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  • 鴻池賢三のホームシアターTips 「タダ」でできる調音テクニック〈実技編〉音の反響に対策しよう ポイントは音響障害の発生源を見つけること

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年2月19日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

この記事では、ホームシアターのサウンド体験向上を目標に、一般的なご家庭でも取り組みやすく、さらに「なるべくダダ」でできるアイデアをご紹介しています。過去の記事では、調音の概要や必要性など、基礎知識をお伝えしました。

今回からは実技編として、実際のシアタールームで発生する事象を切り口に、吸音と拡散が有効な「場所の見つけ方」など具体的な対策方法を解説します。

ホームシアターの「調音」についておさらい

音響障害「フラッターエコー」とは

ホームシアターにおいてフラッターエコーは、音響障害の一つとして認識されています。そもそもフラッターエコーとは「鳴き龍現象」とも呼ばれ、平行する壁面間を音が何度も反射を繰り返すことで、音が重複して異音や音色の変化を感じる現象を指します。

制作者が意図した音を聞きたいのに、部屋の音響特性のせいで、それ以外の「異音」が聞こえてしまうのは、まさに障害といえますね。

まずは実際にフラッターエコーを体験してみましょう。モノを置いていない会議室やコンクリート打ちっ放しの空間などで強めに手を「パン」と叩き、その後に「ビ~ン」という残響音が聞こえたら、それがフラッターエコーです。実際に体験すると、理解が深まることでしょう。

  • 家具などが少ない部屋、コンクリート壁やガラス面など反射面が多い部屋はフラッターエコーを実感しやすいです

根本的な対策としては、部屋の中に平行面を作らないことで音の反射が繰り返されるのを防ぐ方法です。収録スタジオなどでは壁面を凹凸形状にしたり、特に音の反射が強いガラス面は傾斜を設けたりしますが、一般のご家庭で倣うのは難しいもの。

ホームシアターの場合は、フラッターエコーの原因になっている場所を見定め「吸音」または「拡散」を施すのが合理的です。

調音テクニック〈吸音編〉を読む!

調音テクニック〈拡散編〉を読む!

なるべく「タダ」のアイデアを紹介

ホームシアターで注意すべきは、平らで面積が広いスクリーンや大画面テレビ。スクリーンの対面に壁面やガラス面があると、高い確率でフラッターエコーが発生し、実際の聴感にも影響が出やすいものです。

スクリーンを展開した状態で手を叩き、フラッターエコーを感じたら対策をしましょう。とはいえスクリーンが原因であっても、スクリーン側できることは多くありません。対面する壁に「吸音」または「拡散」を施すのが定石です。壁面の露出面積が小さくなれば、フラッターエコーは解消に向かいます。

  • ホームシアターはそもそも適正とされる残響時間が短め(デッド)なので、フラッタエコー対策をするなら、まずは吸音から試してみるのが現実的

なるべくタダで済ませるアイデアとしては、吸音はカーテンのような布で覆う、拡散は本棚やラックなどを設置するとよいでしょう。

また、対策に効果的な場所を見つけるには2名ペアで作業しましょう。1人が視聴位置に座り、もう1人がフロントスピーカーのトゥイーター位置付近で手を叩きます。吸音または拡散に使っている家財を何度か移動させ、視聴位置でフラッターをもっとも感じないポイントがベストです。

ちなみに、視聴位置で手を叩いて聞こえるフラッターエコーは、必ずしも有害とはかぎりません。スピーカーは手の位置で鳴るわけではないためです。

専用の吸音材・拡散材を利用する

費用を掛けて、専用の「吸音材」や「拡散材」を利用する場合、たくさん使うとそれなりに高価になりますし、インテリア性も考慮すると、単純に壁面全体を覆うわけにはいきません。となると、有害なフラッターエコーの原因になっている場所を、よりピンポイントで見つけて対策する必要があります。

この場合、鏡を利用すると効率的です。フラッターを引き起こす主な原因は高域音。音は高域であるほど直進性が強く、光のように壁面に対し入射角と反射角は等しい傾向があります。鏡をスクリーン対面の壁面に当てて移動させ、視聴位置からフロントピーカーのトゥイーターが見える辺りが、おおむねスイートスポットと考えられます。そこに吸音材・拡散材を配置すれば、より効果が得やすいでしょう。

  • スイートスポットを見つけたら、視聴位置で実際に聴こえ方を確かめながら調整してみましょう

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