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レビュー

  • FOCAL「1000 IWLCR Utopia」「300 IW6」「100 ICW5」 埋め込みこそ音で選ぶ
    イマーシブに最適なスピーカー
    仏・フォーカルの埋め込みスピーカーが上陸

    VGP 取材・執筆 / 鴻池賢三
    2021年12月24日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

Focalブランド紹介

多彩なスピーカーを展開するフォーカルの埋め込みが上陸

  • 欧州を代表するスピーカーブランド「Focal(フォーカル)」の埋め込みスピーカーが日本に上陸! Hi-Fiやプロ用、カーオーディオで定評あるブランドです。
  • 埋め込みスピーカー
    Focal
    100 ICW5

    ¥30,800(税込/1本)
    ウーファーと角度調節が可能なトゥイーターを同軸にレイアウトした2ウェイスピーカー。価格破壊の一台!

Focalというスピーカーブランドをご存知でしょうか。日本にはこれまでハイエンドHi‒Fi モデルやプロ用モニターなどが紹介されていますが、埋め込みスピーカー「Focal CI」シリーズが遂に上陸。輸入を行うのは「Focal Pro」も扱うメディア・インテグレーションで、主に音楽制作用のプロブランドを数多く取り扱う輸入商社です。そんな同社がFocal CIをなんと43.2ch分も導入した音楽制作スタジオ「Media Integration Lab(MIL)」を開設すると伺ったので、一足先に体感させてもらいました。

3Dオーディオの理想環境とは?

フルビルトインだから実現できる

  • 「Media Integration Lab(MIL)」の様子。足元になんとボトムスピーカーを配した360RA対応の空間です。

MILは、カッティングエッジな製品を扱う同社だけに、未来の音楽制作環境をイメージして設計されたスタジオ兼研究施設。MIL開設のきっかけは「ドルビーアトモス」や「360 Reality Audio」など、3Dオーディオの登場です。3Dオーディオは音が前方だけでなく上下方向にも広がることで、全方位から音に包み込まれるような体験を目指すもの。「Apple Music」や「Amazon Music Unlimited」など音楽ストリーミングサービスでも採用が進み、対応機器を用意すれば、すぐにでも楽しめます。

  • スクリーンを上げるとよくわかりますが、視聴位置を覆うように足元までスピーカーに囲まれる3Dオーディオ対応の空間です。
  • 足元に設置したボトムスピーカー

そんな3Dオーディオは、音が後方や頭上から聞こえるといったギミックが先行しがちですが、究極の価値は「自然な音場の再現」に尽きます。なぜなら3Dオーディオはチャンネルという概念が取り払われ、製作者が音を自由に配置できるからで、普段生活している「全方位からの音に包まれた環境」にオーディオ体験を近づけることができるのです。

  • 視聴位置後方の様子。プロジェクターにはビクターブランドの8Kモデル「DLA-V90R」を奢ります。

MILでは先述のドルビーアトモスや360RAに加えて「22.2ch」「Ambisonics」「Auro-3D」といった多彩な3Dオーディオに対応。再生に必要なアンプやオーディオインターフェイスなどの機器接続には、音のロスなくデジタル伝送できる「Dante」を採用するなど、最先端のプロ用機器を組み合わせています。

  • MILはプロ用の機材を使用することで、43.2chあっても音の同期がズレない見事なまでのサウンドを実現しています。核となるのは伝送方式の「Dante」で、LANケーブルを用いたデジタル伝送でアンプまで繋ぐことでロスのない音声伝送を実現しています。
  • 写真一番下の黒いコンポーネントが、各アンプへの信号割り振りや音量調整、入力のセレクターにもなるオーディオインターフェイス、Avid「Pro Tools MTRX」。その他、AD/DA変換を行う機材など、プロ機材を駆使したシステムを用意しています。
  • サブウーファーも含めて45chのパワーアンプを用意しますが、中心となる中層(左写真の下2つのスピーカー)の12ch分はLab.gruppen「D20:4L」を使用。上層と下層には32chパワーアンプinnosonix「MA32/D」を使って駆動しています。

音場再現に優れるFocal

3Dオーディオだからこそ音場再現は求められる

一方、3Dオーディオは複数のスピーカーを用いるため、スピーカーは高性能かつ音の個性も高精度に揃っていることも非常に重要です。もし可能であれば、全て同じスピーカーを使うのが理想的。しかし、それはプロスタジオであってもスペースや設置の制約上、なかなかに難しいです。そうした問題を解決してくれるのが、実はFocal CIなのです。というのもFocalは自社でユニット開発・製造まで行えるメリットを活かし、シリーズを越えて音響特性のマッチングが考慮された設計になっています。

  • 埋め込みスピーカー
    Focal
    1000 IWLCR Utopia

    ¥1,043,900(税込/1本)
    ピュアベリリウム・トゥイーターやWコンポジットサンドイッチコーンなど、フロア型でも採用されるユニットを埋め込みにも採用した超弩級のフラグシップモデル。
  • 埋め込みスピーカー
    Focal
    300 IW6

    ¥90,200(税込/1本)
    埋め込みスピーカー埋め込みスピーカーアルミとマグネシウム製のリバースドーム・トゥイーターを搭載するなどこちらも独自技術が結集した中級機。

ラインアップはフラグシップの「1000シリーズ」、ミドルグレードの「300シリーズ」、エントリークラスの「100シリーズ」の3グレードを持ち、それぞれ壁面や天井への埋め込み設置を想定したモデルを豊富に取り揃えます。Focal独自のインバーテッド・ドーム・トゥイーターを共通して採用し、CIシリーズ間はもちろん、フロア型などHi‒Fi 用途の「Kanta」や「Aria」との組み合わせも考慮された設計なため、既存のFocalユーザーの選択肢を広げているのも注目に値します。

43.2chの音の印象とは?

空中に浮遊するかのような自然な没入感は革新的!

今回は完成間近のMILで、360RAをはじめとした3D制作コンテンツを体験しました。MILは現在、主に1000シリーズを使い、頭上をグルっと取り囲む上層スピーカー群に加え、中層と床下に埋め込まれた下層スピーカーによる3層構成としています。設計は3Dオーディオの研究で先駆者と知られる中原雅考氏(芸術工学博士/SONA)の手によるもので、「スピーカー=チャンネル」ではなく、システム全体で自然な音場の再現を意図しています。

  • SONAの中原雅考氏(写真左)に、研究用の3Dオーディオ再生アプリの説明を受ける筆者(写真右)
  • メディア・インテグレーションの北木隆一氏(写真左)と同社・宮地陽太氏(写真右)より、スピーカーの技術説明を受ける筆者。

研究用のデモ音源では、スピーカーの存在感が消え、目を閉じると空中に浮遊しているかのような錯覚に陥る場面も。ドルビーアトモス収録作品も然りで、自然な没入感は革新的。これほど多数のスピーカーを用いても音が混濁せず精緻な空間を再現できるのは、Focal CIシリーズならではといえます。

オーディオが3Dへと進化するのは当然の流れといえます。「聴く」から「体験」へのステージアップです。そうした時代には、機器は個性を主張するのではなく、高精度な再現性が重要になります。こうした観点で、Focal CIシリーズのコンセプトと性能は、時代を牽引する存在となるでしょう。今よりもさらに高度化するコンテンツを家庭でもより忠実に再現するために、注目したい製品群です。

<FOCAL CIシリーズの詳しい製品情報はこちら>
https://www.minet.jp/brand/focal-ci/top/