ドルビーアトモスの立体音響は、工事不要で楽しめる
Dolby Atmos(ドルビーアトモス)に代表される「イマーシブサウンド」とも呼ばれる新時代の3D立体音響技術。その臨場感を家庭で再現するためには、天井スピーカーが必須。そこで重宝されているのが、音の反射を利用する「イネーブルドスピーカー」です。これがあれば、スピーカーを天吊りにする必要がありません。フロントスピーカーやリアスピーカーの天板の上に設置するだけで、天井スピーカーの代替えとして機能するからです。工事がいらないので既存の住宅でドルビーアトモス環境を構築するのにもピッタリ。もっとも現実的な解でもあり、主流といってよいでしょう。
「イネーブルドスピーカー」は簡易ソリューションともいえるため、効果を不安に思うユーザーもいるかもしれません。しかし、実のところ一般的な家庭の天井高(2.4m)の場合は、ブラケットなどを用いてスピーカーを天吊り設置すると視聴者に近づき過ぎ、直接音が耳について本来の狙いである音場効果が薄れてしまう可能性があります。よって適度な拡散を得られる「天井反射」がよいという考え方が、ドルビーの技術資料(ホワイトペーパー)にも記されています。安心して、積極的に活用してください。
- ドルビーアトモス対応イネーブルドスピーカー
MONITOR AUDIO
「Silver AMS-7G」
- ドルビーアトモス対応イネーブルドスピーカー
ELAC
「Debut A4.2」
イネーブルドスピーカー設置は高さが大切
一方、イネーブルドスピーカーは「反射音」を利用する原理上、効果を最大限に引き出すためには、いくつかの推奨事項があります。ここでは、ドルビーの資料「Dolby Atmos Home Theater Installation Guidelines (Dec 2018)」を元に、ホームシアターで3Dサラウンドを楽しむ際の設置ポイントを解説していきましょう。特に、イネーブルドスピーカーの「高さ」に注意です。
①耳の高さと同等以上
反射音を利用するイネーブルドスピーカーにとって、直接音は不要な音なので、耳に届かないように設置するのがマストです。スピーカーの高さはリスニングポイントにおける耳と同じかそれ以上が推奨されています。AVアンプやサウンドバー製品の中には、直接音が耳に届きにくいよう、キャンセリング機能を備えている場合もあります。
②壁の高さの半分以下
絶対的な高さとして、イネーブルドスピーカーの設置位置が、壁の高さの半分以下になるよう推奨されています。天井高が2.4mの一般的な家庭なら、1.2m以下が目安です。拡散効果や設置の両面から、妥当といえるでしょう。
③想定の天井高さ
イネーブルドスピーカーを用いる場合、天井の高さも重要です。ドルビーでは、スピーカーから天井までの距離について、許容範囲を2.3〜4.3m、理想範囲を2.3〜3.66mと示しています。一般的なご家庭なら心配要りませんが、吹き抜けなど極端に天井が高い空間では設置に適さないといえます。
④水平距離にも注意!
イネーブルドスピーカーまでの水平距離が近くても、やはり直接音が聞こえてしまいます。ドルビーでは、最短0.9m、理想として1.5m以上の間隔を設けるよう推奨しています。レイアウトを工夫すれば、さらにステップアップした立体音響を楽しるのです。
- 前後のスピーカーを5基、サブウーファーを1基、そしてイネーブルドスピーカーを4基採用した5.1.4chのシステム図です。イネーブルドスピーカーは床置きされたフロントおよびリアスピーカーの上に乗せて設置するので、この位置から天井までの距離が2.3〜3.66mであるのが理想となります。
今回、細かな推奨値をご紹介しましたが、もちろん絶対ではありません。イネーブルドスピーカーは、設置に制約の多い一般家庭で、リアル天井スピーカーを超える表現力を発揮できるポテンシャルを備えています。より、ご自宅のホームシアターのサラウンド効果を高めるヒントとして、ご参考になれば幸いです!