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  • 大切なオーディオ機器をながく使いたいから “修理専門”カンパニー「ティーエス・プロ」 コールセンターから製品修理までまるっとお任せ

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2024年10月11日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

私が愛用している英国KEFのスピーカーのウーファーに不具合があり、5年ほど前に修理を依頼したことがありました。そのとき、拙宅まで出張修理に来て下さったのがKEFジャパンから委託を受けた修理専門会社「ティーエス・プロ(TS-PRO)」の方々でした。その丁寧な作業ぶりと、ちょっとしたオーディオ談義で話が弾んだこともあり、その後が気になっていたのでした。

そんな折り、彼らが最近、KEFジャパンのみならず、D&Mホールディングスのアフターサービスを請け負うことになったとか。訊けば事務所を拡張するなど新たな展開を見せているというので、さっそく話を聞きに厚木の新拠点「神奈川事業所」へ足を運びました。

多種多様な修理を請け負う

ティーエス・プロとは、Total Support Professionalの意。設立は2002年で今年23年目を迎える同社の前身は、60 – 90年代に一世を風靡したケンウッド(旧トリオ)のサービス部門。それが独立し、ケンウッド以外の修理も請け負い始めたのがキッカケです。携帯電話の基板修理からスタートし、多種多様な修理を請け負うことで、修理“専門”会社の先駆けとして成長、いままで無借金経営を続けてきました。

  • 携帯電話修理当時のラインのようす。多い日に1日1,200台ほどの顧客修理品が入荷し、工場と同じようなラインを組んで修理品を流していたそうです。分業化を得意とし、どんな数、どんな症状にも対応できたといいます

こんにち、ティーエス・プロが扱う品目は、オーディオのみならず、ヘアドライヤーのような家電全般から保険会社のドライブレコーダーまで多岐にわたり、受託先も製造メーカーから流通や商社、(中古)販売店などさまざまです。

本社は埼玉・大宮にありますが、1年の準備期間を経てこの4月から神奈川・厚木にあるビジネスタワービル「厚木アクスト」を新たな拠点に設定。いまや札幌、浦和、戸田、名古屋、大阪、福岡にも事業所を構え全国に拡大し、従業員は200名ほどにのぼります。

  • サービスセンターは、厚木インターすぐそばの「神奈川事業所」のほか、「札幌事業所」は大通公園ほど近く、「名古屋事業所」も栄から数分、「大阪事業所」も本町から、「福岡事業所」は博多の山王公園近くと、非常にわかりやすく訪れやすい立地に設定されています

先述したとおり、4月からはD&Mホールディングスのサービスを担当することとなったティーエス・プロ。修理担当エンジニアの中には、学生時代からアンプを自作し趣味が高じてオーディオメーカーで製品設計を担ってきた方や、技術者認定を保有する方も多数。話をうかがっていると、様々なメーカーやサービスセンターから口コミで優れた人材が集まっていることがわかります。

「昔は重さで売っていたところがありますよね」「A&Dのカセットデッキは深みが違いました」「オーディオって80年代の製品が人気です」云々、ここでもオーディオ談義は止まりません。

主要取引先は同社のホームページに掲載されていますが、オーディオ・ビジュアルでは、先に挙げたKEFジャパン、D&Mホールディングスのほか、JVCケンウッド・サービス、AlphaTheta(旧:Pioneer DJ コールセンターと修理)、東洋化成なんてのもあり、みなさんがよくご存知のハイエンドオーディオブランドの業務もおこないながら、さらに取引先を拡大しそうな勢いです。

修理会社に立派な「試聴室」!

「実際に修理しているところにご案内する前に、ひとつお見せしたい部屋があるんです」と、改装中の一室を、厚木サービスセンターの案内役・小澤さんが案内してくれました。ちょっとフカフカしたレッドカーペットがアクセントになっており、気分も上がります。

「この部屋は修理完了時、実際に修理を手掛けたスタッフがお客様とここで一緒に試聴することを想定しています。いわば “主治医” から説明を受けながら音を確認できるというわけです」

ここ厚木の「神奈川事業所」以外に、大阪にも同様の実際に試聴できる部屋を確保しているといいます。そして将来的には、修理に来たユーザーにとどまらず、一般ユーザーにも開放してコミュニケーションを図ることができる『体験型サービスセンター』にしたいのだそう。

「ゆくゆくは修理のデパートとして、広くヴィンテージなども扱えるようにしたですね」と意気込みます。昨今のデジタル製品によくあるように「何かあると新品と交換」ではなく、SDGsや愛着の観点からも、お気に入りのオーディオ機器は修理して長生きさせてあげたいですよね。さらに嬉しいことに「匠の技」を若い人たちに伝承していきたいという崇高な目標も聞けました。実際、若手や女性の有望株も続々入社しているといいます。

メーカーのサービスという垣根を越えた、サービス専門会社。ジャンルだけでなく時代を超えて、オーディオ機器に再び息吹を与えるチャレンジングな姿勢は、これからの時代により重要になっていくのではないでしょうか。

次回は、実際のサービスの現場を直撃します!