、たとえば来客が来たときに、手をパッとかざして操作すれば一時停止できるといった、視聴を妨げない直感的なジェスチャーを際立たせて実装していく予定です。BRAVIA CAMは、カメラで視聴者の位置を認識し、視聴位置に合わせて映像と音声を自動で最適化します。簡単ジェスチャーで音量調整や一時停止などの基本操作が行えるほか、小さなお子さんなどに向けて画面に近すぎることを警告するアラート機能や、人の有無を判別することでの自動省電力モードなども実装予定です。

  • BRAVIA CAMは、カメラで視聴者の位置を認識し、視聴位置に合わせて映像と音声を自動で最適化します。簡単ジェスチャーで音量調整や一時停止などの基本操作が行えるほか、画面に近すぎることを警告するアラート機能や、自動省電力モードなども実装予定です。

大橋氏 認知特性プロセッサーのXRによって、画質や音質はもちろん、機能面においても一歩先行くテレビのスタイルを楽しむことができますね。プレミアムなホームシアターを求めるユーザーには、ぜひBRAVIA XRを手に入れてほしいですね。本日はありがとうございました。

<取材協力>

  • ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部
    商品企画部門Display商品企画1部 企画1課
    志岐卓也 氏
  • ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部
    TV事業部 商品設計第1部門 商品設計1部 映像技術課
    高橋慎一郎 氏
  • ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部
    TV事業部 商品設計第1部門 商品設計1部 信号処理技術課
    錦織 克美 氏
  • ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部
    音響設計部門 設計1部 6課
    松尾 魁士 氏
  • ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部
    音響設計部門 設計1部6課
    松崎 恵与 氏