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  • 2種類のコメンタリーで
    楽しむリピート鑑賞
    の醍醐味
    第6回『ARIA The BENEDIZIONE』

    取材・執筆 / 永井光晴(ホームシアターCHANNEL編集部)
    2021年12月28日更新

映画芸術の古典化と、リピート鑑賞への新(進)化

映画には「リピート鑑賞」というスタイルがあります。その名の通り、“何度も(お金を払って)、同じ映画”を観ることです。

『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のような社会現象級のメガヒット作品ならずとも、近年は通常版に加えてIMAX版や4DX、MX4D版などの上映方式の違いでリピートしたり、アニメ作品では週替わりの入場者特典が配布されたりすることが慣例化しており、“〇〇回観た”とSNSで盛り上がるヒットの裏には少なからずリピーターの下支えが貢献しています。

一方、東京・日比谷のTOHOシネマズなどでは『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)や『グレイテスト・ショーマン』(2017)、『ミッドナイトスワン』(2020)などの通常版がたびたびアンコール上映され、満席を記録しています。

上映期間が終われば、サブスク無料やBlu-rayなどのパッケージメディアで繰り返し観る選択肢もあるなか、リピート鑑賞は経済的な合理性から考えると「どうしても映画館で観たい」という動機になります。“応援上映”(スクリーンで声援やペンライトを使っていい)という形態も生まれたように、映画館で観ることは、巨大スクリーンで不特定多数と同一空間を共有してイベント性を楽しむ体験に近いと言えます。

そもそも舞台ミュージカルや歌舞伎などの古典芸能でよく耳にする、〇〇年連続ロングラン上演、〇〇年ぶり再演のように、“いいものは何回観てもいい”という定番化にも似ています。

映画が発明されてから1世紀を超え、原作のネタ切れが指摘されることもあるなか、映画は消費されるだけの芸術から、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE 砂の惑星』(2021)や、スティーブン・スピルバーグ監督の新作『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)が作られるように、古典的な成熟の域に仲間入りしつつあるのです。

本連載で紹介するHELLO! MOVIEのコメンタリーは、通常上映の鑑賞を前提として、スマホを使って2回目以降の鑑賞で楽しむものです。

入場者特典での集客を含め、“作品そのもので勝負していない”という意見はあるかもれません。しかしメディアが多様化して、紙媒体から映像、舞台、ゲーム、玩具まで様々なサービス提供ができるいまだからこそ、素材を活用して、ファン心理にどう応えるかは、映画興行の現代的な進化といえるのではないでしょうか。

当たり前ですが、「定番」が突如として現れたことはかつてなく、ファンが足繁く通うことの結果としての定番化です。

そんな観点から、HELLO! MOVIEコメンタリーによるリピート鑑賞も、魅力あるサービスのひとつとなり得るのです。

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  • (C)2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

HELLO! MOVIE初の週替りコメンタリー2種が楽しめる

さて、今月(21年12月3日)から公開された、劇場版アニメ『ARIA The BENEDIZIONE』(“アリア・ベネディツォーネ”と読む)では、HELLO! MOVIEで初めてとなる2週連続の週替わりコメンタリーが実施されました。

同作は、天野こずえによる漫画『ARIA』(連載開始時は『AQUA』)を原作としており、2001年から2008年にかけて月刊誌に掲載、2005年からはアニメ化され、2008年まで3期にわたってテレビ放送されました。

物語の舞台となるのは、テラフォーミング(人間が住めるような地球環境にすること)された未来の火星アクアにある、観光都市ネオ・ヴェネツィアです。その名の通り、イタリアのヴェネツィアを模した架空の世界ですが、実際のイタリアの観光でもお馴染みの建築物や文化・風習が登場します。ところどころで日本的な文化が入り交じるのは架空都市なのでご愛嬌。

そのネオ・ヴェネツィアで、水路を行き交うゴンドラをこぐ観光客向け水先案内人(ウンディーネ)が、美しい女性たちという設定が物語としての非日常です。そこで、見習いウィンディーネの少女が、一人前のプリマウンディーネを目指して成長していく日常がゆったりと描かれていきます。

移り変わる四季と相まって、“未来形ヒーリングコミック”と呼ばれるだけの魅力があります。

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  • (C)2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

雑誌連載は終了しましたが、ARIA人気を背景に、原作者が書き下ろしたコミックをもとにOVAの「蒼のカーテンコール」三部作が企画化され、『ARIA The AVVENIRE』(2015〜2016)、『ARIA The CREPUSCOLO』(2021.3)に続く第3作目の『ARIA The BENEDIZIONE』は、本編シリーズを補完するグランドフィナーレといった位置づけとなっています。

コメンタリーから溢れ出る、ARIAへの特別な想い

『ARIA The BENEDIZIONE』のHELLO! MOVIEコメンタリーは2種類。ひとつは主要キャラクターを演じる声優たちによる「キャストコメンタリー版」(12/10〜)、そして佐藤順一総監督をはじめとするスタッフによる「制作スタッフコメンタリー版」(12/17〜)が連続公開されました。

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  • スマートフォンのHELLO! MOVIEアプリで選択できる2種類のコメンタリー

コメンタリーは2週にわたって解禁されましたが、それぞれは再生する音声データをダウンロードするだけなので、その後は上映時にスマホアプリでどちらかを選ぶだけ。本作の公開期間中は2種とも再生可能です。

長く続いてきた連載マンガや、アニメシリーズの完結編ほどファンにとって特別なものはありません。それは関係者にとっても同じです。コメンタリーはいずれも、これまでのシリーズの想い出話に花開く、ひじょうに感慨深い内容になっています。それは卒業式のようでもあり、同窓会のようでもあります。思わず、セリフで感極まりにそうになったという発言も。

いっしょに作品を育ててきたチームが最新作のシーンを解説する内容は興味深いものばかり。ファンが描いて欲しかったエピソードごとの空白部分を補完するように作られたことがよく分かります。またそれらストーリーの時間軸が整理されて解説されています。

小樽の美術館がモデルの“水先案内人ミュージアム”

序盤に出てくる“水先案内人ミュージアム”は、引退したゴンドラや歴代ウンディーネたちに関するものが展示されている博物館。作画デザインの元となったのは、北海道・小樽にある「北一ヴェネツィア美術館」の外観や内部構造などが参考とされて描かれていることがコメンタリーで紹介されます。

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  • (C)2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

また、壁に掛けられた伝説のウンディーネの肖像画を描き込むのは、たいへんな作業で、誰がやるのかという話題のなか、結局、作画監督の伊東葉子氏がひとりで完成させたそうです。

もっとも興味深かったのは、シーンによる原画担当者の違い。セル画時代の”伝説の原画マン”と呼ばれる、井上さんが描いた画は、コメンタリーを聞いてから観るとその違いが明解に分かります。もちろん名取監督の画もあったり、どこでCGを使っているかなど、シーンパートによる違いをこれほどまでに知ることができるのも初めてで、これこそHELLO! MOVIEコメンタリーのメリットです。スクリーンでもう一度チェックしたくなります。

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  • (C)2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

本作の主題は、”晃”と”藍華”という先輩・後輩ウンディーネの絆の物語になっています。本編を知る人ならば、より補完的なエピソードであり、テレビシリーズを観ていない筆者でも、独立したエピソードとして十分楽しめるもの。最終回と位置づけられるものの、2人の出発といえる区切りの話に仕上がっています。それは人生の出発でもあり、ウンディーネとしての昇格試験に合格するという設定も含め、イタリア語で“祝福”を意味する”ベネディツォーネ”がタイトルに使われた背景が理解できます。

───愛すべき娘を私に託してくれてありがとう

クライマックスでの晃のセリフ、その余韻に浸れる本作のいちばんの名言です。

筆者にとっては、取材きっかけにすぎなかった”初ARIA”鑑賞でしたが、長くファンに支持されるだけの魅力を垣間みることができました。

  • ARIA The BENEDIZIONE
  • 『ARIA The BENEDIZIONE』(C)2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー
    総監督・脚本:佐藤順一/監督:名取孝浩/原作:天野こずえ/総作画監督・キャラクターデザイン:伊東葉子
    出演:斎藤千和(藍華・S・グランチェスタ)/皆川純子(晃・E・フェラーリ)/中原麻衣(あずさ・B・マクラーレン)

    長い冬を迎えたネオ・ヴェネツィア。寒空の下、合同練習をしていたアイ、あずさ、アーニャの3人は、いつもと様子が違う晃の後をつけたのをきっかけに水先案内人ミュージアムを訪れることになりました。出迎えた館長の明日香は、姫屋の伝説的なウンディーネとして知られる晃の大先輩。二人は姫屋の創業時から大切に乗り継がれてきた1艘のゴンドラの継承者でもあるのですが、晃の話によると、次の乗り手として期待される藍華にはその気がないというのです。納得がいかないあずさは、どうしてなのか理由を探ろうとする。

【HELLO! MOVIEの楽しみ方】

映画館へ行くまえに、お持ちのスマートフォンで「HELLO! MOVIE」を検索して、アプリをダウンロードしてください。
動画で解説します。「HELLO! MOVIE」公式YouTubeでアプリの使い方をご覧ください。

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