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  • 鴻池賢三のホームシアターTips 高画質な映像を少ないデータ量で!ネット配信の“コーデック”に注目して快適な視聴体験を コーデックの基本と進化をプロが解説

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年10月30日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

映像はデジタル方式が主流に

「よりクオリティの高い映像を、より手軽に見られる」よう進化しているのは、みなさんも日常で体感されていることでしょう。いまでは4K高解像度があたりまえになり、スクリーン大画面でも細部まで緻密で綺麗な映像が楽しめるように。映画、ドラマファンだけでなく、ネットで配信映像や動画視聴を楽しんでいるユーザーにも大きなメリットをもたらしています。

このようなデジタル映像の進化を支えているのが「コーデック」(Codec)と呼ばれる、データの圧縮(エンコード/encode)および、対になる展開(デコード/decode)技術。黒子的な存在といえ、映像を視聴するだけなら気にする必要はありません。

しかし、より高画質な映像を、より少ないデータ量で楽しみたいなら、製品選びや設定に関わることも。このページに辿り着いた方なら、備えておいて損のない知識です。この記事では、映像伝送におけるコーデックとその変遷や未来について、オーディオ・ビジュアルのプロが解説します。

デジタル映像におけるコーデックとは

テレビ放送やインターネット配信など、映像はデジタル方式が主流になりました。映像は音声に比べて圧倒的にデータ量が多く、電波やネットで伝送する際は「圧縮」して送出されます。

なぜかというと、有限である伝送経路をより有効に活用するため。データを圧縮すれば同じ帯域幅でも、複数の映像を、あるいはより高解像な映像を伝送することができるというわけです。

この原理はDVDやブルーレイといったディスクメディアも同じで、容量に上限のあるメディアに、より高画質に、より長時間記録するため「コーデック」は進化してきました。

「圧縮」を実現する主なからくりは、動画で映像の差分を記録するという手法です。動画はフレーム(静止画)の連続。シーンチェンジがないかぎり連続するフレームの画柄は似ているので、上手いアイデアといえます。これがMPEG(Moving Picture coding Expert Group)の基本的な考え方。このアルゴリズムの改善によるさらなる高効率化が、つまり映像コーデックの進化といえます。

デジタル映像におけるコーデック

コーデックはデジタル映像時代に必須の技術で、古くはVideo CD、DVD、そしてブルーレイやデジタル放送(電波)でも利用されています。メディアとして規格化されているため、視聴側であるユーザーは、対応機器さえ導入すれば適切なデコードが可能で、コーデックについて何も知らなくても問題なく視聴できていました。

しかし急速に発展するネット時代では、その構図が変わってきました。配信サービス側のコーデック更新です。配信サービス側として、高画質化を実現しつつ、同時にデータ量を削減するには、より高効率なコーデックの開発と採用が必要です。一方で、視聴者側の機器がソフトウェアアップデートレベルで追いつけなくなると、大前提である「再生できない」という問題が発生します。

多くの配信サービスでは、コンテンツを複数の形式(コーデック)で準備していて、視聴者の再生装置に合わせてデータを送出しています。つまり再生機器の対応コーデックによっては、最新の画質で視聴できていない可能性も。古い機器のままでは、いずれは完全に視聴できなくなる日もやって来るかもしれません。

後悔のない機器選びに役立つはず!

映像コーデックは、より高画質を目指して進化してきました。デジタル映像の本格的な普及はDVD(MPEG-2/H.262)から始まり、4Kや8Kといった高解像化は、コーデックの進化といっても過言ではないでしょう。インターネット配信では複数のコーデックが利用され、再生デバイスに応じたデータが送出されます。「VP9」はGoogleが開発したオープンソースで、ロイヤリティフリーのコーデックとして広く普及しました。現在もYouTubeで多く利用されています。

  • 「AV1」はVP9をベースにさらに新しい技術を採り入れ、VP9よりも高い圧縮効率を確保したコーデック。4K/8K/HDR化において、配信ではAV1の採用が、スマートフォンやPCも最新のハイエンドモデルは、ハードウェアデコード対応が進んでいます

この記事では、デジタル映像時代のコーデックについて解説しました。コーデックは日進月歩といえるスピードで進化しており、最新の「AV1」も遠くない未来にまた新しいコーデックに置き換わることでしょう。

お気に入りの機材を長く使うことは大切ですが、デジタル機器においてはこうした進化も念頭に製品を選ぶと、後悔をしなくて済むでしょう。映像配信の視聴をメインの目的に映像装置を購入する際は、そうしたことも考慮しつつ、将来的にアップデートが必要になった時点で、最新の配信端末もチェックしておくのが吉です。